私は法律事務所と会社の両方で勤務したことがあります。
法律事務所にも会社にも法務の知り合いがいます。
法務専門の転職エージェントともよく話します。
こうした経験をふまえて、企業内弁護士・インハウスローヤーのデメリットとメリットを書きます。
企業内弁護士は、法律事務所より人間らしい生活を送りやすい一方で、弁護士としての専門性や成長実感を失いやすい働き方でもあります。
法律事務所からインハウスに移るなら、「楽そう」「安定していそう」「ワークライフバランスがよさそう」だけで決めるべきではありません。
本記事の想定読者は、主に法律事務所勤務の弁護士です。司法修習生や、将来インハウスローヤーに興味のある学生も含みます。
そのため、以下のデメリットとメリットは、法律事務所を比較対象として整理します。
この記事には広告・PRが含まれます。
| 読者タイプ | 判断 | 次に見るべき内容 |
|---|---|---|
| 法律事務所からインハウスに移りたい弁護士 | 生活は安定しやすいが、法務スキルの伸びは鈍る可能性がある | 1 企業内弁護士のデメリット |
| 激務から抜け出したい弁護士 | 労働時間・生活環境の改善は大きなメリットになりやすい | 2 企業内弁護士のメリット |
| 年収が下がるか不安な人 | 会社・年齢・ポジション次第。インハウスでも高年収はある | 企業内弁護士の年収相場を見る |
| 司法修習生・若手弁護士 | 最初からインハウスに行くかは慎重に考えるべき | 司法修習生の就職先を考える |
| インハウス転職を具体的に検討している人 | 求人票だけでなく、会社内での役割・年収・将来性を確認すべき | 5 インハウス転職を考えるなら確認すべきこと |
| この記事の内容 | 移動先 |
|---|---|
| 企業内弁護士のデメリット | 1 企業内弁護士のデメリット |
| 企業内弁護士のメリット | 2 企業内弁護士のメリット |
| 企業内弁護士についての誤解 | 3 企業内弁護士についての誤解 |
| 安定を求めるなら企業内弁護士 | 4 安定を求めるなら企業内弁護士 |
| インハウス転職の確認事項 | 5 インハウス転職を考えるなら確認すべきこと |
1 企業内弁護士のデメリット
企業内弁護士のデメリットの中核は、「会社員」であることから来ます。
このデメリットをふまえ、新人弁護士のおすすめ就職先は法律事務所であるとこのブログでは説明しています。
せっかく弁護士になっても、いきなりインハウスローヤーになると「会社員」にしかなれない可能性があります。
(1) 会社では法務スキルが評価されにくい
職場によりますが、法律事務所に比べると、会社では法律知識が格段に要求されません。
大企業の法務部では、法律知識や法律実務処理能力があまり評価されないこともあります。
弁護士として業務能力が高い人が会社に入っても、宝の持ち腐れになる場合があります。
難しい法律問題は外部の弁護士に投げてしまう。自分で調査して考えて社内で報告するよりも、外部の弁護士に投げて「弁護士はこう言っています」と社内で報告した方が評価される。
こういう職場もあります。
法律知識を使った問題解決能力が高くても、給料は上がらないし、差もつかない。
教科書は読まない。判例も調べない。条文もほぼ見ない。それでOK。むしろそれがスタンダード。
激務の法律事務所からインハウスローヤーになった人は、新卒から10年法務部にいる生え抜き社員が「大したことは何もしていないのに偉そう」なのを見て、呆れることがあります。
この環境は、法務スキルを伸ばしていこうという真面目な法務パーソンのやる気を削ぎ落とします。
経済学の父、アダム・スミスはこう言います。
ある種の労働に人並はずれた技能と創意工夫が必要な場合には、そうした能力をもつ人は尊敬され、その人の生産物も、費やした時間以上に高く評価されるのが自然である。
アダム・スミス、山岡洋一訳『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)』(日本経済新聞出版社、2007年3月)50ページ
他の人にない高い技能があれば評価されるのが「自然」であると。
大企業の中では、高い技能よりも年次が評価されることがあります。そこは不自然に感じます。
こうした能力は長期間にわたって努力しなければ獲得できないのが普通であり、その生産物が高く評価されていても、能力の獲得に要する時間と努力に対する適正な報酬にすぎない場合いも多いとみられる。発達した社会では労働の厳しさや熟練度の違いは一般に、労働賃金で調整されている。
同上
高い技能は獲得に時間を要し、高い賃金で評価されるべきというのがアダム・スミスの説明です。
しかし、多くのサラリーマン弁護士を擁する大企業法務部には、そういう発想があまりないように見えます。
「弁護士資格がなく、法務知識もかなり怪しい人たちと給料が変わらない。私は弁護士で、法律事務所で働いていたのに」
この不満は、法律事務所から会社に移った人ではけっこうポピュラーな不満だと思います。
完全に会社で働くのが嫌だと言っているわけではありません。どの職場も完全ではないです。
「企業内弁護士の方が法律事務所より断然いいですよ。でも、あの人たちと一緒にされるのはね」
こういうふうに、部分的に不満を持つインハウスローヤーはそこそこいるはずです。
年収面が気になる人は、企業内弁護士の年収相場も確認しておくべきです。
(2) 社内出世は期待しにくい
企業内弁護士の将来は、とても不明確です。
これまでに例のない新しい人種だからです。
古き良き年功序列型大企業の場合、弁護士資格は評価されず、よいサラリーマンとして良いキャリアパスをたどるのは難しいことがあります。
理由は簡単です。
外部から来た弁護士は異分子であり、大企業の人事体系が想定していない人種だからです。どう扱ってよいかわからないのです。
もちろん、転職後に会社内で「弁護士なんですか?すごいですね。なんでうちなんかに転職したんですか?」と言われることはあります。
しかし、それだけです。社内の出世で役立つわけではありません。
日系大企業に企業内弁護士として転職した場合のありうる末路は、以下の記事で考えられる例を書きました。
企業内弁護士のキャリアと末路|大手日系企業に行ったらこうなる
(3) 年収の伸びが限定的である
法務レベルがアップしても評価されない。
年収も大きくは増えない。
会社員としての給料の伸びには限界があります。
それに対して、独立弁護士であれば稼ぎは青天井です。
「そんな簡単じゃない」と開業弁護士から叱られそうですが、サラリーマン法務部員は、基本的に仕事に応じて年収を大きく上げられません。
ただし、インハウスだから必ず低年収というわけでもありません。会社、年齢、ポジション、外資か日系かでかなり変わります。
④ ゆるま湯環境→成長できず将来が不安、ボンクラ集団に囲まれる
のんびりした法務部に行くと、ほぼ何もせずにぼーっとしているだけで安定した給料が毎月もらえます。
「いいことじゃん!」と言われそうですが、必ずしもそう思う人ばかりではありません。
「修習同期はバリバリ働いているのに、私はここで一体何をやっているんだろう」と不安になります。
しかし周りを見渡すと、大企業の本社管理部門社員として誇りを持った方々がたくさんおられます。
低能な人が特に努力もせず偉そうにしている。
これはかなりイライラさせられます。

(5) 税金をばっちり取られる
法律事務所での個人事業主から会社員になって、「税金すごい取られるやん」と気づきました。
サラリーマン税金訴訟を起こしたくなる気持ちがわかりました。
青色申告にして、様々な経費を計上する。そういうことはできません。取られるがままです。
会社員としての安定と引き換えに、税務上の自由度はかなり下がります。
(6) 英語を使うことが期待される
法務部がある企業は大企業が多く、海外展開など英語に絡むことは非常に多いです。
司法試験で学んだことはほぼ使わず、海外の法制度を調べたりする機会が出てきます。
司法試験合格の取り柄があまり発揮されません。
また、英語が嫌いな人も多いでしょう。
法律ばかり勉強した人は、民事訴訟規則47条を読むと違和感を感じるはずです。
「ファクシミリ」というカタカナがあるからです。
法律家にとって横文字は相容れにくい。「争点効」みたいに漢字で完結する方に慣れている。
「パブリックフォーラム」と出てきたら「なんて新鮮な響きだ」となる。
そんな調子だから実務に出て「スキーム」と言って得意げな顔はするものの、真剣に英語で業務をこなすのは多くの人にとって苦痛です。
もちろん、外資系企業に行けば海外に英語で報告する場面もあります。
(7) デメリットまとめ
企業内弁護士のデメリットを一言でまとめると、法律専門家度が減少することです。
上記デメリットは、大規模法務部ほどよくあてはまります。
外資系企業や小規模法務部には、あてはまるものが減ります。
つまり、「企業内弁護士」と一括りにして判断するのは危険です。
会社規模、法務部の人数、外資か日系か、上司、担当領域、外部弁護士の使い方でかなり変わります。
2 企業内弁護士のメリット

デメリットに比べるとメリットの紹介は文字数が少ないですが、いずれも一騎当千の威力あるメリットです。
私にはいずれも捨てがたい。
(1) 外部者ではなく内部者・仲間としてビジネスを支援できる
インハウスローヤーになるために面接で弁護士はみんなだいたいこういうことを言うんじゃないか、と思われる理由です。
実際、この理由は多くのインハウスローヤーから多大な支持を得ています。
私もこんな感じの志望理由を面接で言いました。
実際企業に移ってみてどうか。
この志望理由はけっこう実現できているかなあと思っています。
タイムチャージを気にせず、法律問題をどう解決するか社内で柔軟に話し合えます。
法律事務所のときより格段にやりやすいですし、うまくできるとやりがいを感じる部分です。
また、法律事務所より資金力があります。その資金力や知名度を活かしたビジネスに自ら関われるのは魅力です。
海外出張好きには、断然インハウスです。
(2) 安定した生活環境
長時間労働の法律事務所勤務の弁護士がインハウスローヤーに転身すると、労働時間が劇的に減ることがあります。
多忙でなければ18時に帰社できます。
いつも午前になってから帰っていた人にとって、18時に帰れるのは衝撃です。
在宅勤務が進んで、18時前に家で仕事を終えることも可能になっています。
法律事務所と違って、仕事時間が終わればあまり仕事のことを考えずにすみます。
この生活の安定は、法律事務所から移った人にとってかなり大きいです。
(3) 毎月安定して給料がもらえる
自分のやったことに対する成果ではなく、「ただいるだけ」で給料がもらえます。
定期的に確実に給料がもらえるのは安定そのものです。
パートナーによく見られようとか、営業して案件を取ってこないと、とか悩まなくていいんです。
これは法律事務所では得にくい安心感です。
(4) 会社の金を動かせる
会社にいると、外部法律事務所を使う側に回れます。
高いフィーの法律事務所の弁護士に、会社の立場から相談したり、調査を依頼したりできます。
自分が有能と勘違いするにはよい環境です。
ただし、外部弁護士を使いこなすには、こちらにも最低限の法務力が必要です。
(5) メリットまとめ
インハウスローヤーのメリットをまとめると、法律事務所よりまともな人間らしい生活を送りやすい、ということです。
生活の安定、労働時間の改善、毎月の給料、内部者としてビジネスに関われること。
これらはかなり強いメリットです。
だからこそ、企業内弁護士は合う人にはかなり合います。
3 企業内弁護士についての誤解
インハウスローヤーについての誤解が広がらないように、一部解説します。
(1) インハウスローヤーの方が儲からないとは限らない
インハウスローヤーでもたくさん稼いでいる人はいます。
具体例として、転職エージェントから以下のような話を聞いたことがあります。
- 30代で外資系企業、部下なしでも年収2500万円超
- 上場企業の法務部長で年収1億円超
事務所維持経費をかけず、法律事務所よりも安定した環境にいながら、かなりの高給をもらうケースもあります。
ただし、これは一部の高額事例です。
一般的な企業内弁護士の年収相場は、以下の記事でデータを整理しています。
(2) 企業にいればビジネスに根差した専門知識が身につくとは限らない
企業にいればビジネスに根差した専門知識が身につく。
そう言われることがあります。
しかし、そんな簡単な話ではありません。
法律知識は、やはり法律事務所でプレッシャーのかかる環境にいた方が身につきやすいです。
法律以外のビジネス知識が身につくか。
これも、会社にいるからといって自動的に身につくわけがないです。
MS-Japanが運営しているサイトのMS Agentでは、以下のように書かれています。
Q ファーストキャリアは法律事務所と企業(インハウスローヤー)のどちらが良いのでしょうか。
A 将来のキャリアプランや就職において、年収、ワークライフバランス、業務内容のどれを重視するのかによって、優先すべき選択が変わります。
MS Agent「ファーストキャリアは法律事務所と企業(インハウスローヤー)のどちらが良いのでしょうか。」
業務内容で比較すると、弁護士としての専門性を高めたいなら「法律事務所」、弁護士としての専門性に加えて総合的なビジネススキルや経営に携わる経験を積みたいなら「インハウスローヤー」をお勧め致します。その他の要素としては、早い段階で高い年収を得たいのであれば「法律事務所」、ワークライフバランスを重視したいのであれば「インハウスローヤー」がお勧めです。
この推奨は、少なくとも私の実感とは違います。
インハウスローヤーが、会社に入っただけで「総合的なビジネススキルや経営に携わる経験」を積めるわけではありません。
会社の法務部にいても、担当する業務が契約審査と社内調整だけなら、経営に携わる経験とは言いにくいです。
企業に行くなら、どの会社で、どのポジションで、どの事業にどの距離感で関わるのかを見るべきです。
(3) 大企業には優秀なビジネスマンになれる環境があるとは限らない
大企業の方が研修がしっかりしていてよい、という意見があります。
しかし、研修なんて大したことやりません。
研修が大事だと思うなら、弁護士会の研修や有料の企業研修に行けばいいんです。
職場選びのポイントとして、研修に高いウェイトを置くのは愚かなことです。
研修だけでなく、先輩社員等からしっかり色々教えてもらえるということもあまりありません。
また、研修に限らず、法務部では独自の損益管理をするはずがないので、「いかにもビジネス」という経験は積めません。
大企業だから成長できる。インハウスだからビジネスが身につく。
こういう言葉は、かなり雑です。
4 安定を求めるなら企業内弁護士
私は、安定した環境の方が好きなので、インハウスローヤーの方がいいなあと思っています。
「企業が安定なんて現代では妄想だ」とすぐになんでも噛みつく人がいるのですが、会社は法律事務所に比べたらかなり安定しています。
他方で、法務スキルを磨き、顧客を開拓して報酬をもらう、といったスタイルが好きな人には、会社員より法律事務所の方が向いていると思います。
つまり、企業内弁護士がよいかどうかは、本人の価値観によります。
法律専門家として鍛えられたいなら、法律事務所の方が向いています。
生活の安定、社内での働きやすさ、事業への関与を重視するなら、企業内弁護士はかなり有力です。
5 インハウス転職を考えるなら確認すべきこと
インハウス転職では、求人票だけで判断しない方がいいです。
同じ企業内弁護士でも、会社によって仕事内容はかなり違います。
入社前に、少なくとも以下は確認すべきです。
- 国内法務中心か、海外案件もあるか
- 契約審査中心か、M&A・コンプライアンス・訴訟・規制対応もあるか
- 外部弁護士に投げるだけの法務部ではないか
- 弁護士資格が待遇・役割にどう反映されるか
- 法務部内での上司や同僚のレベル
- 法務部長・GC・管理職への道があるか
- 年収レンジと昇給の現実
- 英語使用頻度
- 法律事務所から移った弁護士の定着状況
弁護士・インハウス転職を考えるなら、弁護士向けの転職エージェントも確認してください。
今すぐ転職する気がない人でも、インハウス求人の年収レンジや求められる経験を見ておく価値はあります。
企業内弁護士の年収相場は、以下の記事でも整理しています。
6 まとめ:企業内弁護士は楽園ではないが、合う人にはかなり合う
企業内弁護士にはデメリットがあります。
法務スキルが評価されにくい。社内出世が見えにくい。年収の伸びが限定的。ゆるま湯環境で成長不安が出る。英語を求められることもある。
一方で、メリットもかなり強いです。
内部者としてビジネスに関われる。生活が安定する。法律事務所より人間らしい生活を送りやすい。毎月安定して給料が入る。
企業内弁護士は、楽園ではありません。
しかし、法律事務所の働き方が合わない人、生活を安定させたい人、社内の一員として事業に関わりたい人には、かなり合う選択肢です。
逆に、法律専門家として高いプレッシャーの中で鍛えられたい人、独立や高収入を狙いたい人、弁護士としての専門性を突き詰めたい人には、法律事務所の方が向いているかもしれません。
インハウス転職を考えるなら、求人票の条件だけでなく、その会社で弁護士がどう扱われるのかまで確認してください。
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弁護士ドットコムキャリアの評判 | 転職相談体験談 | 転職キャリアルール (career-rule.com)

弁護士ドットコムキャリアの口コミ・評判を検証した記事はこちら↓

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