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【調査】弁護士のインハウス転職理由はWLB52.3%と現場感49.4%

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法律事務所勤務の弁護士が転職先として企業・インハウスを選ぶのはなぜか

(2019年10月6日改訂)

弁護士は、法律事務所という特異な組織にいてこそ、その社会的地位を保てると考える人は多いと思います。法律事務所に所属する弁護士として特権階級のように感じているにもかかわらず、なぜインハウスに転職する弁護士がいるのでしょうか。

 

その理由圧倒的トップ2は以下2つです。

  1. ワークライフバランス(約52.3%)
  2. ビジネスの現場に近いところで仕事がしたい(約49.4%)

 

約半数の弁護士が上記理由によってインハウスになっています。

本記事は、慶應義塾大学法科大学院の奥邨弘司教授の「数字で見る組織内弁護士」(法律のひろば2019年6月号)の記事をベースに作成しました。

1 ワークライフバランスは本当に大事だ

激務法律事務所からインハウスへの転職を決断した多くの弁護士は、賢明な選択をしています。ワークライフバランスを手に入れて幸福度を高めることに成功しています。

 

(1) 弁護士が平和な生活を求めて企業に向かう

現在の勤務先を選んだ理由(JILA調査:問6:複数回答可)の第1位は次のとおりです。

 

「ワークライフバランスを確保したかったから」  52.3%

 

調査を開始した2013年からの平均が52.7%、ほぼ毎年(2016年を除いて)回答順位第1位の回答である。

 

みんな法律事務所、特に企業法務系のブラック職場に嫌気がさしているのです。

 

(2) 多くの弁護士は転職で成功している

法律事務所から「脱北」した弁護士の末路はどうなっているのでしょうか。多くはうまくいっている、というのが大まかな傾向です。

実際働き始めてどう感じたか、現在の仕事に対する満足度(日弁連調査:Q30)について、ワークライフバランスに関する回答結果は次のとおりです。

 

「大変満足」「やや満足」 計81.1%

 

この結果を踏まえて奥邨教授もこう言っています。

就職時の希望どおり、またはそれ以上にワークライフバランスは実現しているものと思われる。

 

なお、勤務実態を見てみると、休日出勤について「ほとんどない」とする者が、調査開始以来の平均で81.1%にのぼる(JILA調査:問7)。

 

(3) 法律事務所よりインハウスははるかに幸せ

会社がワークライフバランス天国、というわけではありません。

 

ざっくり比べると、企業内弁護士の残業時間は、一般のそれとほぼ同レベルにある

 

企業内弁護士は別に短時間労働をしているわけではないのです。普通の日本のサラリーマン程度の時間働いています。

 

それでも満足しているのは、法律事務所の職場環境がトラウマのように印象に残っているからです。

 

世間一般と比べて特に勤務時間が短いわけではないのに、ワークライフバランスが高い評価となっている一因としては、企業内弁護士の6割前後が勤務経験を有する法律事務所の勤務を比較対象としていることが考えられる。

 

(4) ワークライフバランスは幸福度に大きく影響する

ワークライフバランスは、「就職先に希望するポイント」程度のものではありません。重要です。生活、健康に関するものですので、ワークライフバランスは当然あるべき最低限の条件です。「そんなものはないと思え」と平気で言える人の多い職場は狂気の職場です。

 「ワークライフバランスを大事にしたい」と思うのははばかられる、恥ずかしい、と思う気持ちは大いに理解できます。タフであることが仕事ができる社会人の重要ポイントであり、長時間労働やきつい仕事を避けるのはダメ人間と宣言しているように感じられるからです。

しかし、過去の以下の記事でも書いたように、そのような愚かな狂った思想が蔓延する職場はさっさと辞めるべきです。

houmuwork.hatenablog.com

 

2 ビジネスの現場の近くで自分の力を活かしたい

外から表面的なコメントを提供するだけでなく、自分の働きがどのように役に立っているのか見てみたい。これは多くの専門家が思うことです。弁護士も思いますし、コンサルタントもこのように思って事業会社に転職する人は非常にたくさんいます。 

 

(1) 企業法務弁護士はビジネス直結で力を発揮したいとみんな思っている

企業内弁護士となった理由。

 

「現場に近いところで仕事がしたかった」 49.4%(調査開始以来の平均)

 

ほぼ毎年(2016年を除く)回答順位第2位の回答である(JILA調査:問6:複数回答可)。回答順位第1位の「ワークライフバランスを確保したかった」の平均値52.7%と比較しても、それほど大きな差はないということができるだろう。

 

これは、私が法律事務所からインハウス転職をするときに転職理由として答えていたものですが、私だけでなく多くの弁護士が感じてるのですね。

 

なお、以上の傾向は、普段学生に接していて、彼・彼女らから聞くところとも整合しているように思われる。学生達の多くも、一般的な傾向を反映して、ワークライフバランスを重視しているが、一方で、それと同程度以上に、彼・彼女らは、法律専門家としての自分の能力を、ビジネスの現場で試してみたいとの思いを強く持っている。

 

(2) インハウス転職した弁護士は現場近くで働けて70%は満足している

では次に、実際に働き始めてどう感じているかを見てみよう。

 

現在の仕事に対する満足度(日弁連調査)を問われて、業務内容について「大変満足」「やや満足」と答えた者の割合は次のとおり。

 

2017年(Q31)  71.4%

2019年(Q30)  68.5%

 

ワークライフバランスに対する満足度に比べれば、数字は低いが、約7割の企業内弁護士が肯定的評価をしていることは注目できよう。なお、参考までであるが、内閣府のワークライフバランスに関する調査で、仕事に対する満足度を「満足している」「やや満足している」と答えたのは、正社員の場合で計40.5%であることと比較すれば、7割という数字の意味はい小さくないと思われる。

 

この数字は注目すべき数字でしょう。多くのインハウスローヤーは業務に満足しているのです。


また、将来のキャリアに対する期待と不安を尋ねる設問(日弁連調査:Q38)に関して、以下の各選択肢も7割以上が肯定的な回答をしているようです。

  • 「ビジネスを遂行する過程に関わる中で、ビジネス活動の一翼を担う者として成長できる」
  • 「自分の知識・経験・専門性を仕事に活かすことができる」
  • 「その業種特融の専門性を高めることができる」
  • 「企業をめぐる法務問題全般を見ることができるので、企業法務専門家としてバランスのとれた経験を積むことができる」
  • 「法律外の問題や社内調整など法的業務以外の仕事も担う中で成長できる」

  

(3) 法律事務所でのストレス

インハウスローヤーのこのような高い満足度は、法律事務所勤務での不満・ストレスの裏返しです。特に企業法務の事務所で顕著でしょう。

 

弁護士の仕事の内容自体がちまちまと細かいものを客から引き受けて高い対価を請求するもので、大変です。

『ブラック職場があなたを殺す』の著者ぺファー教授は法律事務所について次のように指摘しています。

法律関係の職業も、長時間労働になりやすい。彼らは働いた時間だけ顧客に請求できるからだ。長時間働いて、その分を請求すれば、法律事務所にとっては利益が膨らむ。

このタイムチャージ制度は、極めてストレスフルな仕組みです。弁護士はタイムチャージで儲けらえるいい仕組みだと考えているかもしれませんが、自分の時間を切り売りして不幸になるシステムです。

 

また、弁護士の報酬は高いが、それに見合うサービスが提供できているかはわからない。しかし、請求しないとやっていけない。これは真面目な弁護士には辛いのです。

  

これについて、北野唯我『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社、2018年)では次のように表現されています。 

「自分が信じていないものを売る、これほど人の心を殺す行為はないんだ。そのひとつの商品を売るために、本当に多くの小さな嘘をつかないといけないからな。そして人は小さな嘘をつき始めると、やがて自分の心をその嘘に合わせるようになる。そうやって、人間の心は死んでいく。」

 

弁護士は、「1回案件をやれば、その道の専門家と名乗れる」と平気でいうように、自分があまりわからないことでも客に「わかりません。できません」と言うのが苦手です。「すいません。私の助言はイマイチでした」と言える人も少ないです。

自分、自分の所属する法律事務所の法務サービスに自信を持てずに客に提供し続けるのは心労がたまるのです。

自分が売り上げをあげなければならない立場になればなおさらです。 

 

3 企業内弁護士の満足度は高い

多くの弁護士が法律事務所での辛い勤務を経て、インハウスへの転職を決断し、成功しています。

その結果平和で安定した生活を得られています。これは幸福度に大きく影響を与えます。

私も、法律事務所と会社を比べると、全体的に見て会社の方がいいなあと実感しています。