司法試験失敗・不合格後の就職の考え方

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司法試験合格を諦めて就職する場合、就職先は2種類あります。 

  1. 法務
  2. 法務以外

どちらにすべきかは人によります。

迷っている人は就活で両方応募して検討すべきです。

目次

1 法律を勉強してきたことに価値はあまりない

「司法試験はうまくいかなかったけど、一生懸命勉強してきたことを活かせる仕事をしたい」

これは法務職を選ぶ際に大いに納得できる理由です。

法務職を選ぶ際には気をつけるべきことがあります。

一生懸命に勉強してきたとしても、それは転職市場であまり評価されません。

残念ながら法務転職市場でそれほど自慢できるものではないと思います。

なぜそんな悲しいことを言うのか。

法務転職市場では、司法試験不合格者のライバルとなるのは、現役弁護士だからです。

市場では競合を常に意識しなければなりません。

弁護士は、ほぼ全員が司法試験に合格しています。

どれだけ知識が乏しい弁護士でも、司法試験を合格したということで一定の知識の裏付けがあります。

不合格者は違います。

すごくよくできるけど残念ながら落ちた人なのか。

それとも、大学法学部に4年、ロースクールに3年、司法試験勉強に5年をかけたけれども、不真面目な勉強しかしておらず、順当に司法試験不合格になった人なのか。

不合格者の実力は測りかねるのです。

私が法務部の採用担当なら弁護士を採用します。

不合格者は採用しません。

転職時の採用面接に意味はない | 面談で人は見抜けないで書いた通り面接で人を見抜くのはほぼ無理と考えているため、確実なスクリーニングを実施する必要があるのです。

司法試験不合格者の実力の裏付けがないこともそうですが、実際のところ司法試験の勉強をした程度の知識を持っているだけでは大して役に立ちません。

私は司法試験に合格して弁護士になりましたが、弁護士なりたては全く何もできませんでした。

契約書ってどう読むの?

というところから始まるのです。

企業法務実務で使うのは司法試験の知識のうちのごくわずかです。

司法試験に合格していれば法務として十分かというと全くそんなことはありません。

2 法律を勉強して得たものは役に立つ

前記1と矛盾するようですが、司法試験合格のために勉強したことは役に立ちます。

勉強すれば法律知識は身につくからです。

法務では当然法律関係の知識を使います。勉強もしなければなりません。それまでに法律の勉強をしてきたことは間違いなく役に立つのです。

法務転職は難しいのか | 未経験でも採用されるにはでも書いていますが、法務転職の際には法律の勉強をしてきたことは当然見られます。

ただ、あくまで自分の役に立つ、ということです。過去の勉強がそれが市場で強みになると過信してはいけません。

この事実は、法務職を選ぶ際に重要なポイントだと思います。

3 司法試験不合格でも新卒で有名企業法務部に入れる

司法試験不合格が確定して就活をすると、無名中小企業しかないんじゃないか、そもそも採用してくれる企業があるのか…と暗い未来を想像する受験生もいるかもしれません。

しかし、実際のところ、有名企業に就職できている司法試験受験生はけっこういます。

なぜ採用する企業法務部があるのか私には理解できないのですが、現に存在します。

いつだったか、三井物産が司法試験不合格になった人に内定を出したという記事を読んだことがあります。

司法試験に合格して弁護士になって、いつかインハウスになったときに、司法試験不合格でその企業に就職した人と同じ職場になるかもしれません。

他方は司法試験不合格、他方は合格、でも待遇はほぼ同じで同じ企業に勤務。

ということが起こり得るのです。 

司法試験崩れの法務部への就職

4 司法試験不合格者の将来の法務転職市場価値には疑問符

若いうちに大企業に入るのは司法試験不合格者にも可能かもしれません。

しかし、将来さらに転職して法務のハイポジションを狙う際には、司法試験不合格者はあまり優位な立場にないと感じています。

前記1のとおり、弁護士資格保持者に比べて市場価値が劣るためです。実力のある人であったとしても、転職市場価値にはそれと同程度の実力を持った弁護士資格保有者がライバルとして存在するのです。

5 長期で考えれば司法試験不合格など大した失敗ではない

短期的視点でみれば司法試験不合格は致命的な失敗と思ってしまうかもしれません。

しかし、働きながらきちんとキャリアをつめれば、長期的にはあまり気にしなくてよくなります。転職の際に一番応募先企業から聞かれるのは、直近の仕事で何をやっていたかです。

将来的には、遠い昔司法試験で落ちたことは問題にならなくなります。

そのため、転職で成功するには今(現職)を大事にせよという記事を書いています。今の仕事が大切です。

ただ、それはちゃんと説明できるキャリアを歩んできた場合です。ずっと「どうせ私は落伍者ですよ」というマインドでいて前向きに努力しないままだとだめです。そうした人にとって時間は不利に働きます。

前記4と矛盾するかもしれませんが、司法試験不合格の後に法務職を得た場合であっても、業務経験の積み方次第では、弁護士より高い市場価値を得られることはあると思っています。

海外案件に詳しい、GDPR対応は得意だ、といった日本法弁護士には持てない強みを持つことは司法試験に関係なしにできるはずです。

海外の弁護士資格を取ることだって制限されていません。

6 司法試験不合格は法務業界の呪縛から解き放たれる絶好の機会

多くの司法試験受験生は、「勝ち組」の仲間入りをしたい、司法試験合格によってエリート層に加わりたいという固定観念にとらわれています。

このような周りの視線を気にする態度は、司法試験に合格しても消えません。

周りを気にする人は、常に弁護士業界で自分は周りと比べてどうなのかが気になるのです。

以下のような嫌な気持ちは弁護士業界の多くの人につきまとっています。

・大事務所から内定をもらえなかった

・東大出身ではない

・裁判官になろうと思ったが、裁判所から声をかけてもらえなかった

・司法試験の順位、研修所の成績がイマイチ

・同期に比べて初任給が安いのではないか

・パートナーに昇格できるのか不安

・パートナー弁護士からの評価が悪いのではないか

・留学したいが英語の点数が悪い

・留学先の学校の知名度がパッとしない

・個人受任の稼ぎが少ない

・自分のクライアントが少ない、売上が増えない

・専門分野らしい専門分野を強みとして持っていない

・営業が苦手だ

私は法律事務所で働いて過度なストレスにうんざりしました。

そんなストレスに悩んでいる弁護士は私だけではありません。

法律事務所で弁護士の同僚と話すのと、会社法務部で同僚と話すのでは、会話中の緊張感が違います。

弁護士は仕事がつらい法律事務所を辞めればストレスが激減する、こう表現したとおり、つらい法律事務所はつらいです。

司法試験に合格しても大変なのは変わりがないのです。

自分が気にする比較対象が弁護士というのも心労の元です。

気にせず我が道をいけるのであれば苦労はだいぶ軽減はすると思います。

自分の同期等の周りとの比較をどうしてもしてしまう、という人は、法務職に進むのは勇気を振り絞ってやめるのは検討の価値があります。

そんな周りと比較してしまう人が司法試験合格者と一緒の業界に行ったら不幸せになるには全く困らない比較対象がたくさん目についてしまって嫌になるかもしれません。

「もう法律は嫌だ」

そういう気持ちがあるのなら、よく考えるべきです。本当に嫌いか、実はそうでもないか。

私は、法律事務所の弁護士も企業法務部員も、高い給料をもらう価値は本当にあるのか常々疑問に思っているので、法務業界以外の仕事をできるチャンスがあるというのは悪くないと考えています。

7 おすすめは「法務職以外」の仕事だが、法務狙いももちろんOK

私は、司法試験不合格者の方には、法務職以外に進むのを勧めたいです。

上述の理由のうちの以下2つを重要ポイントと考えるからです。

  1. 司法試験不合格者は法務要員としての市場価値があまり高くない
  2. 法律業界を離れるチャンス

ただ、自分が実際不合格者になったら、法務職を選んでしまいそうな気はします。

勉強に長い時間を割いてきた馴染みのある分野として法務を選ぶのは悪くない選択です。

「市場価値が、、」と前述しましたが、市場価値という幻想にとらわれるのはよくないと転職で自分の市場価値を知る必要はないで書きました。

法務がいいなら気にせず法務の仕事を目指すべきです。

法務の経験がない場合には、経験者よりもやや苦戦して当然ですが、手はあるはずです。

法務転職は難しいのか | 未経験でも採用されるには

どの職を目指すべきかに正解はありません。

たくさんの転職エージェントと相談して、鵜呑みにしないで、よくよく時間をかけて考えて、「自分で」決断するのが大切です。

8 司法試験不合格後に相談すべき転職エージェント

司法試験に合格せず就職しようと思ったら、大手の転職エージェントに相談すべきです。中小の転職エージェントや法務専門転職エージェントは勧めません。

どう就職活動をすべきか?は、以下記事をご覧ください。

転職活動の始め方 | どうやって進めたらいいのかわからない初心者向け

相談する転職エージェントは、大手の方が案件数が多く様々な可能性があります。

法務職、法務以外の仕事についても相談ができます。

大手は転職に慣れていない人の対応になれています。大手はスタッフも多く、応募プレッシャーを中小エージェントほどかけてきません。

面接セミナーがあったり、サポートが手厚いですのも大手の特徴です。

大手の方が優しいので、中小のぞんざいなエージェントとの面談で嫌な思いをする、ということになるのも避けられます。

登録すべき転職エージェントは以下のとおり。

(1) 弁護士ドットコムキャリア

弁護士ドットコムキャリア

弁護士ドットコムキャリアは、法務転職専門の転職エージェントです。

  • 「やはり法務部に就職したい」
  • 「営業は無理なので、法務も含めた管理部門に就職したい」

こういった人におすすめ。

法務部ではなく、パラリーガルとして働きたいという人もいるかもしれません。

弁護士ドットコムキャリアがおすすめです。

「弁護士ドットコムキャリア、という名前からして弁護士向けのサービスでは??」と思われるかもしれませんが、心配ご無用です。

弁護士以外の法務関係者の就活支援も積極的にしています。

弁護士ドットコムキャリアの転職相談のポイント

  • 法務業界への理解に基づいた相談ができる。
  • 担当者が1人で企業と応募者の両方を担当する(分業制を取る大手とは違うやり方)ことから、応募した際の決定力が高い(とりわけ法務業界)。
  • 弁護士以外でも登録できる。

▼弁護士ドットコムキャリアの公式サイトはこちら

まずは無料でキャリア相談!法務の転職なら 【弁護士ドットコムキャリア】

(2) MS-Japan

MS-Japan

法務等の管理部門の転職に特化した転職エージェント。

弁護士ドットコムキャリアと違い、法務以外の管理部門の求人情報も多く扱っています。

「法務にも興味があるが、法務以外の管理部門の仕事もありかなと思っている。営業等はやりたくない。」

MS-Japanは、こんな人に最高の転職エージェントです。

弁護士ドットコムキャリアだけだと求人数が少なくなりますので、弁護士ドットコムキャリアに加えてMS-Japanというのもおすすめです。

専門職系の人材紹介会社ではありますが、上場している大企業であり就職初心者にもやさしいエージェントです。

私は2回相談に行って2人の担当者と面談したことがありますが、二人とも優しかったです。

▼MS-Japanの公式サイトはこちら

(2) リクルートエージェント

最大手、担当者数の多さゆえの手厚いサポート。

まさに転職初心者におすすめです。

求人数も多い。

求人検索システムの使い勝手もよく、登録しないのは損です。

リクルートエージェント転職支援サービス

(3) doda(デューダ)

リクルートに次ぐ大手。

会社名はパーソルキャリア株式会社。

「日本の人事部長」のCMをやっている会社です。ここのお勧め理由はリクルートと同じ。大手で転職初心者にやさしいから。 

▼無料登録(公式サイト)はこちら

(4) マイナビエージェント

マイナビエージェントは、大手企業の求人情報が多く、若手の丁寧な支援を心がけている会社として勧められます。 

(5) 英語を使った仕事への転職エージェント

以下のような方は、英語を使った仕事を積極的に狙うのがおすすめです。

  • 英語が得意
  • 英語を使って仕事がしたい
  • 英語を使っての仕事でもよい

なんでかというと、英語を使う仕事には抵抗感がある人が多く、ライバルが激減するからです。

「法律 × 英語」の組み合わせは使えます。

英語を使う仕事へのおすすめ転職エージェント3選をご覧ください。

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できるかぎり多くの転職エージェントに会うべきです。たくさんの求人情報を知れますし、さまざまな今後のキャリアについての意見も聞けます。短絡的な就活を防ぐのがよいです。 

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