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インハウスローヤー(企業内弁護士)のデメリット・メリットとキャリアを現役インハウスが語る

インハウスローヤー

法律事務所と比べたインハウスローヤーの良いところ・悪いところ

私は法律事務所2か所と会社2か所に勤務したことがあります。

法律事務所にも会社にも転職した人の知り合いがたくさんいます。

法務専門の転職エージェントともよく話します。


こうした経験をふまえて「インハウスローヤーのデメリットとメリット」を書いてみました。

(2020年5月6日改訂)

 

1 インハウスローヤー(企業内弁護士)のデメリットはこれだ

デメリットの中核は、「法律の専門家」から「会社員」だと思います。

このデメリットをふまえ、せっかく弁護士になってもいきなりインハウスローヤーになると「会社員」にしかなれないので、まずは法律事務所への就職を本ブログでは勧めています。 

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本記事の想定読者は、主に法律事務所勤務の弁護士です。司法修習生や将来インハウスローヤーに興味のある学生も含まれます。

なので以下デメリットとメリットは、法律事務所を比較対象としています。


① 法務スキルが評価されにくい

職場によりますが、法律事務所に比べたら法務部は法律知識が格段に要求されません。

大企業の法務部では法律知識や法律実務処理能力は評価されません。弁護士として超絶業務ができる人が会社に入っても、宝の持ち腐れになります。

難しい法律問題は外部の弁護士に投げてしまいます。自分で調査して考えて社内で報告するよりも、外部の弁護士に投げて「弁護士はこういっています」と社内で報告した方が評価されます。

法律知識を使った問題解決能力が高くても給料は上がらないし、差もつきません。 

激務の法律事務所からインハウスローヤーになった人は、新卒から10年法務部にいる生え抜き社員が「大したことは何もしていないのに偉そう」なのを見て、呆れているわけです。

この環境は、法務スキルを伸ばしていこうという真面目な法務パーソンのやる気を大いに削ぎ落とします。

 

経済学の父、アダム・スミスはこう言います。

ある種の労働に人並はずれた技能と創意工夫が必要な場合には、そうした能力をもつ人は尊敬され、その人の生産物も、費やした時間以上に高く評価されるのが自然である。

(アダム・スミス、山岡洋一訳『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)』(日本経済新聞出版社、2007年3月)50ページ)

他の人にない高い技能があれば評価されるのが「自然」であると。

大企業の中では高い技能よりも年次が評価されるので、不自然に感じます。

 

こうした能力は長期間にわたって努力しなければ獲得できないのが普通であり、その生産物が高く評価されていても、能力の獲得に要する時間と努力に対する適正な報酬にすぎない場合いも多いとみられる。発達した社会では労働の厳しさや熟練度の違いは一般に、労働賃金で調整されている。

高い技能は獲得に時間を要し、高い賃金で評価されるべきというのがアダム・スミスの説明ですが、多くのサラリーマン弁護士を擁する大企業法務部にはそういう発想はあまりないようです。


② 社内出世は期待しにくい

企業内弁護士の将来は、とても不明確です。

これまでに例のない新しい人種だからです。 

古き良き年功序列型大企業の場合、弁護士資格は評価されず、よいサラリーマンとして良いキャリアパスをたどるのは難しい。
 
理由は簡単です。

外部から来た弁護士は異分子であり、大企業の人事体系が想定していない人種だからです。どう扱ってよいかわからないのです。

もちろん、転職後に会社内で「弁護士なんですか?!すごいですね!なんでうちなんかに転職したんですか??」と言われることは多々あります。
しかし、それだけです。社内の出世で役立つわけではありません。

 

③ 年収の伸びが限定的である

法務レベルがアップしても評価されないし、年収も増えない。そして、会社員としての給料の伸びは限界がある。

それに対して、独立弁護士であれば稼ぎは青天井です。

「そんな簡単じゃない!」と開業弁護士から叱られそうですが、サラリーマン法務部員は基本的に仕事に応じて年収を上げられません。

 

④ ゆるま湯環境→成長できず将来が不安、ボンクラ集団に囲まれる

のんびりした法務部に行くと、ほぼ何もせずにぼーっとしているだけで安定した給料が毎月もらえます。

「いいことじゃん!」と言われそうですが、人間必ずしもそう思う人ばかりではありません。

「修習同期はバリバリ働いているのに、私はここで一体何をやっているんだろう」と不安になります。

しかし周りを見渡すと、大企業の本社管理部門社員として誇りを持った方々がたくさんおられます。

低能な人が特に努力もせず偉そうにしている。これはかなりイライラさせられます。

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⑤ 税金をばっちり取られる

会社員になって「税金すごい取られるやん・・」と気づきました。

サラリーマン税金訴訟を起こしたくなる気持ちがわかりました。

青色申告にして、様々な経費を計上する。そういうことは全くできません。取られるがままです。

 

⑥ 英語を使うことが期待されている(苦手な人には辛い)

法務部がある企業は大企業が多く、海外展開等英語に絡むことは非常に多いです。

司法試験で学んだことはほぼ使わず、海外の法制度を調べたりする機会が出てきます。

司法試験合格の取り柄があまり発揮されません。

また、英語が嫌いな人も多いでしょう。

法律ばかり勉強した人は以下の条文を読むと違和感を感じるはずです。

民事訴訟規則47条。

 

「(書類の送付)
第四十七条 直送(当事者の相手方に対する直接の送付をいう。以下同じ。)その他の送付は、送付すべき書類の写しの交付又はその書類のファクシミリを利用しての送信によってする。
2 裁判所が当事者その他の関係人に対し送付すべき書類の送付に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。」

 

なぜ違和感を感じるのか。

「ファクシミリ」というカタカナがあるからです。

法律家にとって横文字は相容れにくい。「争点効」みたいに漢字で完結する方に慣れている。

「パブリックフォーラム」とか出てきたら「なんて新鮮な響きだ!」となる。

そんな調子だから実務に出て「スキーム」とか言って得意げな顔はするものの、真剣に全て英語で業務をこなすのは多くの人にとって苦痛です。


* デメリットまとめ

法律専門家度が減少する、というのがデメリット概要です。

上記デメリットは大規模法務部ほどよくあてはまります。

外資系企業や小規模法務部にはあてはまるものが減ります。

 

 

2 インハウスローヤー(企業内弁護士)のメリットはこういったところだ

デメリットに比べると文字数が少ないですが、いずれも一騎当千の威力あるメリットです。

私にはいずれも捨てがたい。

 

① 外部者ではなく内部者・仲間としてビジネスを支援できる

インハウスローヤーになるために面接で弁護士はみんなだいたいこういうことを言うんじゃないか、と思われる理由です。

実際、この理由は多くのインハウスローヤーから多大な支持を得ています。

私もこんな感じの志望理由を面接で言いました。

実際企業に移ってみてどうか。

この志望理由はけっこう実現できているかなあと思っています。

タイムチャージを気にせず柔軟に法律問題をどう解決するか話し合いが社内でできるので、法律事務所のときより格段にやりやすいですし、うまくできるとやりがいを感じる部分です。

 

また、法律事務所より資金力がありますので、その資金力や知名度を活かしたビジネスに自ら関われるのは魅力です。

海外出張好きには断然インハウスです。

私は欧米とアジアにたくさん出張に行きました。 

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② 安定した生活環境

長時間労働の法律事務所勤務の弁護士がインハウスローヤーに転身すると、劇的に労働時間が減ります。

18時に帰社できます。

いつも午前になってから帰っていた人にとっては18時に帰れるのは衝撃です。

 

③ 何もしなくても毎月お金(給料)がもらえる

自分のやったことに対する成果ではなく、「ただいるだけ」で給料がもらえます。

定期的に確実に給料がもらえるのは安定そのものです。

パートナーによく見られようとか、営業して案件取ってこないと、とか悩まなくていいんです。

 

* メリットまとめ

上記インハウスローヤーのメリットをまとめると、法律事務所よりインハウスローヤーの方がまともな人間らしい生活が送れる、ということです。

 

▼調査結果に基づくより詳しいインハウスローヤーのメリット

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3 インハウスローヤーについての誤解

インハウスローヤーについての誤解が広がらないように一部解説。

 

① インハウスローヤーの方が儲からないとは限らない

インハウスローヤーでもたくさん稼いでいる人はいます。

具体例。

  • 30代でアマゾン 部下無しでも年収2000万円超
  • 上場企業の法務部長 年収1億円超

事務所維持経費をかけず、弁護士よりも安定した環境にいながらかなりの高給をもらうケースもあります。


② 企業にいればビジネスに根差した専門知識が身に着く?

そんなことはありません。法律知識はやはり法律事務所でプレッシャーのかかる環境にいた方が身に付きます。

法律以外のビジネス知識が身につくか?これもそんなことはありません。法務部にいたら自動的に身に着く知識はありません。自分でやるしかありません。


③ 大企業には優秀なビジネスマンになれる環境(研修等)があるとは限らない

大企業の方が研修とかがしっかりしていていい、という意見があります。

しかし、研修なんて大したことやりません。研修が大事だと思うなら、弁護士会の研修や有料の企業研修に行けばいいんです。

研修を職場選びのポイントとして高いウェイトを置くのは愚かなことです。

研修だけでなく、先輩社員等からしっかり色々教えてもらえるということもあまりありません。

また、研修に限らず、法務部では独自の損益管理をするはずがないので、「いかにもビジネス!」という経験は積めません。 

 

4 安定を求めるならインハウスローヤー

私は、安定した環境の方が好きなのでインハウスローヤーの方がいいなあと思っています。

 

「企業が安定なんて現代では妄想だ!」とすぐになんでも噛みつく人がいるのですが、会社は法律事務所に比べたら比較にならないくらい安定しています。

 

他方で、法務スキルを磨き、顧客を開拓して報酬をもらう、といったスタイルが好きな人には会社員より法律事務所の方が向いていると思います。

 

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