転職はとりあえず応募して面接で判断!がダメな理由

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転職を考えた時に「とりあえず応募せよ。内定取ってから悩めばいい」という意見があります。

しかし、そんないいかげんな判断はイマイチです。

原則としてバッサリ多くの求人情報は切り捨てる方が合理的で結果的によりよい転職ができます。

やたらめったら応募するのは非効率ですし、望ましい仕事に近づける確率をほとんど上げません。

応募しまくれるほど魅力的な求人情報なんてそんなたくさんはない。

また、転職活動に少しでも着手すると、自分のマインドは知らぬ間に「転職ありき」モードに切り替わってしまいます。これに抗って合理的な判断をし続けるのは並大抵の人にはできません。

さらにいえば、一度応募してしまうと、転職エージェントもプレッシャーをかけてきますので、断りにくくなります。

転職で応募をためらうというのは、こうした様々な事情を考慮した上で自然と自分で下している判断なのであり、賢明な反応です。

自分の心の声を大事にしてあげてください。

今現在の職場を今すぐとにかく辞めたいとか、今無職で応募先がほとんどない、といった事情があれば応募しまくるのも選択肢になるのですが、その場合でも冷静に応募先を吟味すべきです。

目次

転職はとりあえず応募しないでよいのはなぜか

なぜ「とりあえず応募」が良くないかといえば、そんなに良い求人情報があるわけではないからです。

ガラクタ情報に関わっている時間がもったいない。

また、心理的な面を見ても、あまり軽く決定しない方がいい。

多くの求人情報はあなたに合わない

現実問題として、転職エージェントのところに行っても、ピンと来る「ここいい!」という求人情報がたくさんあるということは稀です。

私は4回転職していますが、そのたびに「応募したい企業があまりない」と悩んでいます。

今いる職場に不満を持つような人が満足できる職場は世の中にはそんなにありません。

転職するだけでハッピーになれるならみんなもっと転職してます。

転職は大変です。選考に突破する以前に「応募したい」企業を見つける段階から大変なのです。

しかし、転職エージェントはそんなのおかまいなしにガンガン求人情報を提示してきます。

彼らは求職者が自分経由で応募して内定を取って入社してくれさえすれば、お金が入るのですから、それはもう応募者をバッターボックスになんとか立たせようとしてきますよ。 

私は40社以上の転職エージェントに転職相談に行きました。

その中で「今は応募しない方がいい」と言ってくれたのは2、3社しかありません。

そんなにうまい話はないのが普通です。

「すばらしい何かが見つかる機会なんて、そうそうあるものじゃない。だから、頼みごとの90パーセントを断ったとしても、チャンスを逃したことになんてまずならない」

ーチャーリー・マンガー

ロルフ・ドベリ『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』(サンマーク出版、2019年)52ページ 

私も「応募しようかな」と悩んだ案件はいくつもあります。

しかし、「応募しておけばよかった」というものはあまりありません。

そんないい求人案件なら、求人票を見た時点で「これはいい!」と大抵すぐに即決できました。

「どうしようかな」と応募前で悩むような案件は大したことがない。準備に時間をかけるのはもったいないです。

転職求人応募をためらうべき心理学的理由

経験則や感想だけでなく、人の心理からしても「とりあえず応募」は望ましい行動でない理由を説明します。

初期の軽い依頼に応じる心理的危険性

「まあいいか」と転職エージェントのすすめに応じて気乗りしない企業に応募してはいけません。

興味がないなら、断るべきです。

そんなにいい求人はない、時間がもったいない、というのもあるのですが、人間の心理の癖を考えると、早い段階で積極的に断るべきです。

人は、簡単な依頼でも応じてしまうと、それにコミットしたと感じ、その後それに反する行為を取りにくくなってしまいます。

「私は転職したい。なので応募する」といったことを自発的に言うと、それに合った行動を取りがちになります。

転職活動を続けてうまくいかないときに、友人や転職エージェントから「転職したいんじゃなかったのか?」と問われると、自分で当初「転職したい」と言ったことに縛られるのです。

転職しないと言うと、最初に言ったことと違うことを言うことになり、自分がブレていることになってしまいます。

人は、こうした首尾一貫していない言動を極めて嫌います。

自分がブレるのも嫌がるのです。

これが抗いがたい心理の癖です。

「転職しようかな」と少しでも思ってつい1、2社応募すれば、軽い気持ちであってもコミットメントしたことになります。

知らぬ間に自分の心理はこのコミットメントの制約を受けるのです。

その結果「転職しなければ」という気持ちになり、当初は「いい企業への転職」という目的を持っていたのに、転職活動を続けるうちにやがて「とにかく転職」という当初とは違った方向へ自分の活動が変わっていきます。

これが、「コミットメントと一貫性」の力です。

ささやかな依頼に応じる場合にも十分に注意する必要があるということです。そうした依頼に応じることが、私たちの自己イメージに影響するかもしれません。そうすることによって、似たような種類の、もっと大きな依頼に応じやすくなるばかりでなく、最初に応じたささやかな依頼とはほとんど関連のない、さまざまな種類の大きな依頼を受け入れやすくなるかもしれないのです。

(ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014年7月)122ページ)

「軽いのなら応じてもいいや」と考えてはだめです。

転職エージェントに「応募するだけなら簡単ですよ」と軽く応じて応募してはいかんのです。

その応諾行為が自分の行動を変化させます。

レオナルド・ダ・ヴィンチはこう言っています。

最後に断るよりも最初から断る方が簡単だ。

(同上96ページ)

内定が出てからは冷静な判断はできない

一度内定を取ってしまうと、内定を辞退するのは大変です。

内定を取ってからは、冷静に内定取得先を評価するのは難しい。

内定を取ったら、転職エージェントは猛烈に内定受諾をプッシュしてきます。

転職エージェントにとって高額報酬はもう目の前です。

この応募者に「転職します」と言わせればいい。

あとは企業に「内定受けるそうです」と伝えればいい。

その企業のいいことばかりを転職エージェントはあれこれと手を変え品を変え言ってくるでしょう。

また、内定を出した企業も、内定を受けるよう働きかけてきます。

そして、最大の問題は、自分です。

求人に応募する、面接を受ける、というのは大きな「コミットメント」です。

内定を蹴る、というのはこのコミットメントに反する一貫性を欠く重大な問題行為です。

そして、内定を取るためにはそれなりに多くの労力を費やします。

  • 職務経歴書の準備
  • その企業の調査
  • 面接日の調整(有給を取ったり、会社にバレないよう気をつかいます)
  • 面接それ自体(時間に遅れないよう、服装をきちっとするよう色々大変です)
  • 面接後のやりとり(転職エージェントへのフィードバックや、企業側のコメント待ち)

「せっかく苦労して取った内定を蹴るのはもったいない」と思ってしまうのです。

「コミットメント×労力」は、人の行動を変容させる大きな要因です。

コミットメントに労力が投入されればそれだけ、コミットメントした人の態度に与える影響が強くなります。

(ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014年7月)138ページ)

内定を取ってからだと、自分の考えはいつの間にか変わっています。

その変化は、転職先選びには望ましい変化とはいえません。

なぜなら、そのコミットメント×労力という、転職先の評価には関係のないポイントで自分の考えが変わっていますし、また、応募先について影響を受けたのは「面接」や転職エージェントから情報という偏った印象重視の情報だからです。

「せっかくとった内定」が自分のなかで価値あるものとされてしまっては遅いのです。

何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、苦労なく得た人よりも、得たものの価値を高く見積もるようになる

(ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014年7月)145ページ)

転職応募先は現職と比較して決める

転職エージェントが提示してくる求人情報に惑わされてはいけません。

決めるのは自分です。

強く自分を持ちましょう。

自分で決めるといっても、求人票だけを見て「いい会社かどうか」悩むのはよくありません。

現職の仕事と比較しましょう。基準があった方が考えやすいです。

今の仕事を辞めて行くに値する職場かを考えるのです。

単独で求人情報を見るよりも、比較して評価する方が評価手法として優れています。

  • 給料
  • 仕事内容
  • 立地
  • 職場環境
  • ポジションの高低

こうした諸条件を現職場と転職先とで比較しましょう。

より広い総合的な枠組みで考えるほうが、合理的な判断が下されやすい。そして並列評価は、明らかに単独評価より広い枠組みである。

比較対象を行う並列評価では…単独評価よりぶれない判断が期待できる。単独評価の場合には…一貫性を欠きやすい。

(ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー (下)』(早川書房、2012年11月))

現職と応募候補先を比較する際は、現職にはそれなりの重みをもたせましょう。

自分が今の職場にいるのにはそれなりの理由があるのです。

私はこれまで4社勤務していますが、どこも望んで入社しました。

今の職場が不満で辞めようと思うことは大きな理由ですが、現職場の全てが悪いわけではありません。良い部分も転職したら失ってしまいます。

この失うダメージもよく考えるべきです。

現職との比較は相対評価です。

現職場があまりにもひどいなら、応募候補先企業は多くなります。

現職場がそんなにひどくないなら、応募候補先企業は少なくなります。

自分の状況に応じて決めましょう。 

転職求人にとりあえず応募しまくると後が大変

転職エージェントによく言われる言葉はこんな感じです。

  • 「応募するのは無料。損にならない。迷ったら出せばいい」
  • 「いい会社は出してみなければわからない。面接で判断して、嫌なら辞めたらいい。」
  • 迷うのがもったいない

ツイッターでもよく見られます。

「迷ったら行動」

「考えるだけで動かない人はだめ」

こんな感じのツイート。

しかし、「とにかく動け、応募しろ」というアドバイスは、転職活動では時間の使い方、効率性を考えると、従うべきものではありません。

「応募すること火のごとし」と行動するのは、自分の考えがまとまってから。

うっかり応募すると大変

応募するのは無料で損にならない?

それはお金のことだけです。

時間が奪われることを考えていません。

応募すればけっこうな時間が取られます。

応募書類の準備、応募先の調査や面接対策です。

心理的にもすり減ります。 

転職エージェントでこの現実コスト(時間とストレス)について言及してきた人はいません。

しかし、転職活動は現に疲れます。

うかうかと足を踏み入れるべきではありません。

よく考えて実施すべきです。

転職は人生の重大事であり、「まず行動」なんて軽率に行う類のものではありません。

転職活動それ自体大変ですし、転職してからも大変です。

転職応募の問題は、新しい職場での輝かしい未来ばかり想像してしまい、感じの悪い同僚とのやりとりといった具体的にありうるネガティブな日常は想像に浮かんでこないところです。

すべてバラ色の職場はあるはずもなく、いいところもあれば悪いところもあります。

そのバランスが応募時には大きく崩れます。期待先行。

転職では相当なプレッシャーを受けますよ。 

面接してもいい職場かどうかわからない

「会ってみないとわからない」

このように多くの人が言いますが、実際は「会ってもわからない」です。

心理学者でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、一般的な面接で人を評価するのは合理的な選択ができないと述べています。

なぜなら、「面接官は自分の直感に過剰な自信を持ち、印象を過大に重視してその他の情報を不当に軽視し、その結果として予測の妥当性を押し下げる」からです(ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』(早川書房、2012年11月)362ページ)。

要するに、人は「なんとなく」印象に左右されてしまうのです。

「私は人を見る目がある」という人も多く見受けられますが、これも勘違いです。

人間の持つ特徴をよく表しています。自信過剰ということです。

私が面接で「この人いい人だな」と思った人は、一緒に働いてみたら猛烈なパワハラ上司でした。

そんなの枚挙にいとまがありません。

面接でなんかわかるはずない。10回会ってもわからないという前提に立つ方がミスを避けられます。

「直感」で決めるのは危険です。 


面接なしでかなり判断できる

面接なしでどうしたらいいのか?

客観的情報をベースにして検証することは可能です。

その企業の属する業界、商品やサービス、財務情報、どこに拠点があるか等は調べればわかります。

私は利益率の高い企業しか応募しませんでした。

嫌いな業種や気に入らない商品を提供している会社も避けました。

海外展開している会社がよいのか、国内だけがよいのかも拠点や海外売上高比率を見ればわかります。

そうしたビジネスと求人票を見比べればかなりのことがわかります。

面接よりもこうした調査の方が多くのことがよくわかります。

有価証券報告書や企業ウェブサイト等はよく読むべきです。

自分の人生の多く時間を投資するのですから、調査には時間をかけた方がいい。

転職エージェントは、概して会社の事業について詳しくありません。

私の話をよく聞いてくれた優良エージェントを含め、どの転職エージェントも、求人を出している企業のビジネスを「なんとなく私見」を感想で語っていました。

転職すれば、その企業に自分の多くの時間を費やす「投資」をするわけですから、応募先企業には投資家になったつもりで企業分析するべきです。

転職のための情報収集と企業研究のやり方 – 転職キャリアルール

転職で応募はためらうのでよい

転職を成功に導くための対エージェントの態度を教えましょう。

それは、「ほとんどの求人情報にノーと言う」ということです。

応募数は絞りましょう。

スティーブ・ジョブズのやり方

スティーブ・ジョブズのアドバイスはこうです。

集中とは集中すべきことに”イエス”と言うことだと考えられている。しかし、それだけでは不十分だ。集中するとは、その他の100のよいアイデアに”ノー”ということだ。慎重に選ばなければいけない

“People think focus means saying yes to the thing you’ve got to focus on. But that’s not what it means at all. It means saying no to the hundred other good ideas that there are. You have to pick carefully.”

Amy Blaschka, “This Is Why Saying ‘No’ Is The Best Way To Grow Your Career—And How To Do It”

ウォーレン・バフェットのやり方

世界長者番付上位の常連であるウォーレン・バフェットのアドバイスはこうです。

成功者と真の成功者の違いは、真の成功者はほとんど全てに対してノーと言うことだ

The difference between successful people and really successful people is that really successful people say no to almost everything.

(同上)

バフェット自らも「ほとんどは”ノー”と答える」と1995年の年次総会で発言しています。

Most everything we say is a no.

転職活動では「ノー」というのをためらわない

成功するためには「ノー」というのをためらってはいけません。

特に転職はそうです。

転職エージェントが金を稼ごうと勧めてくるわけですから、余計に断り上手になる必要があります。

「え?応募しない理由あるの?」

みたいな嫌味を言ってきた転職エージェントもいます。

「とにかく応募しましょう!」
と迫ってくるエージェントもいます。

負けてはいけません。

気が向かないなら、応募すら「ノー」です。

内定が出てから考えるべき、は基本的に転職活動には悪いアドバイスです。

内定を取るまではかなりの労力を要します。

内定をとってから断るのは相当大変です。

転職エージェントの「とりあえず応募しろ」は真に受けるな

“Fools give you reasons, wise men never try.”

(愚かな人はあれこれ言い訳し、賢い人は試そうとすらしない)

これは、ウォーレン・バフェットが「過熱した株式市場で今一体何が起きているかを説明する人が現れたらこの歌詞を思い出してください」と株主への手紙で引用した歌詞です。

株価はこうなる、と当たりもしないのに得意満面で語る愚者に気をつけるよう投資家にバフェットが呼びかけたものです。

このアドバイスで引用された歌詞は、転職エージェントにも当てはまります。

ダメな転職エージェントは、応募者の置かれた環境なんか考えもせずに「とにかく転職しろ」という態度で向かってきます。

「あなたが転職すべき理由」を説くわけです。

「応募者にとって良い」転職エージェントはそんなことはしません。

良いエージェントならば、転職を真に希望する候補者に対し、その人にあった求人情報を提供してくれます。

「転職するべきではない」と場合によっては言ってくれるはずです。

転職エージェントに「私は転職した方がいいですか?」とは聞かない方がいい質問ですが、その質問に対して、あるいは質問もしていないのに、「あなたは転職すべきだ。なぜなら~」と理由を述べてきたら上記のバフェットのアドバイスを思い出すべきです。

賢い優秀な転職エージェントは転職を促したりしません。

転職を決意した求職者に対して職を紹介するだけです。

▼転職エージェントに「私は転職すべきですか?」と相談しない方がいいとしたら、転職すべきかどうかどう考えればいいのか、という人向けの解説記事 

「断る」ためにたくさんの転職エージェントを使う

「むやみやたらに、“とりあえず”で応募するな!内定取ってから悩めなんていう意見に耳を貸すな!」

これが私のアドバイスです。

私のアドバイスは少数派ですが、こちらの方が効率的でよい結果をもたらすと考えています。

理由は上述したとおりです。

私のアドバイスが少数派なのは、大多数の転職エージェントの考えが蔓延しているからでしょう。

迷ったら「ノー」ですよ。

自分の時間を大切に。

ここで追加アドバイス。

ノーというためには転職エージェントは複数使わないといけません。

1社しか転職エージェントに頼まず、全部求人断ったら応募先がなくなって転職不能になります。

「どこも応募先がないんじゃ…」というのはなかなかの恐怖です。

複数の転職エージェントに会って、求人情報を広く集め、多くの選択肢を持って心理的余裕を獲得しましょう。

断るのは簡単です。

戦略的に断って、転職活動を合理的・効率的に進めてよいキャリアを築きましょう。

複数エージェントを活用すべき。 

ただ、人によって事情は違います。そんなたくさん転職エージェントに会えない人や、そんなに会いたくない人もいると思います。応募者の自由であるべきです。とにかくたくさんの転職エージェントに会えばいいわけではありません。

気が向いたらその都度転職エージェントに登録する、でも全然OKです。自分の好きに進めるようにしてください。

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