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企業内弁護士(インハウスローヤー)のキャリアと末路 | 大手日系企業に行ったらこうなる

企業内弁護士 キャリア

インハウスローヤー(企業内弁護士)が日系大手企業に骨をうずめるとこうなる

(2021年4月30日改訂)

私は法律事務所から日系大手企業に転職しました。

その経験と自分の知り合いの声等から、インハウスローヤーが日系企業で長年勤めた場合の末路(キャリア)はどうなるか考えてみました。

一言で言えば、弁護士資格は尊重されずに会社員として退職することになります。

外資系企業を転々とするのではなく、いかにも日本企業という感じの会社にインハウスローヤーとして入社したらどうなるのか。 

 

 

1 採用時点で弁護士資格はどう思われているのか

転職であれ新卒入社であれ、司法試験合格や弁護士資格保有の事実は、採用でそれなりに評価されます。

かつて三井物産が司法試験に落ちたロースクール生の内定を取り消さなかったと見ました。

「司法試験に合格してるかどうかではなく、自社にあう人材か見ている」という理由だそうです。

司法試験に合格している人はたくさんいるので、あえて不合格者を採用する必要はないと思います。

転職時の採用面接に意味はない | 面談で人は見抜けないで書いたことをこの採用担当者は無視しています。

「自分なら人を見る目がある」と思い込んでるからそうなります。

司法試験の結果という公的で客観的な事実よりも、自分の感想の方を重視しているということです。

 

傾向として、採用者が弁護士でないと弁護士資格の重視度が下がります。

弁護士でない人が多数派の法務部で、採用担当者が弁護士でない場合、「いい人がいたら取る。弁護士資格はあればいい」という、あいまいな採用基準を持つことが多いです。

 

「いい人」かどうか、というのは採用基準として雑すぎですが、だいたいそんな感じです。

私が中途で入った日系企業の法務部長に後日採用基準を聞いたところ、「一緒に働きたいかどうか」でした。

 

他方で、採用者が弁護士の場合、弁護士を重視する傾向があります。

 

2 入社後:実は弁護士資格は必要ない

私は弁護士ではない採用者に採用を決定されて日系大手企業に中途入社しました。

1回目の面接が終わったその日に転職エージェントから第二次面接の打診が来ました。

その際に転職エージェントから「先方は、にゃんがーさん、あなたのスキルはもう十分にあると判断しています」と言われました。

 

書面出して面接を1回しただけでスキル十分と判断されたということなので、弁護士資格は重視されたのかもしれません。

 

配属先は法務部だし、法律事務所で培った経験をもとにがんばるぞ!と思って入社しました。

 

しかし、そこは弁護士資格不要が当然の世界でした。

法律事務所とは全く違う。

 

その法務部を支配している多数派は、弁護士ではない法務部員です。

法務部員として何年、人によっては10年以上、20年以上も働いてきています。

社内では「法律の専門家」として通っている。

実態がそんな世界なため、

法務に転職するのは未経験者も可能と現役弁護士は言っているのであります。

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「大企業で法務部として長年エキスパートとして働いている人達は洗練されたプロだ!」

そう思っていましたが、実態は違います。

全く法律に詳しくありません。

 

大企業無能サラリーマンの傲慢 | なぜ気づかないのかで書いた通り、単に「法務部」という法律のことに詳しそうな部にいてそれっぽい作業をやっているから私達はエキスパートなのである、と思い込んでるだけです。

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専門化は単に、違う人が違うことをしている―そして、二人の人が同じ時間に同じ場所で同じことを行なうのは物理的に不可能であるため二人の人はつねに違うことをしている―ことを意味するにすぎない。

(ハーバート・A・サイモン『新版 経営行動―経営組織における意思決定過程の研究』(ダイヤモンド社、2009年7月)45ページ)

上記過去記事で引用したこの指摘がまさに当てはまります。

「俺たちはいい仕事してる」と信じ込んでいる法務部に弁護士が入り込んで、弁護士資格が重視されるかというとそんなことはありません。

「弁護士資格はなくてもいい」という発想のもとで動いている部であれば、弁護士であることがどれほどの意味を持つのか。

 

人によっては遠慮してきます。

「さすがですね」とか「前は稼いでいらっしゃったんでしょ」などと弁護士は別世界の人間でるかのようなことを言われます。

 

仕事でそんな弁護士資格をありがたがってもらえるかというと全くそんなことはありません。

法律事務所にいる弁護士が、中途入社で会社に入ると、なぜか弁護士マジックが失われます。

 

外部法律事務所の弁護士には、「先生、先生」とペコペコ低姿勢。

でも、内部の同僚の弁護士資格を社員の意見はちっとも聞きません。

私が「これはこうです」と会社法について意見を言っても、「○○先生に聞いてみよう」となります。

 

「それはお前の意見がイマイチだからだ」という批判がありそうですが、そういうわけではありません。

インハウスローヤーとして同じ境遇の人ならよくわかると思うのですが、会社法務部は外部法律事務所の弁護士の意見を神の啓示のごとく扱っています。

「外部の専門家がこう言っています」という責任逃れに便利なのはもちろんあるのですが、それにしたって「正解を教えてくれる」と信じ込み方は尋常ではありません。

 

そんな外部法律事務所で働いていた私は、軽蔑の目で同僚である法務部員を見ているのですが、外部法律事務所で働いたことのない生粋の法務部員には私の考えが伝わるはずはありません。

 

まとめると、中途入社したインハウスローヤーは、そのスキルは特に求められていません。

仕事のレベルも大したことがない。弁護士資格なく法律の勉強もほとんどやっていない部員がこなしてきたものをやるだけですので、法的な答えを出す判断の責任を負いません。

また、外部法律事務所に頼るという構造が出来上がっています。社内弁護士は頼られません。

その分、企業内弁護士は、外部法律事務所に比べてぬるま湯につかることができます。

楽さは法律事務所の比ではありません。 

 

インハウスにも長所・短所があるのです。

インハウスローヤー(企業内弁護士)のデメリットとメリットを体験談から考える

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3 社内人事制度:弁護士?だから何?

法務部が強くない日系大手企業の人事制度では、弁護士であることは評価に何のプラスにもなりません。

弁護士手当はありません。

弁護士だから給料が高いということもない。

他社員と同じ。

 

本記事で主題の「キャリア」についてはどうか?

弁護士であることはどう考慮されるのか。

全くない。

法務部で過ごす以外に道がありません。

知財の部門に行くとか、海外に出向するとか、そういうルートはあります。

でもそれくらいです。

弁護士だからその専門性を考慮したキャリアを歩めるよう制度設計がされているかというと全くそんなことはありません。

法務部長に優先的になれるわけでもない。

 

弁護士資格のない人達が弁護士のことを何も考えずに作り運用する人事制度に弁護士資格が何の意味があるというのでしょう。 

 

4 インハウスローヤーのサラリーマン人生の終焉

法律事務所からインハウスローヤーになって、最初はいい。

気楽であり、「弁護士先生、よく来た!」と言ってもらえる。

 

でも、最初だけです。

スキルを評価されるわけではないことはやがてわかっていきます。

法律知識が全然ない法務部員が偉そうに仕事(雑務)をしていて、それが評価される世界に嫌気がさしてきます。

 

その後には将来を考えるようになります。

管理職に就くのは遅い。40歳過ぎ。

40代前半で管理職になれるとは限りません。

50代になって課長になる人もいます。

課長になれずに終わるかもしれない。

 

出世の際に弁護士資格は関係ありません。

下駄をはかせてもらえないのです。

 

そしたら、中途入社は不利です。

弁護士資格が有利に働かない以上、単に転職中途採用組は日系大企業で出世できない可能性が高いだけです。

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また、自分以外に弁護士資格保有者がいれば、当然ライバルになります。

法務部の中の出世ポジションは少ないです。

課長と部長しかない。

 

部長にはほぼなれない。

中途入社だから。

 

インハウスローヤーとして最高の出世は法務部の課長になることです。

そこで終わりです。

その後は部内の課を転々とするだけです。

 

希望を出せばどこか行けるかもしれません。

総務部とかの管理部門です。

でもそれくらいです。

上に行くルートは厳しい。

全く評価されない法律バックグラウンドしかない中途入社を出世させる会社がどこにあるのか?

 

運よく課長になれてその先は?

役職定年が待っています。

 

50代半ばまでに管理職を解かれ、ヒラにされます。

給料も下がります。

それでそのまま定年を待って終わりです。

「俺は昔弁護士だったんだ」と過去の武勇伝を語りながら終焉を迎えることになるのです。

 

昔アメリカのロースクールに留学したニューヨーク州弁護士資格保持者で、かつてM&Aを担当する課長だった人が、サラリーマン人生晩年は平社員として地方の拠点で総務部員として働いていました。

 

それを聞いて「その人をもっと活かせるポジションはあるだろうに」と思いましたが、そんなことが配慮された人事制度ではないのです。

 

弁護士の転職と年齢 | 年代に応じた転職事例と限界を考察するという記事を書いた通り、自分の年齢と法務キャリア のステージと今の仕事、転職候補先等を考えねばなりません。

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5 弁護士資格が重要なのはいつでも辞められること

インハウスローヤー(企業内弁護士)にとって、弁護士は強みにならないのか?

 

会社によっては、社内では全く強みになりません。

 

社内で強みがないならどこで強みを発揮できるのか?

社外に強みを見出すしかありません。

 

日系大企業で新卒プロパーとして長く勤めた人にとって、会社を辞めて転職することは清水の舞台から飛び降りることくらいの思い切ったことです。

 

他方で、転職してインハウスローヤーになった弁護士は、すでに転職を経験していますので、そんなに恐ろしくありません。

 

また、弁護士資格を持っていますので、転職の際の法務スキルの証明になります。

いざ会社を辞める時の強力なバックアップがあるのがよいところです。

 

日系大企業のインハウスローヤーでも満足して勤務する人はいますので、全否定はできません。

何より安定しています。何もしなくても毎月に給料が振り込まれます。

 

私は「こんな働き方していたらダメになる」と思い転職しようと思いました。

弁護士の転職専門の転職エージェントの弁護士ドットコムキャリアは「慎重に考えるべき。転職先でも同じような境遇になるかもしれない。どういう転職先がよいかよく吟味すべき」というアドバイスをくれました。

ためになりました。

他方で、dodaとかマイナビエージェントは、担当者が法務業界にもインハウスローヤーにも全く詳しくなく「はあ。弁護士さんも大変ですね」といった話しかできず、相談相手としては不適格でした。

弁護士ドットコムキャリアとの面談では、私のような不満は他のインハウスローヤーも抱えているとのことでした。

 

インハウスローヤーを目指したり、インハウスローヤーがさらに転職することを相談したいのであれば、弁護士の仕事を理解した転職エージェントに相談するべきです。

そうじゃないと「弁護士先生って大変ですね」と言われるだけの面談に時間を割くことになります。

 

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