企業内弁護士のキャリアと末路|大手日系企業で弁護士資格は評価される?

  • URLをコピーしました!

弁護士が、いかにも日本企業という感じの会社に転職してインハウスローヤーとして入社したらどうなるのか。

一言で言えば、弁護士資格は入社時には評価されても、入社後はただの会社員として扱われる可能性があります。

私は法律事務所から日系大手企業に転職しました。

その経験と知り合いの声などから、インハウスローヤーが日系企業で長年勤めた場合のキャリア、つまり「末路」はどうなりやすいのかを考えます。

日系大企業のインハウスがすべて悪いという話ではありません。

安定、給料、福利厚生、働きやすさ、社内の一員として事業に関われることには大きなメリットがあります。

ただし、法律事務所で弁護士として働いていた人が、「弁護士資格や法務スキルが会社で当然評価される」と思って入ると、かなりズレます。

この記事では、大手日系企業に入った企業内弁護士が、採用時、入社後、社内人事、出世、退職・再転職の場面でどう扱われやすいのかを整理します。

この記事には広告・PRが含まれます。

読者タイプ 判断 次に見るべき内容
法律事務所から日系大企業に移りたい弁護士 生活は安定しやすいが、弁護士資格が社内評価に直結するとは限らない 2 入社後:実は弁護士資格は必要ない
社内出世や将来が不安な企業内弁護士 日系大企業の人事制度では、中途弁護士は出世しにくいことがある 3 社内人事制度:弁護士?だから何?
インハウス転職後の年収が気になる人 インハウスでも高年収はあるが、会社・年齢・ポジションで差が大きい 企業内弁護士の年収相場を見る
今の会社で埋もれそうな企業内弁護士 社内評価だけでなく、社外での選択肢を持つべき 5 弁護士資格が重要なのはいつでも辞められること
弁護士・インハウス転職を具体的に考える人 弁護士・法務向けの相談先で求人の中身を確認すべき 弁護士・法務向け転職エージェントを見る
この記事の内容 移動先
採用時点での弁護士資格の扱い 1 採用時点で弁護士資格はどう思われているのか
入社後に弁護士資格が必要なくなる現実 2 入社後:実は弁護士資格は必要ない
日系大企業の人事制度 3 社内人事制度:弁護士?だから何?
企業内弁護士のサラリーマン人生 4 インハウスローヤーのサラリーマン人生の終焉
弁護士資格の本当の価値 5 弁護士資格が重要なのはいつでも辞められること
目次

1 採用時点で弁護士資格はどう思われているのか

転職であれ新卒入社であれ、司法試験合格や弁護士資格保有の事実は、採用でそれなりに評価されます。

ただし、評価のされ方は法律事務所とはまったく違います。

会社では、弁護士資格そのものよりも、「自社に合う人か」「一緒に働けそうか」「社内で扱いやすそうか」が見られやすいです。

かつて三井物産が司法試験に落ちたロースクール生の内定を取り消さなかったと見ました。

「司法試験に合格しているかどうかではなく、自社に合う人材か見ている」という理由だそうです。

司法試験に合格している人はたくさんいるので、あえて不合格者を採用する必要はないと思います。

転職時の採用面接に意味はない|面談で人は見抜けないで書いたことを、この採用担当者は無視しています。

「自分なら人を見る目がある」と思い込んでいるからそうなります。

司法試験の結果という公的で客観的な事実よりも、採用担当者の感想を重視しているということです。

傾向として、採用者が弁護士でない場合、弁護士資格の重視度は下がります。

弁護士でない人が多数派の法務部で、採用担当者も弁護士でない場合、「いい人がいたら取る。弁護士資格はあればいい」という、あいまいな採用基準を持つことがあります。

「いい人」かどうか、というのは採用基準として雑すぎますが、だいたいそんな感じです。

私が中途で入った日系企業の法務部長に後日採用基準を聞いたところ、「一緒に働きたいかどうか」でした。

他方で、採用者が弁護士の場合、弁護士資格を重視する傾向があります。

この違いは大きいです。

弁護士を採る会社でも、採用側が弁護士資格の価値をどこまで理解しているかで、入社後の扱いはかなり変わります。

企業内弁護士のデメリットとメリットを確認する

2 入社後:実は弁護士資格は必要ない

弁護士資格を持たない企業法務部の弁護士採用の現実は、入社後に見えてきます。

(1) とある日系大企業の例

私は弁護士ではない採用者に採用を決定されて、日系大手企業に中途入社しました。

1回目の面接が終わったその日に、転職エージェントから第二次面接の打診が来ました。

その際に転職エージェントから「先方は、にゃんがーさん、あなたのスキルはもう十分にあると判断しています」と言われました。

どうやってスキルがあると分かったのか。

やはり職務経歴書しかない。

書面を出して面接を1回しただけでスキル十分と判断されたということなので、弁護士資格は重視されたのかもしれません。

配属先は法務部だし、法律事務所で培った経験をもとにがんばるぞ、と思って入社しました。

しかし、そこは弁護士資格不要が当然の世界でした。

法律事務所とは全く違う。

その法務部を支配している多数派は、弁護士ではない法務部員です。

法務部員として何年、人によっては10年以上、20年以上も働いてきています。

社内では「法律の専門家」として通っている。

実態がそんな世界なので、法務に転職するのは未経験者も可能と現役弁護士は言っているのであります。

「大企業で法務部として長年エキスパートとして働いている人達は洗練されたプロだ」

そう思っていましたが、実態は違います。

全く法律に詳しくありません。

大企業無能サラリーマンの傲慢|なぜ気づかないのかで書いた通り、単に「法務部」という法律のことに詳しそうな部にいて、それっぽい作業をやっているから私達はエキスパートなのである、と思い込んでいるだけです。

専門化は単に、違う人が違うことをしている―そして、二人の人が同じ時間に同じ場所で同じことを行なうのは物理的に不可能であるため二人の人はつねに違うことをしている―ことを意味するにすぎない。

ハーバート・A・サイモン『新版 経営行動―経営組織における意思決定過程の研究』(ダイヤモンド社、2009年7月)45ページ

上記過去記事で引用したこの指摘がまさに当てはまります。

「俺たちはいい仕事をしている」と信じ込んでいる法務部に弁護士が入り込んで、弁護士資格が重視されるかというと、そんなことはありません。

「弁護士資格はなくてもいい」という発想のもとで動いている部であれば、弁護士であることがどれほどの意味を持つのか。

人によっては遠慮してきます。

「さすがですね」とか「前は稼いでいらっしゃったんでしょう」などと、弁護士は別世界の人間であるかのようなことを言われます。

しかし、仕事で弁護士資格をありがたがってもらえるかというと、全くそんなことはありません。

法律事務所にいる弁護士が中途入社で会社に入ると、なぜか弁護士マジックが失われます。

企業法務部員は、外部法律事務所の弁護士には「先生、先生」と低姿勢です。

でも、内部の同僚である弁護士資格を有する社員の意見は、ちっとも聞きません。

私が「これはこうです」と会社法について意見を言っても、「○○先生に聞いてみよう」となります。

「それはお前の意見がイマイチだからだ」という批判がありそうですが、そういうわけではありません。

インハウスローヤーとして同じ境遇の人ならよく分かると思いますが、会社法務部は外部法律事務所の弁護士の意見を神の啓示のごとく扱っています。

「外部の専門家がこう言っています」という責任逃れに便利なのはもちろんありますが、それにしたって「正解を教えてくれる」と信じ込む力は尋常ではありません。

(2) 弁護士の資格もスキルも不要

まとめると、中途入社したインハウスローヤーは、多くの場合、高度な法務スキルを特に求められません。

仕事のレベルも大したことがない。

弁護士資格がなく、法律の勉強もほとんどやっていない部員がこなしてきたものをやるだけですので、法的な答えを出す判断の責任を負いません。

また、外部法律事務所に頼るという構造が出来上がっています。

社内弁護士は頼られません。

その分、企業内弁護士は、外部法律事務所に比べてぬるま湯につかることができます。

楽さは法律事務所の比ではありません。

インハウスにも長所と短所があるのです。

インハウスローヤーのデメリットとメリットを体験談から確認する

3 社内人事制度:弁護士?だから何?

法務部が強くない日系大手企業の人事制度では、弁護士であることは社内での評価に何のプラスにもなりません。

弁護士手当はありません。

弁護士だから給料が高いということもない。

他社員と同じ。

本記事で主題にしている「キャリア」についてはどうか。

弁護士であることはどう考慮されるのか。

全くない。

法務部で過ごす以外に道がありません。

知財部門に行くとか、海外に出向するとか、そういうルートはあります。

でもそれくらいです。

弁護士だからその専門性を考慮したキャリアを歩めるよう、人事制度が設計されているかというと、全くそんなことはありません。

法務部長に優先的になれるわけでもない。

弁護士資格のない人達が、弁護士のことを何も考えずに作り運用する人事制度に、弁護士資格が何の意味があるというのでしょう。

ようこそ年功序列の世界へ。

年収についても、弁護士資格があるから当然高くなるわけではありません。

企業内弁護士の年収は、会社、年齢、ポジション、外資か日系かでかなり変わります。

企業内弁護士の年収相場と偏差値を見る

4 インハウスローヤーのサラリーマン人生の終焉

企業内弁護士のキャリアを考えるイメージ

法律事務所からインハウスローヤーになって、最初はいい。

気楽であり、「弁護士先生、よく来た」と言ってもらえる。

でも、最初だけです。

スキルが評価されるわけではないことは、やがて分かっていきます。

法律知識が全然ない法務部員が偉そうに仕事という名の雑務をしていて、それが評価される世界に嫌気がさしてきます。

その後には将来を考えるようになります。

管理職に就くのは遅い。40歳過ぎ。

40代前半で管理職になれるとは限りません。

50代になって課長になる人もいます。

課長になれずに終わるかもしれない。

出世の際に弁護士資格は関係ありません。

下駄をはかせてもらえないのです。

そしたら、中途入社は不利です。

弁護士資格が有利に働かない以上、単に転職中途採用組は日系大企業で出世できない可能性が高いだけです。

また、自分以外に弁護士資格保有者がいれば、当然ライバルになります。

法務部の中の出世ポジションは少ないです。

課長と部長しかない。

部長にはほぼなれない。

中途入社だから。

インハウスローヤーとして最高の出世は法務部の課長になることです。

そこで終わりです。

その後は部内の課を転々とするだけです。

希望を出せばどこか行けるかもしれません。

総務部などの管理部門です。

でもそれくらいです。

上に行くルートは厳しい。

全く評価されない法律バックグラウンドしかない中途入社を出世させる会社がどこにあるのか。

運よく課長になれて、その先はどうなるのか。

役職定年が待っています。

50代半ばまでに管理職を解かれ、ヒラにされます。

給料も下がります。

それでそのまま定年を待って終わりです。

「俺は昔弁護士だったんだ」と過去の武勇伝を語りながら終焉を迎えることになるのです。

昔アメリカのロースクールに留学したニューヨーク州弁護士資格保持者で、かつてM&Aを担当する課長だった人が、サラリーマン人生晩年は平社員として地方の拠点で総務部員として働いていました。

それを聞いて「その人をもっと活かせるポジションはあるだろうに」と思いましたが、そんなことが配慮された人事制度ではないのです。

弁護士の転職と年齢|年代に応じた転職事例と限界を考察するという記事を書いた通り、自分の年齢、法務キャリアのステージ、今の仕事、転職候補先を考えなければなりません。

弁護士資格は使えます。

その職場は、その使える資格に見合った給与を支払ってくれるでしょうか。

弁護士の年収の現実を確認する

5 弁護士資格が重要なのはいつでも辞められること

インハウスローヤーにとって、弁護士資格は強みにならないのか。

会社によっては、社内では全く強みになりません。

社内で強みがないなら、どこで強みを発揮できるのか。

社外に強みを見出すしかありません。

日系大企業で新卒プロパーとして長く勤めた人にとって、会社を辞めて転職することは清水の舞台から飛び降りるくらいの思い切ったことです。

他方で、転職してインハウスローヤーになった弁護士は、すでに転職を経験していますので、そんなに恐ろしくありません。

また、弁護士資格を持っていますので、転職の際の法務スキルの証明になります。

いざ会社を辞める時の強力なバックアップがあるのがよいところです。

日系大企業のインハウスローヤーでも満足して勤務する人はいますので、全否定はできません。

何より安定しています。何もしなくても毎月給料が振り込まれます。

私は「こんな働き方をしていたらダメになる」と思い、転職しようと思いました。

その時に、弁護士・法務に詳しい転職エージェントからは「慎重に考えるべき。転職先でも同じような境遇になるかもしれない。どういう転職先がよいかよく吟味すべき」というアドバイスをもらいました。

これはためになりました。

他の一般人材紹介会社では、担当者が法務業界にもインハウスローヤーにも詳しくなく、「はあ。弁護士さんも大変ですね」といった話しかできず、相談相手としては不適格でした。

インハウスローヤーを目指したり、インハウスローヤーがさらに転職することを相談したいのであれば、弁護士の仕事を理解した転職エージェントに相談すべきです。

そうでなければ、「弁護士先生って大変ですね」と言われるだけの面談に時間を割くことになります。

ただし、転職エージェントにキャリアを丸投げしてはいけません。

進路は自分で主体的に決めるべきです。

弁護士・インハウス転職を考えるなら、NO-LIMITなど弁護士・法務向け転職エージェントを確認してください。

年収が気になる人は、企業内弁護士の年収相場も見ておくべきです。

企業内弁護士の年収相場と偏差値を見る

インハウスのメリットとデメリットは、以下の記事でも整理しています。

インハウスローヤーのデメリットとメリットを確認する

6 まとめ:日系大企業のインハウスは安定するが、弁護士資格は埋もれやすい

日系大企業に企業内弁護士として入ると、採用時点では弁護士資格が評価されることがあります。

しかし、入社後も弁護士資格や法務スキルが評価され続けるとは限りません。

弁護士資格がなくても回ってきた法務部に入ると、「弁護士であること」は意外なほど軽く扱われます。

社内人事制度では、弁護士資格が給与、昇進、キャリアパスにほとんど反映されないこともあります。

その結果、中途で入ったインハウスローヤーは、法務部の中で会社員として年を取り、課長になれるかどうかを待ち、役職定年を迎えるようなキャリアになる可能性があります。

ただし、それが必ず悪いとは言いません。

安定、給料、福利厚生、労働時間、会社員としての生活を重視するなら、日系大企業のインハウスはかなり強い選択肢です。

問題は、自分が何を求めているかです。

弁護士としての専門性、外で通用する法務力、年収アップ、法務責任者やGCとしてのキャリアを求めるなら、日系大企業に入って安心するだけでは足りません。

社内で評価されないなら、社外で通用するかを見てください。

弁護士資格の本当の強みは、いつでも外に出られることです。

弁護士・インハウス転職を考える人は、NO-LIMITなど弁護士・法務向け転職エージェントを確認してください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次