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法律事務所勤務の弁護士が転職先として企業を考える。
そして、たぶんこう思います。
「インハウスってどうよ?」
インハウスローヤーの仕事は楽しいのか。
つまらないのか。
法律事務所から企業へ行くと、弁護士としての市場価値は下がるのか。
弁護士業界から解脱してサラリーマンになったと見なされるのか。
もう法律事務所には戻れないのか。
法律事務所勤務で疲れ果てて、インハウスに行って一息つきたい弁護士にはかなり気になる問題です。
私も法律事務所、日系企業、外資系企業を経験してきたので、この問題はかなり現実的なものとして見ています。
正直にいうと、法律事務所でプレーヤーとして働き続ける場合と、企業内弁護士として働く場合では、身につく力がかなり違います。
法律事務所から企業へ移ると、法律事務所の弁護士としての分かりやすいブランドや、純粋な法律実務の密度は落ちやすいです。
その意味では、市場価値が下がる場面はあります。
ただし、「インハウスに行ったら終わり」というほど単純でもありません。
企業の意思決定、事業部との調整、リスクの取り方、社内政治、経営に近い法務を経験できる会社なら、法律事務所では得にくい価値がつきます。
問題は、インハウスなら何でもよいと思って転職することです。
給料が安い会社、法務の地位が低い会社、雑用だらけの法務部に移ると、法律事務所のブランドを失って、ただの給料の安い会社員になる可能性があります。
要注意です。
インハウス転職で最初に確認したいこと
インハウスに行くか迷っているなら、求人票を見る前に、自分が何を捨てて、何を取りに行くのかを整理した方がいいです。
- 法律事務所のスキル成長をどこまで捨てられるか
- 年収が下がってもよいのか
- 企業法務で何をやりたいのか
- 将来、法律事務所に戻る可能性を残したいのか
- 法律事務所の移籍も選択肢に入れるのか
ここを曖昧にしたまま「とにかくインハウス」と動くと、転職後にかなり後悔しやすいです。
1 法律事務所の方が法務スキルは身につきやすい
法律事務所と企業の両方で働いた弁護士の多くは、法律事務所で働く方が、弁護士としての法務スキルは身につきやすいと感じるはずです。
もちろん、会社にもよります。
大きなM&A、海外案件、規制対応、訴訟、危機管理を扱う企業法務なら、インハウスでもかなり鍛えられます。
ただ、平均的に見ると、若い弁護士が法的な処理能力を鍛える場所としては、法律事務所の方が密度は高いです。
(1) プレッシャーが違う
法律事務所と会社だと、仕事でかかるプレッシャーが違います。
法律事務所の仕事はきついです。
案件ごとにクライアントがいて、時間をかければチャージが立ちます。
成果物の質が低ければ、クライアントにも上司にも普通に詰められます。
インハウスローヤーは会社員です。
多くの会社では、会社員は「在籍すること」の対価として給料をもらっています。
これは良い悪いではなく、仕事の構造が違うという話です。
法律事務所は、やった仕事に応じて対価が支払われます。
会社員は、組織の中で役割を果たすことに対して給料が支払われます。
この違いはかなり大きいです。
法律事務所では、自分の仕事の質がかなり直接的に評価されます。
インハウスでは、仕事の質だけでなく、社内調整、説明の仕方、タイミング、上司との関係、事業部との距離感も評価に混ざります。
弁護士としての純粋な法律実務を鍛えるなら、法律事務所の方が向いています。
(2) 法務以外の作業が少ない
法律事務所で働いていると、基本的には法務の仕事をしています。
もちろん、営業、採用、マネジメント、事務処理、請求管理などもあります。
それでも若手から中堅のうちは、かなり多くの時間を法律業務に使います。
一方で、インハウスになると、法律そのものから少し離れた仕事もかなり増えます。
- 社内会議
- 事業部との調整
- 稟議
- 社内ルールの説明
- 他部署との根回し
- 経営陣向けの資料作成
- 法務ではないが法務に回ってくる雑務
これらも会社で働くには大事です。
ただ、弁護士としての法務スキルを一直線に伸ばす仕事ではありません。
若手のうちに法律事務所を出ると、法務スキルを集中的に伸ばす時間を失う可能性があります。
若手弁護士の就職先については、以下の記事でも書いています。
2 インハウスで市場価値が上がる場合もある
ここまで読むと、「やはりインハウスに行くと市場価値が下がるのか」と思うかもしれません。
しかし、そこまで単純ではありません。
法律事務所の弁護士としての市場価値は下がる場面があります。
一方で、企業法務、事業会社、外資、管理部門、経営に近いポジションで評価される市場価値は上がることがあります。
(1) 企業法務では法律だけできても足りない
企業法務では、法律だけできても足りません。
事業部が何をしたいのか。
どのリスクを取るのか。
経営陣にどう説明するのか。
契約をどう直せば、事業が止まらず、かつリスクも大きくなりすぎないのか。
こういう判断が必要になります。
法律事務所では、クライアントに意見を出せば終わる場面があります。
しかし、会社では意見を出した後に、社内でどう動かすかまで見ます。
ここはインハウスの面白さでもあり、面倒くささでもあります。
(2) 外部法律事務所を使う側の経験がつく
インハウスになると、外部法律事務所を使う側になります。
この経験は法律事務所だけにいると分かりにくいです。
法律事務所の回答がなぜ使いにくいのか。
どのタイミングで外部弁護士に相談すべきなのか。
高いフィーを払う価値がある場面はどこなのか。
会社側に入ると、こうしたことが見えます。
外部法律事務所をありがたがるだけのインハウスになるとつまらないです。
ただ、外部弁護士をうまく使い、社内で意思決定を進める法務になれるなら、それは法律事務所とは違う価値です。
(3) 事業・経営に近い経験は企業でしか得にくい
インハウスのよいところは、事業と近いことです。
法律事務所では、どうしても外部者です。
クライアントの事業を理解しようとしても、最後は外から見ています。
企業に入ると、意思決定の汚さ、遅さ、政治、予算、社内力学まで見えます。
きれいな法律論だけでは何も動かない場面も多いです。
これを面白いと思える人には、インハウスは向いています。
逆に、純粋な法的論点を深く考えたい人には、かなりストレスになるかもしれません。
インハウスの良し悪しは、以下の記事でも書いています。
インハウスローヤー(企業内弁護士)のデメリットとメリットを体験談から考える
3 法律事務所からインハウスに行くと価値が下がるケース
インハウス転職で市場価値が下がりやすいのは、次のようなケースです。
(1) 若手で早く法律事務所を出すぎる
若手弁護士が早い段階で法律事務所を出ると、法律実務の基礎を十分に積めないまま企業に移ることがあります。
その後、企業法務としての経験はつきます。
しかし、法律事務所の弁護士としてのプレーヤー能力は伸びにくくなります。
将来、法律事務所に戻りたくなったときに、「この人はどれくらい実務を回せるのか」と見られる可能性があります。
若手のうちは、法律事務所でしんどい思いをしてでも、もう少し粘った方がよい場面はあります。
もちろん、心身を壊すまで粘る必要はありません。
そこは別問題です。
(2) 年収の低い会社に移る
インハウス転職で怖いのは、年収が下がることです。
若手弁護士のインハウスローヤーとしての給料は、思ったより安いことがあります。
法律事務所も最近はかなり安いところが目立ちます。
ただ、それでも法律事務所のブランドと経験を持ったままいるのと、給料の安い会社員になるのでは、その後の見られ方が変わります。
給料が安い会社員になると、その後の転職で年収を上げるのに不利になりがちです。
転職時の年収は、現職年収を基準に見られることが多いからです。
年収を下げてでも行く価値がある会社なのか。
そこで何を得られるのか。
この確認をしないまま転職すると危ないです。
弁護士の年収については以下の記事も参考になります。
弁護士の年収の現実 | 平均値2558万円は低い?【日弁連調査結果】
(3) 法務の地位が低い会社に入る
会社によって、法務の地位はかなり違います。
法務が経営に近い会社もあります。
ただの契約書処理部門として扱われる会社もあります。
後者に入ると、弁護士資格を持っていても、あまり面白くありません。
事業部からは「法務がうるさい」と思われる。
経営からは「とにかく早く処理して」と言われる。
外部法律事務所に難しい部分だけ持っていかれる。
これでは、弁護士としての市場価値も、企業法務としての市場価値も伸びにくいです。
4 それでもインハウスを考えた方がよいケース
法律事務所を出ると損をしやすい場面はあります。
しかし、インハウスを検討した方がよいケースもあります。
(1) 法律事務所の働き方が合わない
法律事務所の働き方が本当に合わない人はいます。
長時間労働。
詰められる文化。
売上へのプレッシャー。
クライアント対応。
パートナーとの相性。
これらがしんどいなら、無理に法律事務所にしがみつく必要はありません。
ただし、「法律事務所が嫌だから企業に逃げる」だけだと危ないです。
企業にも別のしんどさがあります。
会議、調整、根回し、社内政治、評価制度。
法律事務所の苦しさと、会社員の苦しさは種類が違います。
(2) 事業に近い法務をやりたい
事業に近い法務をやりたい人には、インハウスは合います。
契約書を直すだけでなく、事業部と一緒に落としどころを考える。
リスクをゼロにするのではなく、どこまで取るかを考える。
経営陣に分かる言葉で説明する。
こういう仕事が好きなら、企業法務は面白いです。
法律事務所で外から助言するより、会社の中に入る方が合う人もいます。
(3) 外資法務・高年収企業法務を狙える
外資法務や高年収企業法務を狙えるなら、インハウス転職でも市場価値を落とさずに移れる可能性があります。
ただし、外資を雑に美化しない方がいいです。
外資は年収が高いこともありますが、その分、期待値も高いです。
英語、スピード、事業理解、社内政治、リストラ耐性。
きれいな響きだけで選ぶと普通に失敗します。
外資やハイクラス法務を見るなら、JACやビズリーチで求人の要求水準を見てから判断した方がいいです。
5 法律事務所から企業へ移る前に確認すること
法律事務所からインハウスへ移るなら、最低限、次の点は確認した方がいいです。
| 確認項目 | 見るべき理由 |
|---|---|
| 年収と将来の昇給余地 | 目先の年収だけでなく、次の転職時の基準にもなるため |
| 法務部の社内での地位 | 法務が経営に近いのか、単なる処理部門なのかで経験値が変わるため |
| 扱う案件の種類 | 契約審査だけなのか、M&A、海外、コンプラ、訴訟、経営案件まであるのかを見るため |
| 外部法律事務所との関係 | 難しい仕事を全部外部に出す会社だと、社内法務の成長余地が小さいため |
| 法律事務所への戻りやすさ | 将来の選択肢を残せるかを見るため |
求人票だけでは分からないことが多いです。
だから、弁護士転職に詳しいエージェントに、求人の背景や法務部の実態を聞いた方がいいです。
ただし、エージェントを信じすぎるのもよくありません。
転職エージェントは求人を持っている営業担当者です。
親切な人生相談の先生ではありません。
だからこそ、使う側が「何を確認するか」を決めておく必要があります。
6 弁護士がインハウス転職で最初に見る候補
インハウス転職を考えるなら、最初から何十社も登録する必要はありません。
弁護士資格者が法律事務所・企業法務・外資法務を確認するなら、まずは次の使い分けで十分です。
| 目的 | 最初に見る候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 弁護士求人を広く確認したい | リーガルジョブボード | 弁護士資格者向けに求人検索、エージェント相談、スカウトを使いやすい |
| 弁護士・法務専門で相談したい | NO-LIMIT | 法務・弁護士領域に絞って相談しやすい |
| 外資法務・高年収を見たい | JAC / ビズリーチ | 外資、ハイクラス、スカウトの反応を確認しやすい |
弁護士資格者向けに求人を確認するなら、リーガルジョブボードはかなり分かりやすいです。
ただし、弁護士資格者向けのサービスなので、登録時は職種やプロフィールを正確に入力してください。
登録後に本人確認や連絡対応が必要になる場合があります。
無料登録できます。登録後すぐ応募する必要はありません。
他のサービスも含めて比較したい場合は、以下の記事で整理しています。
7 FAQ
Q. 法律事務所からインハウスに行くと市場価値は下がりますか?
法律事務所の弁護士としての市場価値は下がることがあります。
特に若手で早く出すぎると、法律実務の密度が足りないと見られる可能性があります。
ただし、企業法務、事業理解、経営に近い法務、外資法務の経験がつけば、別の市場価値は上がります。
Q. 若手弁護士はインハウスに行かない方がいいですか?
一律には言えません。
ただ、法律事務所でまだ伸びる余地があるなら、すぐにインハウスへ逃げるのは少しもったいないです。
心身を壊すほどなら別ですが、単に今の事務所が嫌なだけなら、別の法律事務所への移籍も考えた方がいいです。
Q. インハウス転職で年収は下がりますか?
下がることは普通にあります。
特に法律事務所から日系企業に移ると、年収が下がる可能性があります。
外資やハイクラス企業法務なら高い年収もありますが、その分、英語、事業理解、成果への期待も上がります。
Q. 法律事務所に戻れなくなりますか?
戻れなくなるとは限りません。
ただ、企業に長くいるほど、法律事務所側からは「プレーヤーとしてどれくらいできるのか」を見られやすくなります。
戻る可能性を残したいなら、インハウスで何を経験するかを意識しておく必要があります。
Q. 相談だけしてもよいですか?
よいです。
求人を見て、年収レンジを確認して、今の法律事務所に残るか判断するだけでも意味があります。
相談したからといって、応募する必要はありません。
8 まとめ
法律事務所からインハウスに転職すると、市場価値が下がる場面はあります。
特に、若手で早く法律事務所を出す場合、年収の低い会社に移る場合、法務の地位が低い会社に入る場合は注意が必要です。
法律事務所のブランド、法務スキルの密度、プレーヤーとしての評価を失う可能性があります。
ただし、インハウス転職が常に悪いわけではありません。
事業に近い法務、外資法務、経営に近い法務、M&A、海外案件などを経験できるなら、法律事務所とは違う市場価値がつきます。
大事なのは、「法律事務所が嫌だからインハウス」だけで動かないことです。
インハウスに行くなら、何を捨てて、何を取りに行くのかを整理してください。
求人を見るだけなら、今すぐ転職を決める必要はありません。
まずは、自分の経歴でどんな法律事務所・企業法務求人があるのかを確認するところからで十分です。
インハウスに行く前に、選択肢を見ておく
法律事務所を辞めたい気持ちが強いと、最初に見つかった企業法務求人に飛びつきたくなります。
ただ、弁護士求人は、法律事務所、インハウス、外資法務、管理部門寄りなどでかなり違います。
求人を見てから、法律事務所に残るか、別の事務所に行くか、企業へ移るかを決めた方が安全です。

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