転職中途入社は新卒プロパー主義日系大企業で出世は期待できない
(2020年11月1日改訂)
私は、日系大企業に中途で転職しました。
新卒プロパーが大量に働く大企業です。
そこで勤務していて、転職中途入社組が偉くなるのはほぼないのだろうなと思っていました。
中途が活躍できる土壌のある会社もありますが、例外的だと思います。
2019年秋頃、トヨタが中途採用を拡充するということでニュースになってました。
なぜニュースになるかといえば、日系大企業で中途をたくさん取る、というのが「異例」だからでしょう。
こうした企業では、中途入社はある種「異常」な存在なのです。
異常ではない通常の存在は、新卒入社でずっとその会社にいる人です。
通常=新卒プロパー
異常=転職中途入社
この図式が固まっている会社があります。
中途入社組は社内ネットワークを築く時間が新卒プロパーより短く、また「当然新卒プロパーが出世するでしょ」という社内常識を打ち破るのはかなり困難です。
大企業で大きなビジネスに関われるとか、安定性やブランドなどいいところはたくさんあり、中途で入ると最初は満足できるかもしれません。
しかし、やがて不合理な真実に直面することになります。
1 新卒入社時からプロパーの長い出世レースは始まっている
新卒入社組にとって「入社時に最初に配属された部署がホームグラウンドのようになる」と聞いたことがあります。
そうすると、中途入社組はホームレスになるんでしょうか。
(1) 典型的日系大企業の新卒入社組の辿るコース
コンサルで有名な堀さんが最近の書籍『できる人の読書術』で大企業の内部をわかりやすく説明していたので紹介します。
サラリーマン社会は、身分を重視する江戸時代の武士の評価システムとよく似ていた。学歴や入社年次、新卒か中途採用かでサラリー(武士なら石高)が決まり、それは生涯に渡って宿痾(しゅくあ)のようについて回る。同じようなプロフィールを持つ人は、本人の能力に関わりなく、同じようなサラリーマン人生を歩む。
たとえば、東京大学から新卒で入ったら、数年後には係長になり、やがて課長になり、トントン拍子に出世して最低でも同期でもっとも早く部長になれる。
私立大学出身で中途採用だとしたら、たとえ仕事ができても親会社では課長以上になれず、せいぜい子会社の総務部長止まりで終わる……といった具合である。
サラリーマン社会は江戸時代の武士の評価システムと似ている。
私は、法律事務所から日系大企業に転職しましたが、本当に上記のとおりです。
(2) 企業で入社年次は超重要
年次は会社内にいると一生ついて回ります。
入社年次について言及されなくなる日はありません。
「生涯に渡って宿痾(しゅくあ)のようについて回る」のです。
中途で入ると、たとえば、2010円大学卒業で、別の会社に入り、それから転職して当該大会社に2018年に中途入社したとすると、「18年入社、10入社相当」と扱われます。
たとえば、1995年入社を「きゅーごー(95)入社」といったり、2008年入社を「ぜろはち(08)入社」と言ったりします。
なので、社内では、他の人のことを話すときに、たとえば「安倍さんって”ぜろご(05)”入社だっけ」といった言い方をするのです。
「新卒で入ったのはいつか」
という新卒一括採用を基準とする人事評価制度なのです。
どこの大企業も「能力で評価する人事制度を導入」とうたっているはずです。
しかし、特に、大きな企業、業績がそんな悪くない企業、伝統的な企業、では年功序列からあまり変わってないと思います。
能力評価ベースの人事制度なんてやったことがないからできっこないのです。
なんとなく形式は整えるけれども、結局は従来どおりの年功制で、「年次が上がれば力も上がる」という思い込みで従前どおり進んでいるのです。
人事評価は難しい。採用で評価するのはもっと難しい。
(3) 日系大企業で中途入社は本当に不利
中途入社の人が順当に出世をするのは難しいです。
中途入社の人が順当に出世をすると、それは「異例」ということになります。
「異例」は大企業で嫌われます。好きなのは「前例」です。大企業人は、右へ倣えをし続けて目立つことをしません。いい悪いではなく、前例通りか、他の人もやっているかを常に注意しています。それしか注意することがないのが大企業の典型サラリーマンです。
新卒入社組=プロパー社員
新卒入社社員は「プロパー社員」「プロパー」と呼ばれています。もちろん俗称であり、正式な呼び方ではありませんが、みんなこの言葉を使っています。なんのためにあるか、「新卒か・中途か」を区別するためです。
新卒入社と中途入社のどっちがいいか?
ー当然「新卒・プロパー」です。
なぜ新卒がよいのか?
ー出世しやすいからです。
なぜプロパーが出世しやすいのか?
ーこれまで出世してきている人はみんなプロパーだからです。
これまでプロパーが出世していてもこれからは関係ないのではないか?
ー関係あります。大企業は前例通りが大好きなのです。前例通り間違いなく進めることが重要だとされ、評価されるのです。
2 出世レースに途中参加する中途入社組は大きなハンデを負っている
中途入社組は、上記のような新卒入社時から始まる年功序列体系の中の出世レースに交じって戦わなければハイポジションに就けません。
新卒時からぬるま湯で育ってきたプロパーを大切に育てる会社であれば、ハングリー精神を持って仕事に取り組む中途入社社員は貴重な戦力です。重宝されるかもしれません。
しかし、それだけでは偉くなるには足りないのです。
(1) 仕事の実力はわかりにくいので出世には社内ネットワークが重要
最先端の科学的手法を駆使して解き明かされた「成功の普遍的法則」の1つからすると、中途入社組が「実力」で新卒プロパー天国会社の中の出世競争を勝ち上がっていこうとすることは、困難というほかありません。
原則1
「パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す」
仕事で「実力」は大事です。しかし、「実力」がよくわからないときは、人と人とのつながりが成功(出世)への要因になるということです。
「トップを狙うなら、底辺から一段ずつのぼって行くことだ」という思い込みは棄てたほうがいい。
出世したいなら、地道に仕事ができるようになればいい、という考えは実態に合っていません。
各ポジションを異動で転々としつつ、各仕事をマスターするでもなく、なんとなくのまま業務をこなし、出世している人はたくさんいるのです。
仕事の習熟度が出世に影響するかというとそれには疑問符が付きます。
あらゆる分野のパフォーマンスがテニスのように明白ならば、それもいだろう。だが、自分がナンバーワンだと証明できないのなら、その出世の階段をのぼって行くのは難しい。となると、企業の重役室や一流ギャラリーのや憧れの職の面接結果を、自分のほうにぐいと引き寄せなければならない。
でも、どうやって?その出世の階段を”人づき合いの橋”に変えるのだ。孤立して働いている人はいない。たとえ自分がそう思い込んでいる時でさえ、あなたはひとりではない。……もし、遠い目標を自分の目の前に引き寄せたいのなら、夢の実現に拍車をかけるハブを見つけ出して、そのハブに働きかける必要がある。
新卒プロパー偏重の会社において、成功(出世)のためのハブとなる人的コネクションを持つ人は、プロパー社員である可能性が高いです。なぜなら、 プロパー社員だけがみんな偉くなる文化なので、偉い人はプロパー社員である確率が高いからです。
新卒入社時期から社内ネットワークを築く時間が長いのもプロパーには有利です。
(2) 係長→課長→部長のルートは約束されていない
大企業への転職が決まった人は、「安定大企業に入れば、係長、課長、部長と順調に出世していけるだろ。」と安易に考えるべきではありません。
どれほど実力があっても、新卒プロパーの方が評価されうる可能性をよくよく考慮しなければなりません。
出世なんかいいよ。安定した企業で楽にそこそこの給料もらえれば。そういう発想であれば大企業は最高です。
あなたが有名大学・有名会社出身の非常に優秀で人格もすばらしいビジネスパーソンであったとしても、日系大企業に転職した場合、将来そこで出世するのは、あなたよりも学歴は低く、仕事もいまいちである人かもしれません。
なぜならその人はプロパーだから。
(3) 仕事って何すればいい?何もしないのに偉くなる人は何なの?
日本企業に就職する上で重要なのは、あくまでその「企業の一員になること」であり、「何をやるか」ではないのです(ピョートル・フェリークス・グジバチ『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ、2018年3月)161ページ)
本当にそのとおりですね。
こういう「私は何をしたらいいの?」という組織は、「疲れる組織」であると上記書籍の著者は主張します。
疲れる組織:役割も期待されていることも曖昧
疲れない組織:役割と期待が明確
日系大企業は、人も多く、不要な内部調整作業が死ぬほどあります。
「これ意味ないんじゃない?」と考えて不穏な空気を生み出すより、無駄な作業であってもそれに異を唱えず「企業の一員であること」が大事なのです。
転職して業務を特定されて中途入社した人にはこうした大企業は「疲れる組織」でしょう。
(4) 凝り固まった社内文化は変わらない
外から見ておかしい組織内文化は、中の人にはその異常さがわかりません。社内カルチャーには本当に気をつけなければなりません。
伝統的・安定・有名・日系大企業になると、部署によってはゆるま湯文化が定着し、ゆでだこになった傲慢社員が無数に現れます。
3 大企業のメリット
さんざん悪口を言ってきましたが、反対によいところも見てみましょう。
- 大企業は中小企業より給料が高い
- 大企業は安定している
- 大企業は知名度が高い
- 大企業では大きなビジネスに関われる
一般的には、一流大学や一流企業の出身者がキャリア評価上有利になることは事実です
大きな企業・組織の中でしか経験できないことはたくさんあり、そこで優れた成果を挙げていれば鬼に金棒です(和多田保『ブランディング転職術 (「自分」というオンリーワンの商品を高く売ろう!)』(スダンダーズ・プレス、2019年6月))
こう見ると、大企業勤務にはメリットがたくさんあります。
中途入社すると、最初はこのメリットを感じやすいです。
出世できない、というのはあくまで将来の話です。中途で入社したときに、この出世できない可能性というデメリットをどうとらえるかは人によります。
しかし、自分の年下で実力がイマイチな後輩が単にプロパーであるというだけで出世するのを見るだけ、という将来の自分を想像すると悲しくないですか?
4 複数の転職エージェントから情報を得よ
転職エージェントに社内カルチャーはなかなかわかりません。しかし、われわれよりは接点があります。
1人の転職エージェントに聞くだけではたりません。
複数のエージェントに聞きましょう。
私は、ほんの数人の信用できる転職エージェントによく相談しています。これは大変助かります。
転職のときは慎重に。応募先がよい企業と盲信してはいけません。
本記事では、「中途入社が日系大企業で出世できると思うな」と題して日本の大企業へ転職を考えている人の参考になるようにしてみました。
大企業のメリットも要約して記載しましたので、ぜひ転職活動に活用してください。
ミドルクラス以上になって年収アップを狙うなら、大企業のヒラよりも規模をやや落とした会社のハイポジションや外資系を考慮に入れるべきです。
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