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転職面接前に知るべき効果的な心理学の知識

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転職活動で役立つ心理テクニック

  • 面接官に「もしこの人を採用したら」と思わせる
  • ネガティブな警告よりもポジティブなメッセージを発信
  • 明るく楽しい感じを出す(明るい表情でハロー効果を発現させる)
  • 第一印象を重視せよ(初頭効果は撤回できない)
  • 面接官に話をさせる
  • 面接官の意見を否定しない
  • 採用者にコミットさせる
  • 面接でアピールすべきポイントは温かみと能力
  • 面接の順番は後の方を狙え
  • 会社を辞めずに転職活動をする(失職期間は心理的に不利)

内定獲得に効果的な心理テクニックを理解して実践する。

認知神経科学、社会心理学、経済学、行動経済学等の書籍から採用面接に応用できる知見を紹介します。

転職活動での面接突破テクニックとして世間で紹介されているものは、ブログ記事は言うに及ばず、書籍であっても、「私はこうした」「こうやったらうまくいった」という個人の体験、感想に基づいた「聞きたいか俺の武勇伝」自慢が多いです。分析してあっても個人の思い込みばかり見られます。

そんな根拠曖昧なものに自分の転職活動の出来を委ねられない、ということで転職面接に有益な手堅い根拠のある情報を整理して紹介するのが本記事です。

ライバルの知らない有益知識を知って差をつけましょう。

(2020年10月18日改訂)

 

1 面接官に「この人がいたら」と思わせよ

面接では、面接官に、応募者が応募先の企業で働いている姿を想像させる。

それがポジティブでかつ具体的であれば非常に効果が高い。

このポイントは、行動経済学の「仮想の所有意識」と呼ばれる効果から裏付けられます。

 

(1) 人は何かを持っているだけでそれを高く評価する(授かり効果)

私たちはなにかに投資をすると所有意識が高まり、そのせいで所有物に実際の価値とは無関係な評価を与える。何かを所有すると、どのようないきさつで所有するようになったかにかかわらず、それを過大評価する。なぜだろう。それは授かり効果と呼ばれる傾向のせいだ。ただなにかを所有しているというだけで、その価値を高く評価するという概念は、ハーバード大学の心理学者エレン・ランガーによって初めて実証され、のちにリチャード・セイラーによって展開された。授かり効果の基本的な考え方は、あるものを今所有している人はそれを過大評価し、そのために将来の所有者が買おうとする金額よりも高い金額で売ろうとする、ということだ。なぜなら、それを買おうとする人は所有者ではないため、所有物への愛着から生じる授かり効果の影響を受けないからだ。一般に、授かり効果を試す実験では、売値は買値の約二倍にもなる。
(ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』(早川書房、2018年)149ページ)

単になにかを所有しているだけで、人はその物の価値を高く評価します。

転職に関しても、自社社員が辞めるのを会社は嫌がります。手持ちのものを手放すことを人は嫌がるのです。

しかし、面接では、応募者はまだ応募先に「所有」されていません。

所有されていなくても、「仮の所有」でかまいません。「うちの社員なら」と思ってもらえればいいのです。

 

(2) 「仮にもしこの人がいれば」と思わせるだけで効果はある(仮想の所有意識)

仮想の所有意識と呼ばれるものもある。完全に購入しているわけではないものに所有意識をもち、その品の趣きや感触、感覚を十全に感じることがあるのだ。
たとえば、イーベイでミッキーマウスの時計に入札するとしよう。オークションは間もなく締切で、現時点であなたが最高額入札者だ。オークションは終了していないから、まだ商品を所有していない。なのにすでに落札して所有しているように感じ、自分が商品を所有し、使っているところを想像する。だから、だれかが終了間際に最高額で入札し、商品をかすめとっていくと激怒する。これが仮想の所有意識だ。ミッキーマウスの時計を所有したことは一度もないのに、所有しているように感じ、その結果より高く評価する。

(ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』(早川書房、2018年)154ページ)

面接で特に重要になるのはこの仮想の所有意識です。

まだ採用しているわけではないのに、採用したかのような所有意識を持つと、その対象となる応募者を高く評価することになるわけです。

この意識を採用担当者に十分に働かせるには、「もし採用したら」ということを考えさせる必要があります。

 

(3) 授かり効果・仮想の所有意識を無視できないのは「損失嫌悪」の心理が背景にあるから

授かり効果や仮想の所有意識という概念はどれほど強力なのか?

これはかなり強力です。

なぜかというと、損失嫌悪という人の特性に結びついているからです。

この授かり効果の背景には、損失嫌悪がある。人は、自分の所有するものを手放したくない。

(リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 ―賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学―』(青土社、2018年1月)142ページ)

損失嫌悪とは、すでにもっているものを手放すことを避ける一般的な傾向のことをいいます。「何かを得ることで幸せになる度合いは、同じ物を失うことで不幸せになる度合いの半分程度」しかありません。(ニスベット・同上141ページ)。

 

1万円で買った大事なバッグを、買った直後に「1万2000円で売ってくれ」と言われると人は嫌がるのです。

 

損失嫌悪についての有名な実験を紹介します。

ビジネススクールのあるクラスの生徒を半分ずつAグループとBグループに分けます。

  • Aグループ:大学のロゴの入ったカップがもらえる。
  • Bグループ:何ももらえない。

そして、AグループとBグループの生徒にこう質問します。

(Aグループに対して):そのカップをいくらでなら売りますか?

(Bグループに対して):そのカップに似たものをいくらでなら買いますか?

 

結果は、AグループとBグループとで大きく異なります。

Aグループは、「2000円でなら売ります」と答えます。

Bグループは、「1000円でなら買います」と答えます。

平均して、カップをもっている人は、カップをもっていない人が平均して払ってもよいとする金額の2倍の額をもらえる場合にのみ、カップを売ってもよいとする。

(ニスベット・同上142ページ)

 

同じようなカップの価値に2倍もの差がつくのは不合理です。

授かり効果を費用便益の観点から正当化することは不可能だ。本来なら、商品を、それに払った代金と同額か、わずかに高い額で売っても構わないとなるはずだ。

(ニスベット・同上143ページ)

 Aグループの「手放したくない」心理が、この大きな差を表しています。

無料でもらった、大学のロゴ入りのカップという大したことのない物でさえ、この心理はこれほど強力に作用します。

 

他に代わりのいない人材採用の場面であれば、より強力に作用します。

これは人にビルトインされた傾向であり、人である以上いかんともしがたいものなのです。

転職面接で活用しない手はありません。

では、これをどう具体的に転職面接で実践すればよいのでしょうか。

 

(4) 面接で授かり効果と仮想の所有意識を効果的に活用する実践テクニック

面接では、面接官に仮想の所有意識を持たせるように工夫しましょう。

「私が御社で働いたら~をします」といった具体的シーンを思い浮かべるような発言がよいです。

ア 仮想の所有意識を持たせる発言のためには面接前の準備が必要

そのシーンを作るには、以下作業が有用です。

  • 事前にその会社/事務所が求めている人物像・仕事を知っておく(仮説)
  • 面接でどんな人物が求められているかを質問する

たとえば、ある会社がM&A法務担当者を募集したとします。

まず、面接前に、そのことを知っておき、どんなことを新たに採用する人にしてもらいたいかを予想しておきます。

海外M&Aで外国人弁護士とやりとりをしてほしいのか、国内の小さなM&A向けにDDを含めて社内だけでできる体制を作り上げるための戦力増強なのか、M&Aノウハウが乏しく他の社員への教育目的もあるのか、考えてみましょう。

転職エージェントへの質問も有効です。

 

そして面接で、「どんなことを採用者に求めているのか?」を聞きましょう。

具体的に突っ込みができるとよりよいです。採用側の真のニーズを突き詰めることが大切です。採用側が困っていることが聞けるとよいでしょう。

「これまでの担当者が1人辞めて、1人は産休に入った。英語で海外案件できる人が急に減った。海外とやりとりして社内できちんと説明してほしい。」といった事情を聞き出しましょう。

 

イ 具体的シーンを語って仮想の所有意識を持たせる

準備が整ったら、シーンを設定して、応募者がどう動くかを具体的に語りましょう。

「私がそのポジションについたら、外国の弁護士に言われるままではなく、自分からアイデアを提示します。複雑なことはメールや添付ファイルを使って説明しますが、必要に応じて電話や会議での説明も実施します。また、社内説明向けとして案件内容を日本語サマリーを作って関係部署に随時報告します。」

これは仮定の発言例ですが、事前質問と場面設定、自身の経験がマッチすれば効果抜群です。

 

2 採用という積極的な行動を取ってもらうにはネガティブな警告よりもポジティブなメッセージ

「私を取らないと損ですよ」という強気な警告めいたコメントをすることも考えられます。面接対策本では見ないスタンスの取り方です。

しかし、他人を動かしたいならポジティブな結果を、動かしたくないならネガティブな警告が効果的です。

「行動要請」と「脅威」の組み合わせより、「行動要請」と「ポジティブな結果」の組み合わせの方が、変化を導くには有効

(ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』(白揚社、2019年8月)85ページ)

 

ネガティブな結果を警告すると、人は思考停止・活動停止になってしまって何もしなくなってしまうのです。

「たばこを吸うとガンになる」というネガティブな警告は、たばこを吸わないという行動停止をもたらすので効果的です。

 

採用面接では、採用という積極的な行動を相手に取ってもらう必要があります。

そうだとしたら、「応募者を採用する」という行動をとらせるには、「私を採用したらこんないいことがあります」という未来のポジティブな結果を伝え、イメージさせるのが効果的といえます。

このポジティブなメッセージを伝えて自分採用のメリットを語るのは、上述した授かり効果、仮想の所有意識と共通して重要な点です。

 

3 面接は自らの楽しく明るい感じで面接官に好影響を及ぼす

面接官によい印象を与えるには、応募者から明るく楽しそうに振る舞うのが大事です。なぜなら、その雰囲気は面接官に影響を与えるからです。

この「感じの良さ」の重要さを侮ってはいけません。面接で重要なのは印象です。
感じの悪さは残ります。

採用という行動をとってもらうよう働きかけるには、感情に訴えかける方が効果的です。
感情に訴えるといっても、涙を誘うような感動的な話をするということではありません。
快活で前向きな印象を与えるのです。

そのためには自分が前向きな態度を取り、感情的に面接官に波及させる必要があります。

感情面でよい印象を与えれば、お互いの情報伝達はスムーズに進み、面接も円滑に進みやすくなります。

影響を与え合う最も強力な方法の一つが、感情を用いることだ。アイデアを共有するには時間と認知的な努力を要することが多いが、感情の共有には時間も手間をかからない。あなたが即座に労せず、たいていは無意識に得たその感情は、周囲の人々の感情に影響を及ぼし、周囲の人たちの感情もまた、あなたの感情に影響を及ぼす。同僚、家族、友人、そして赤の他人までもが、あなたの状態を表情、声のトーン、態度、言葉使いの変化から速やかに感じ取る。そして意識はせずとも、あなたが楽しければ周囲も楽しい気持ちになりやすく、あなたがイライラしていれば周囲もイライラするようになる。
私たちの脳が感情を素早く伝達し合うようにできているのは、周囲の環境に関する重要な情報を、感情が知らせてくれることがあるからだ。

(ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』(白揚社、2019年8月)56ページ)

論理的に説得的なメッセージを展開して面接官に理解させるよりも、「この人何かいいな」と感情に訴えかける方が遥かに効果的だということです。

私たちは感情を個人的なものと捉えがちだが、その直感は間違っている。他人は瞬間的に、また無意識のうちに絶えずあなたの感情を受け入れ、行動に変換する。私的な感情を表しただけで、他人の感情が誘発されることを心にとめよう。

(ターリ・シャーロット63ページ)

感情は、私だけのもの、相手だけのものではありません。応募者の感情は面接官に作用するということです。

応募者にネガティブな感情を持ってもらうべきか。たとえば、「日本の○○制度はおかしい!私はそれに憤りを感じてそれをなくそうと思っています」という感情を面接官に共有してもらうがいいのか。

あるいは、「私はこれがしたいです。そうすればこんなに楽しいです」というポジティブな感情を面接官と共有すべきか。

どちらも効果がありそうなのですが、「他人を動かしたいならポジティブな結果を、動かしたくないならネガティブな警告が効果的」という上述の説明からすると、ポジティブな感情を共有する作戦の方が優れています。

 

そして、「楽しく明るい感じ」を与えて好印象を与えるには、表情が超重要です。

人は、本能的に表情から相手がどういう人間かを判断するからです。

私たちは見知らぬ人の顔を一目見ただけで、生死を決しかねない二つの重大な事実を評価する能力を授かっているという。一つは、その人物がどの程度支配力を持っているか(したがって潜在的に危険か)ということ。もう一つは、どの程度信頼できるか、言い換えればこの人物は友好的なのか、それとも敵対的なのか、ということである。顔の造作は、支配力を評価する手がかりとなる。たとえば、角ばった頑丈な顎はその一つだ。また笑顔やしかめ面といった顔の表情は、よそ者の意図を評価する手がかりとなる。角ばった顎にへの字に結んだ口の人物は、怒らすと面倒なことになりかねない、というふうに。もっとも、顔からの推測は正確にはほど遠い。まるい顎だからといって温和とは限らないし、笑顔は作り笑いということもある。だが不完全な能力であっても、生き残るうえでいくらかは役に立つ。

(ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー (上)』(早川書房、2012年11月)134ページ)

表情は、面接官に与える印象として大事です。

よい表情には面接で大きな効果があるということです。

 

4 第一印象は重視しても重視し足りない【初頭効果】

最初の印象はインパクトが大きいです。

とても大きい。

面接では、第一印象がとりわけ大きく、後々まで響きます。

なぜか。

最初にその人を観察して得た情報が、その後の情報を解釈したり記憶したりするときに影響を及ぼすからです。

このように以前の印象が強すぎて不正確なイメージをつくり上げ、人の判断をまちがった方へ導いてしまう現象を初頭効果(primacy effect)と呼びます(ハイディ・グラント・ハルヴァーソン『だれもわかってくれない 傷つかないための心理学 (ハヤカワ文庫NF)』(早川書房、2020年2月)47ページ)

 

この初頭効果は絶大です。

一度つくられてしまった印象をあとから変えることは大変困難であり、だからこそ第一印象を正しくすることが大事

(同上・52ページ)

 

第一次面接の冒頭で形成された第一印象は、その後一次面接が30分か1時間か続く中で生き続けるだけでなく、その人を二次面接に進めるかの判断、はたまた、内定を出すかの判断まで影響します。

そして、判断者は、その初頭効果の影響を受けていることに気づいていません。

 

なぜ第一印象は修正されずに残るのか。

それは、人にとって第一印象を形成するのは簡単で楽です。第一印象を修正して人に対する評価を再構成するのは困難で大変な作業です。

人の世界の認識は、”とにかく省エネで楽をしたがる”という癖があります。人は誰しも心理的怠け者です。

 

この怠け心が発動するのが第一印象です。

せっかく築いた第一印象という絵を描き直したり修正するのを人は通常嫌がるのです。

最初の印象を修正するのは容易ではなく、努力を要し、自動的には行なわれません。したがって認識する側には、相手を理解しようとするエネルギーと時間のほかに、それを行なうためのモチベーションが必要になります。

 (ハイディ・グラント・ハルヴァーソン『だれもわかってくれない 傷つかないための心理学 (ハヤカワ文庫NF)』(早川書房、2020年2月)95ページ)

転職で大事な採用をするのだ、いい人を取るぞ!と頑張る人は多いと思いますので、努力して第一印象についてあれこれ考える人は少なからず多いと思います。

しかし、その印象を変えるのは認識者にとって骨の折れることであるということは応募者は知っておいてしかるべきです。

人とよいコミュニケーションを持ちたいとき、あるいはよい印象を相手に与えたいと思うときには、「フェーズ1」の段階(*注)で適切なシグナルを発する努力が大事です。初めに正しい印象を与える方が、あとで修正するよりもはるかに簡単で望ましいからです。

(ハルヴァーソン・同上97ページ)

 *人間の認識には、2段階あり、フェーズ1とフェーズ2がある。フェーズ1は、自動的、無意識に簡単にすぐ形成される人の認識。フェーズ2は、意図的、意識的に、よく考えて形成される人の認識。

 

その重要な初対面の印象を決める要素は次のとおりであるとされます。

  • 視覚情報 (見た目、表情、しぐさ):55%
  • 聴覚情報 (声の質や大きさなど):38%
  • 言語情報 (話の内容):7%

これが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) のアルバート・メラビアン教授が提唱した初対面の印象を決める要素であり、メラビアンの法則と呼ばれています。

一番大事なのは「見た目」です。

そして、この見た目は、「肌」と「髪」で決まります。

(メラビアンの法則と見た目について、小川徹『ハーバード現役研究員の皮膚科医が書いた 見た目が10歳若くなる本』(東洋経済新報社、2019年3月)2ページ)

 

面接では明るい印象が大事

 ▼

明るい印象を出すためには見た目が重要

 ▼

見た目で重要なのは肌と髪

 

面接対策として、スキンケア、ヘアケアを日頃から丁寧にしておきましょう。

また、面接当日はきちんと清潔感ある身だしなみで臨みましょう。

 

5 面接官に話をさせろ、質問せよ

面接が応募者の売り込みの場だからといって自分のことばかり話すのは効果薄です。

自分より面接官に話しをさせるべきです。

 

(1) 面接官に話させて気分よくさせる

面接官に「応募者にいいこと話してあげた」と思わせるのが特にいい。

他人に情報を与える機会は、内的な報酬をもたらすようだ。ハーバード大学が行った研究では、人は自分の意見が他人に広まるならば、進んで金銭的利益を見送る傾向にあることがわかっている。

(ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』(白揚社、2019年8月)13ページ)

面接が終わった後に、面接官に「今日はいいこと教えてあげた」と思ってもらえたら正解です。

 

(2) リンカーン大統領は相手に話をさせる重要性をわかっていた

エイブラハム・リンカーン

「誰かを説得するときには、自分のことと自分が話したいことに3分の1の時間を使い、残りの3分の2は相手のことと相手が何を言いたいのかを考えることに使う」

ーエイブラハム・リンカーン(アメリカ合衆国第16代大統領)

これは、転職でも参考になります。

なぜなら、転職面接も面接官という「誰かを説得するとき」に当てはまるからです。

 

したがって、転職面接でもリンカーンの考えを1つの指標としましょう。

  • 自分のこと&自分が話したいこと 1/3
  • 相手のこと&相手が何が言いたいのかを考えること 2/3

 

リンカン大統領は、議論がはじまるまでに自分が相手の立場で考えることが必要だとわかっていた。リンカンがアメリカで最も偉大な大統領の1人だと称されるのは、相手が望むことや相手の戦略を予測することに長けていたことも理由の1つだ。アメリカが南北戦争の苦難を乗り切るために、リンカンには失敗が許されない逐次手番ゲームに真剣に取り組むことが求められた。

(『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)512ページ)

 

(3) 話をさせるには質問をする

面接官に話しをさせるのは効果的だとわかった。

そのためにはどうするか?

面接官に質問をしましょう。

それも、面接官が話したいことを質問しましょう。

会社ビジネスの将来について話したい採用担当者は社長クラスでもなければ少ないです。

面接官が話したいことは、面接官自身のことです。

面接官がどういう人なのか、その人について質問をしましょう。 

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6 面接官の意見は否定しない

面接官が、自分とは違う意見を持っている。または、事実と違うことを言っている。
そういう場合、気づいても言わない方が面接ではうまくいくことが多い。
なぜなら、人は自分の思っていることがそうであると信じたいから。

信じることは、実際の出来事と同じように人を幸せにしたり悲しくさせたりする。

情報に打ちのめされたり元気づけられたりしてきた経験を生まれたときから積み重ねてきた私たちは、情報が気持ちに影響を及ぼすことや、情報を利用して感情の調整ができることを、身をもって知っている。結果として人は選択的になり、心地良い信念を形成してくれる情報で心を満たし、不快な考えをもたらす情報を避けようとする。

(ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』(白揚社、2019年8月)13ページ)140ページ)

面接官も自分にとって心地よい情報で人生を過ごしてきて、それを面接で披露しているのです。

それについて「違います」と指摘するのは、面接官の気分を害します。

面接は議論の場ではなく、自分を売り込む場です。議論するにも時間があまりに足りません。議論するのは入社後でいいでしょう。

自分について誤った指摘をされた場合などでない限り、面接官のコメントは否定せずに気持ちよく語ってもらうべきです。

 

7 採用をコミットさせる

ある中古車販売の講演会で述べられた中古車売り込みのテクニック。

「お客を契約書の前に座らせなさい。お客にOKと書かせなさい。頭金を払わせなさい。お客をコントロールし、商談をコントロールするのです。価格が適正なら、今すぐ車を買う気があるのかどうかを答えさせなさい。大事なのは、彼らの意志をはっきりさせることです」
(ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2014年7月)113ページ)

中古車の売り込みの心理テクニックを採用面接という売り込みの場でも応用しましょう。

ここで重要なのは、コミットメントという概念です。

コミットメントとは、将来損失を被るとしても、選択した後には変更できない行動のことを言います(『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)510ページ)。

 

(1) コミットメントと一貫性が人の行動に影響を及ぼす

ここで述べられた心理的な効果は、人は、一度自分の立場を明確に外部に発信すると、その後の行動をそれと一致させなければならない、一貫していなければならないと強くプレッシャーを感じるということです。

一度、自分の立場を明確にすると、行動とその立場を一貫させようとする強い力が自然と生じます。私たちは、情報が少ない段階で行った予備的な判断にも影響を受け、最終段階の決定をその予備的な判断と一貫させようとします(『影響力の武器』112ページ)

コミットメントに縛られるのは政治家だけではなく、誰でもそうなのです。

たとえそれが挨拶の決まり文句であっても、元気でうまくやっていると答えた人は、恵まれた環境であると自分で認めたために、けちな人間だと見られるのに気まずい思いを感じる(『影響力の武器』115ページ)

「恵まれない子供に募金をお願いします」という電話をかけて募金を募ったときにもこのコミットメント効果は威力を発揮したそうです。

①電話冒頭に上記のとおり「元気でやってますか」と聞いて「はい」と言った人たち
②特に①のようなやりとりはなく単に募金をお願いされた人たち

 

上記①と②を比較して、①の方が募金に応じた人数が多かったそうです。

理由は上記引用のとおり、「恵まれた環境であると自分で認めたために、けちな人間だと見られるのに気まずい思いを感じ」て募金に応じざるを得なくなったのです。

こんなささやかな発言でも人は自分の言ったことに心理的に縛られます。

 

(2) 採用をコミットさせるための技

採用面接でどうこの心理的作用を応用するか。
コミットメントが効果的に影響を及ぼすには、以下4つの条件が必要です。

  1. 行動を含むこと
  2. 公表されること
  3. 努力を要すること
  4. 自分の意志で選ぶこと

これらの条件を満たすには、「こんな人材が採りたい」と言ってもらうのがよいのではないでしょうか。

たとえば、応募者が30歳だとします。採用企業は25~35歳の年齢層で採用したいと思っていて、30歳は取りたい年齢です。

転職エージェントからその会社にこんな質問をしてもらいます。

 

転職エージェント:「25~35歳とありますけど、その中でも望ましい年齢は何歳くらいですか?」

採用担当:「うーん。30歳くらいですね」

転職エージェント:「それならいい人がいます。ちょうど30歳の応募者の方です。」


上記例は、年齢でしたが、「同じ業界出身者」「特定の業務経験」といった採用条件になっているものがあるでしょう。

応募者が持っている強みを単に売り込むだけでなく、採用担当者にその強みを持った人が欲しいと言わせるのがコツです。

 

「私はこの業界の経験者です!」

こう売り込むのではありません。

 

「どのような経験を持った人の採用をご希望でしょうか。(業界経験がある人がいい、と回答させた後に)それでしたら、私はこの業界を経験しています」

このように売り込むのです。

 

「業界経験者採りたいって言ったのはどこの誰でしたっけ?」と後で嫌味が言えるような詰め方をするということです。

 

面接の場では面接官が望む回答をしてくれない可能性がありますので、面接の裏側で転職エージェントに行ってもらうのが効果的だと思います。

 

8 面接でアピールすべきポイント

面接では、自分がどんな人間であるとアピールすべきでしょうか。

それは以下2つです。

  1. 人間的な温かみがある。
  2. 有能である。

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9 面接の順番は後の方を狙え

面接官の心理の癖を活用して他の応募者の優位に立つべく、面接前の準備も考えましょう。

それは面接の順番です。

後の方を狙いましょう。 

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10 会社を辞める前に転職活動をして失職期間を作るのは不利

転職のために会社を辞めてはならない。

これは転職の基本的な鉄則です。 

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会社をやめて無職になって転職活動をするのは自分の経済面、心理面で良くないからですが、それだけではなく、面接官に与える心理的影響を考えても望ましくありません。

つまり、面接で内定をもらうのが難しくなるのです。

なぜか。

「この人は無職だ。何か問題があるのかもしれない。他の会社はそれを見抜いていて、私だけが見抜いていないのかも」と思われる可能性があるのです。

この、他人に同調する圧力を人は多いに感じます。

 

似たようなレストランAとBが2軒並んでいます。

まだ11時20分で、客はゼロ。

あなたは、レストランAを選んだ。

 

これは、レストランBに打撃を与える。

後から来た人は、レストランAにはあなたが客としているのが見える。レストランBには客がいない。レストランBは何かあるのかも、と思ってレストランAを選ぶ。そして、この「他の人がやってるから私もそうする」現象は続きます。

 

このように、人々が自分が持つ情報ではなく、周囲の意思決定に基づいて選択することを情報カスケード(information cascade)といいます(『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)696ページ)。

 

世界最先端のミクロ経済学の教科書で、この情報カスケードという現象が就職面接で重要な意味を持つ可能性があると説明されています。

情報カスケード が重要になるかもしれない場面には、就職時の面接がある。

(『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)697ページ)

どう就職(転職)面接で情報カスケードが重要になるのでしょうか。

雇用主が、候補者の履歴書を見て、ある時期に雇用されていなかったことを知ったとしよう。面接はうまくいき、候補者は適任のように見えたとしても、雇用主は、その候補者がそれまで仕事を見つけられなかった事実から、他の人たちが仕事に向かないと判断していたと受け止めるかもしれない。そう考えた雇用主は、候補者の評価で何か重要な点を見逃しているかもしれないと思いはじめるので、自分が高く評価したことは無視して、候補者が失業していたという過去の情報に重きを置いて判断するかもしれない。すると、この候補者は雇われない。次も、その次も就職面接では雇用主は同じ判断をし続けるかもしれない。こうした情報カスケードは、この運の悪い就職希望者の失業を長引かせてしまうのである。

(同上)

失職期間が履歴書に書いてあるのは、転職業界のなんとなくの知恵であるだけでなく、世界的な経済学者によるテキストにも書かれているような理論的裏付けがあるのであります。

採用担当を不安にさせないためにも、失職期間は作るべきではありません。

 

11 心理テクニックを使うには転職エージェントと協働せよ

採用テクニックをうまく使うには、面接本番だけ集中するのでは不十分です。

書類応募前から勝負は始まっています。

面接で質問するための情報を集め、応募時に応募者のよい印象を与えたり、面接後のフォローも必要です。

転職エージェントを経由するのであれば、転職エージェントの協力、協働が不可欠です。

快く応じてくれるエージェントばかりではないため、慎重にパートナーとなる転職エージェントを選びましょう。 

 

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