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仕事が辛いのに辞めない理由

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この仕事は辛いと思い強烈なストレスを感じながらもなぜ辞められないのか

職場環境に不満を感じながらも転職せずに留まる。なぜそのような不合理な選択をしてしまうのか。

現在の仕事で不幸せに感じている人は、辞めない、辞められない理由を知り、転職を含めて合理的に良い決断をするべきです。

本記事は、スタンフォード大学ビジネススクール教授ジェフリー・フェファーの最新著作である『ブラック職場があなたを殺す』(日本経済新聞出版社、2019年4月)の第6章「なぜ悪しき職場を辞められないのか」をベースに作成しました。

(2020年3月7日改訂)

1 ブラック職場に飛び込み、残る心理

仕事が辛い、、と思っている人は、自分のいる環境が良くないと認識しています。そして、これから入社する人も、そこがブラック企業だとわかりながらそれを受け入れています。

 

(1) 悪しき職場を受容する

心身の健康によろしくないどころか有害な職場で働く人々は、じつはそのことを承知している。ストレスに苦しみ、心身の健康を蝕むとわかっていながら、また現に身も心もぼろぼろになって死んでしまう人もいると承知のうえで、働いているのである。

 

ブラック企業の社員は、「ウチってブラックだよな」とお互いに惨状を認識しあっています。現状そうなっているからどうしようもない、とあきらめモードです。

 

(2) ダークサイドとわかっていながら突撃する

いわゆるブラックな職場だとわかっていながら、そこに就職・転職することを選ぶ人もいる。ここでは、ある若い韓国系アメリカ人女性(仮にキムとする)の例を紹介しよう。キムはコンピュータ工学の学位をとり、大学を出てアマゾンに入社し、eコマース部門に配属された。この時点ですでに彼女は、そこが苛酷な職場であることを承知していた。「悪い噂があるのはわかっていた。もちろん自分の会社の悪口を言うなんてプロフェッショナルな態度ではないから、表立って言われるのではなく、陰で囁かれるだけだけれど」。ともかくもキムは採用通知が入社することを決める。

アマゾンがブラックだと名指しされています。アマゾン以外の自分の思いつく仕事がきついがハイブランドな企業を想像してみましょう。ゴールドマンサックスの投資銀行部門とかでしょうか。

弁護士であれば、生き残るのがきつそうな著名な法律事務所をアマゾンに置き換えて考えてみるといいでしょう。

 

ブラック企業と知りつつ、知名度に胸躍らせて入社する人は毎年信じられないくらいたくさんいるはずです。

 

なんでそんな愚行をするのか。

なぜ?アマゾンで働くのは聞こえがいいからだ。「アマゾンで働いていたと言えば、次はどこにでも転職できるとみんなに言われたの。だから、アマゾンに行くことにした。アマゾンの社員であることは一種のステータスなのよ」

 

そうです。弁護士や高学歴の人はステータスを求めるのです。 

働き始めてすぐ、キムは長時間労働で疲弊し、社内の競争や駆け引きで消耗し、何をやっても満足しない気難しい上司にいじめられるようになる。頭痛や胃痛がひんぱんに起きるようになり、身体中に発疹ができた。自己嫌悪に陥り、抑鬱症状をやりすごすために暴飲暴食するようになったという。

キムのような例は枚挙にいとまがない。

 

「何をやっても満足しない気難しい上司」と働くことを考えただけで気が狂いそうです。

 

こう毎日悩んでいる人は多いのではないでしょうか。

 

(3) 職場のせいで最悪の気分なのは知っている

同書のためにリサーチで話を聞いた人のうち、職場が心身の健康を害していると気づいていない人はほとんどいなったそうです。

そうですね。

「ウチってホワイト企業だよなー」と言いながら辛い辛い言ってる人は思い当たりません。

なで、自分の働いている職場が心身の健康を害すると知りながらも辞めようとしないのでしょうか。

 

2 ブラック企業を辞めない理由

フェファー教授は、職場がしんどいと知りながらも辞められない理由を次のように説明します。

 

理由①:生計を立てなければならない

これはそのとおりです。あまり面白い理由ではないです。

 

理由②:有名な企業、刺激的な仕事

でました。

「有名な企業だから」辞めてステータスを失いたくない。という本音の理由です。

社会的にステータスの高い企業で働くことによって自分の価値を高めたいという動機である。……たとえ健康を損ねる恐れがあっても、有名で社会的地位の高い企業で働くことは自分の価値や評判にプラスになるのだから、多少の犠牲はやむを得ないと考える人はきわめて多い。

これが理由で辞められない人は多いんですね。

 

もう一つは、読んでみて「そんな人もいるんだ」という感じです。

現にストレスの多い職場にいても、自分自身のやっている仕事がおもしろくてたまらず、ついに倒れてしまうまで、辞めるなんて考えもしないという人も少なからずいる。……シリコンバレーの大手法律事務所で働いていた前夫を薬物乱用絡みの合併症で失ったジャーナリストのエイレーン・ジマーマンも、「彼は知的で困難な仕事ほどやり甲斐を感じていました」と書いている。

 

理由③:辞めるエネルギーがない(無気力)

人々が悪しき職場にとどまる原因の一つは、無気力である。調査で取材した多くの人が、どれほど不快な職場であってもそのまま居続けるほうが楽だと感じた、と話している。

人は現状維持が心地よく感じます。仕事を辞めるのはブラック職場であってもストレスを感じるのです。

そして、疲れ果てた人がブラック職場で働きながら以下のような活動をするのは大変です。

まず、転職先を探すこと自体が重労働だ。時間もエネルギーもとられる。ところが苛酷な職場に嫌気がさして転職しようと考える人の大半は、すでに睡眠不足やストレスに悩まされており、現在の仕事をこなす物理的なエネルギーも精神的なエネルギーも足りない状態なのだから、新しい仕事を探すエネルギーが残っているはずもない。この意味で彼らは悪しき職場の罠に落ちたと言えよう。すでに極限まで疲弊しているために、自分を消耗させた当の職場から逃げられないのである。

これはそのとおりかもしれません。

 

転職活動はただでさえ大変です。疲弊しきった状態で転職活動をするのはあまりにもきついのです。 

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理由④:実力不足と思われたくない

これも前記②に似た自分のプライド、虚栄心由来の理由です。

自分が何かの分野で人より劣ることをよろこんで認めようという人はあまりいないだろう。その何かが自尊心にかかわるようなことなら、なおさらである。そして仕事は、まさにそれだ。どんな職業に就いているか、どの会社で働いているかといったことは、自己概念や自己像と深く結びついている。社会的地位の高い職業に就いている人やステータスの高い会社に勤めている人の場合はとくにそうだ。自分のイメージを高めてくれる仕事のためなら、どんな犠牲も惜しくないと考え、その仕事を辞めるのは、自分は実力不足だ、敗残者だと認めることにほかならない、と思い詰めるようになる。そこで、自分は優秀でタフで意欲的な人間だと自分にも他人にも示すために、何としてでも、たとえ身体を壊してでも、やり抜こうとする。

 

「今月も300時間超えちゃったよー」という長時間タイムチャージ自慢弁護士、「残業時間は100時間超えてますけど、しょうがないです」という残業企業戦士、たくさんいます。

 

「自分は優秀で売れっ子」と思いこみたい、長時間労働で自分は価値があると示したい。

 

これは苦しい。

 

大手法律事務所は、若手弁護士がたくさんいます。全員が忙しいか?そんなはずありません。優秀な若手に仕事は振られます。そして、優秀でないとみなされた若手には仕事は来なくなり、暇になっていきます。自然とそうなります。パートナー弁護士は使えないアソシエイトに自分の仕事をさせたくないのです。

結果、不人気なアソシエイトは干され、暇になります。これは大いに自尊心を傷つけられるシチュエーションです。これが怖いがために多くのアソシエイトはおびえるようにタフネス自慢をします。多くの企業法務法律事務所勤務の弁護士はこの本音を語ってくれませんし、自分はそうではないと言い聞かせる人もいるかもしれませんが、そう思っているはずです。

 

理由⑤:自分で選んだ仕事だから

人間は一度こうと決めると、その意思決定に心理的に縛られるようになる。これを心理学でコミットメント効果(commitment effect)と呼ぶ。とりわけ、その選択が心の中だけではなく公になされた場合(職業選択は家族や友人が知ることになるので、公と言える)や、自分の自由意志でなされた場合(すなわち強制されていない場合)には、その心理的な束縛が一段と強くなる。

自分が有名企業に勤務していると周りに知られていると辞めにくいわけですね。弁護士なら同期の目も気になります。「もう辞めたんだ、あいつ」と言われそうです。

 

ある企業を転職先に選んだら、それはその人の選択になるので、愛着やこだわりが生まれることになる。もう一つの心理作用として自己高揚動機も絡んでくる。自分のことをよく思いたいとなれば、自分が下した決断はまちがっていたとか、ばかなことをしてしまったとは認めたくない。そこで、自分の選択ミスを認めたくないがゆえに、悪しき職場にとどまり続けることになる。自分がばかだったと認めるくらいなら、最初の決定を正当化して貫き通すほうが容易になるのである。

かつて自分がくだした判断が誤っていたと認めたくないんですね。私は転職を数回しているせいか、この感覚はあまり持ってないです。

 

社会心理学者のロバート・チャルディーニの著書でもこのことは以下のとおり説明されています。

ひとたび決定を下したり、ある立場を取ると、自分の内からも外からも、そのコミットメントと一貫した行動をとるように圧力がかかります。そのような圧力によって、私たちは自分の決断を正当化しながら行動するようになります。そして自分が正しい選択をしたと自分に言い聞かせるだけで、本当に、自分の決定に対する満足度が上がるのです。

……私たちは皆、自分のこれまでの行為や決定と一貫した思考や信念を持ち続けたいと思うあまり、ときには自分をだますことさえあります。

(ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014年7月)97、98ページ)

 

  • 「自分は良い会社に入った」
  • 「大変だけど成長できる」
  • 「これは天職だ」

このように自分に言い聞かせる人がいます。

入社した会社について選択を誤ったと認めたくないのです。

 

きつい職場を辞めた後ですら、「あの時は大変だったけど、いい経験になった」という人はたくさんいます。

自分の過去の決定すらも「一貫性を保たなければ」という心理的圧力に屈してしまうのです。

 

さらに悪いことに、「自分で選んだ」というコミットメント効果は、労力と相性がいい。

コミットメントに労力が投入されればそれだけ、コミットメントした人の態度に与える影響が強くなります。

(ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014年7月)138ページ)

 

ブラック職場は従業員に極度の労力を費やすことを要求します。

長時間労働に、きつい精神的ストレス。

 

自分で選んだ(コミットした)仕事で大変な思いをする(労力がかかる)のであれば、人はかえってその仕事を正当化し、自分の決定の正しさ、一貫性を主張したくなります。

 

異常な職場ではこうした異常な心理が働くのです。

 

理由⑥:異常が正常と思い込むようになる

毎日午前2時まで働くのが当たり前の職場にいると、感覚が麻痺するというか、それが常識のように感じてしまうらしいのです。

不幸にも現代の多くの職場では、長時間労働を始めとする苛酷な労働条件が規範と化している。そこで、そういう職場に直面しても別に異常とは思わなくなってしまう。むしろ愚痴をこぼす人や文句を言う人、病気になる人、果ては辞めていく人を見ると、そちらを「おかしい」と感じるようになる。大勢があたりまえと思っている仕事をなぜ辞めるのか、というわけだ。

毎日職場から午前にタクシーで帰宅する人は、たまに午後6時の帰宅ラッシュを見てこう思うのです。

「この人達もう帰ってる?!そんなんで仕事したって本当に言えるの?」

 

このコメントに賛同するようになったら危険思想の持ち主です。

  

以上がフェファー教授の指摘する「ブラック職場を辞められない理由」です。人の不合理な面が表れています。 

 

3 ブラック企業を辞めない理由は人の不合理な心理の表れ

どこでどのように働くかは超重要です。

人の心理の不合理な面を理解して、現職場と転職市場で得られる仕事とを比較して、よりよい生活が送れるようにすべきです。

 

夢、人生の目標、長期的な計画といったたいそうなものは必要ありません。

 

今の仕事がつらいなら、その仕事と求人情報を見比べて、現状を改善できるかだけ考えればいいのです。

 

本文中で説明したとおり、軽く相談して気晴らしをしつつ転職市場の情報収集がしたいなら、リクルートエージェントがおすすめです。大手の方が、対応がやさしいことが多いです。(私の経験ではリクルートエージェントの1人目の担当者は微妙ではありましたが。。)

 

私が相談に言ったときは、パートナー弁護士が嫌いすぎて凄まじいストレスを感じていた時であり、「一緒に仕事するのが耐えられないんです。それが転職志望動機です」とリクルートエージェントの担当の方に打ち明けました。

 

すると、「私も転職しています。前の職場で上司と本当に合わなくて嫌になって辞めましたので、よくわかりますよ」と言ってもらえました。

 

本当に救われた気分になりました。

 

 

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