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法務部とは、どんな仕事をしていて、どんな役割を担っているのか。
一般的には、契約書を読んだり、会社が法律を守れるように助言したり、トラブルを予防したりする部署だと説明されます。
外から見ると、専門的で、知的で、エリートっぽい部署に見えるかもしれません。
ただ、私は法務部という部署にはかなり懐疑的です。
法務部を置く価値は乏しく、むしろない方がよいのではないかとよく思っています。
極端に聞こえるかもしれません。
しかし、法務部があることで、会社全体の法律感度が上がるとは限りません。
むしろ、法律や契約が「法務部だけのもの」になり、法務部以外の社員が法律問題を他人事として扱うようになることがあります。
これはかなり危ない。
事業部は契約書を読まない。
営業は自分の案件のリスクを考えない。
管理職は「法務に確認済みです」と言って、自分の判断責任を薄める。
法務部もまた、「法律関係は我々の仕事だ」と思い込む。
こうなると、会社全体としては弱くなります。
あまり必要とされていない部署の仕事は、つまらないものになりがちです。
必要もないのに、自部署で「仕事」と称して余計な作業を増やすからです。
では、会社にとって価値がある法務部とはどんな法務部なのか。
そして、つまらない法務部で働いている人はどうすべきなのか。
法務部を必要以上に美化せず、かなり辛口で書きます。
なお、今の法務部がつまらないからといって、すぐ辞めろという話ではありません。
ただし、他社の法務部や外資法務、事業寄りの法務求人を見ておくと、自分のいる環境が特殊なのか、法務という仕事自体が合わないのかは見えやすくなります。
1 法務部はエリートと勘違いして周囲をダメにしがち
法務部の良くないところは、法律や契約に関する業務を一部独り占めにしてしまうことです。
法律や契約は、本来、会社全体のものです。
社員全員のものです。
法律の知識があろうがなかろうが、法律はみんなに等しく適用されます。
刑法235条を知らなくても、他人の物を盗めば窃盗罪が成立します。
独占禁止法を知らなくても、競合他社と危ない話をすれば問題になります。
下請法を知らなくても、外注先との取引でやらかせば問題になります。
個人情報保護法を知らなくても、顧客データを雑に扱えば問題になります。
それなのに、法務部があると、社内でこういう空気が生まれます。
- 契約書は法務部が見るもの
- 法律問題は法務部が判断するもの
- コンプライアンスは法務部の仕事
- 困ったら法務に投げればよい
法務部以外の人はそう思う。
誰だって小難しい法律のことなんか考えたくありません。
法務部もそう思う。
法律関係は我々の仕事だと。
その結果、法律問題が会社全体の問題ではなく、法務部だけの仕事になります。
「あいつらが考えることだ。俺には関係ない。」
こういう状態になります。
実際には、そんなことはありません。
管理部門でも、採用や人事研修は人事部の担当だけがやればよいかもしれません。
しかし、法律は全部署に関わります。
営業、購買、開発、マーケティング、人事、経理、経営企画。
どの部署も、法律や契約から逃げられません。
法務部がいると、こうした危険な状態を解決できるのか。
できることもあります。
しかし、法務部があることで、かえって会社全体の法律問題への当事者意識が下がることもあります。
法務部の存在は、「法律は法務部のもの」という極端な常識を助長してしまう。
しかも良くないことに、法務部員自身もその常識を信じています。
(1) 契約書審査は法務部の仕事であるという常識
契約も同じです。
「契約書審査は法務部の仕事である」
これは常識のように扱われています。
しかし、この常識は間違いです。
法務部が存在しない会社は契約できないのでしょうか。
そんなことはありません。
日本では、法務部がない会社の方が多数派です。
コンビニで物を買うのも契約です。
スマホで有料アプリを購入するのも契約です。
マンションを借りるのも契約です。
家を買うのも契約です。
法務部員や弁護士でない人でも、日々契約しています。
誰にとっても契約は自分のものです。
法務部のものではありません。
会社の業務でも同じです。
契約書は、事業の内容そのものです。
誰に何を売るのか。
いくらで売るのか。
いつ納品するのか。
責任範囲はどこまでか。
解約条件はどうするのか。
こういう話は、法務部だけで決める話ではありません。
むしろ、事業部の方がよく分かっているはずです。
ところが、法務部レビューを必須にすると、法務部ではない担当者が契約書を読まなくなります。
無責任になる。
自分の担当のビジネスであっても、契約書に何が書かれているか知ろうともしない。
愚かな法務部員はこう文句を言います。
「あの人たち、全然契約書を読まない」
そりゃそうです。
自分たちの部門が「契約書レビューしますよ」と宣伝したら、法務部以外の人たちが読まなくなるのは当たり前です。
これは会社組織の契約書リテラシーのレベルを下げます。
全然契約書を読みもしない他部署から、契約書レビューを押し付けられる。
それが楽しいわけがありません。
法務部の仕事がつまらなくなる理由は、ここにもあります。
(2) 法務部がなくて何がいけないのか
法務部がなければ、事業部門は自ら契約書を読み、法律問題を自分事として捉える必要があります。
よくいる法務部員は「それはリーガルリスクがある」と警鐘を鳴らしそうです。
しかし、法務部があるからといって、事前予防がしっかりできるとは限りません。
「法律は他人事」の考えが行き渡った会社では、法務部以外の人の法律問題に対する感度が鈍くなります。
日常の問題は把握されにくくなります。
また、法務部の考える「法務部ならなんとかできる」というのは思い上がりです。
法務部員は陵南高校の仙道ではありません。
いるからといって、なんとかしてくれるわけではありません。
仙道がいてもインターハイにはいけなかった。
ましてや、そこらの法務部員に全能の力があるわけがない。
法務部で漏れなく法律問題を発見し、対処できるなんて夢物語は存在しません。
契約書も同じです。
「契約書は、将来起きうることを想像することが重要」
こう社内研修で説明する法務部員がいます。
実際のところ、将来何が起きるかを想像するのはかなり難しい。
将来起こりうるすべてのことを想定した契約書は書けません。
将来起こりうるすべてのことを想定した契約書は書けない
伊藤元重『ビジネス・エコノミクス』(日経BP、第2版、2021年9月)374ページ
そして、それを契約書に文言として書き込むのも難しい。
しかし、自信家な法務部員や弁護士はこう考えていません。
「私ならできる」と考えています。
そうした自信過剰な人が契約書レビューと称して何をしているか。
自分の趣味で契約書にあれこれコメントしているだけです。
契約書をどう読むか、どう書くかは、かなり趣味の部分が大きい。
その趣味を「法務の専門性」と呼んでしまうところに、法務部の面倒さがあります。
2 法務部はうざい存在であるべきか
法務部のあり方として、大きく2つの方向性があります。
- 厳しい法務部。会社内では「うるさいお目付け役だ」と怖がられる。
- やさしい協力的な法務部。会社内では「法務部に相談してみよう」とよく相談してもらえる。
一見すると、後者の方がよさそうです。
しかし、どちらにも問題があります。
(1) 厳しくうざい法務部
まず、厳しい法務部です。
このタイプの法務部は、会社内で「法律の他人事化病」を進展させます。
会社内では、法律があるから守らなければならない、という発想ではなくなります。
「うちの法務部がうるさいからやめておこう」
こういう発想になります。
法務部に力があると、事業部は法務部に「これでよろしいでしょうか」と相談します。
法務部がよいと返事をすれば、あたかも王様から許可状をもらったかのように、そのメールや発言が保存されます。
「法務部が問題ないと言ったから法律上の問題はない」
こんな理由が社内で通用するようになります。
そんなことがあるわけがない。
どこかの法務部がいいと言ったかどうかは、法律の読み方とは関係がありません。
仮に法務部が「100円以下のものは盗んでもまあ問題ないです」と言ったとします。
これを聞いた社員が「100円以下のものを盗んでメルカリで売る事業を開始する。法律上問題ないことは法務部に確認済み」と資料に書いたらどうでしょうか。
明らかにおかしい。
法務部の確認は、法律そのものではありません。
しかし、厳しい法務部が社内で権力を持つほど、「法務部がOKと言ったかどうか」が法律判断のように扱われます。
これは危ない。
ただし、厳しい法務部にも良い面はあります。
危ない案件を止める力があるからです。
問題は、止めること自体ではありません。
止め方が雑だと、会社全体が「法務が止めるかどうか」だけを見るようになることです。
それでは、事業部の法律感度は育ちません。
(2) やさしい人気者法務部
では、やさしい法務部はどうでしょうか。
杓子定規に法律を振り回さない。
事業部に寄り添う。
相談には快く応じる。
社内で信頼される。
頼れるビジネスパートナーとしての法務部。
こんな法務部の方が価値がありそうです。
私もそう思っていました。
しかし、これも誤りです。
やさしい人気者法務部もまた、法律の他人事化を進行させます。
法務部以外の事業部は、何か法律問題っぽいことがあれば、とりあえず法務部にぶん投げるようになります。
自分では考えない。
法務部はそれを嫌な顔せず引き受ける。
面倒くさそうなことをお願いして引き受けてくれれば、人気者になっておかしくありません。
しかし、社員に人気があることは、会社組織にとって価値があることとは限りません。
これは、いわゆる「魚を釣ってあげる」だけの行為です。

お腹を減らしている人に何をしてあげるか。
- 魚を釣ってあげる
- 魚の釣り方を教える
自分で釣り方を習得しなければ、自分で食べていけるようになりません。
やさしい人気者法務部も同じです。
「腹減った。魚くれよ」と事業部が言ってきたら、「はい、釣ってあげますよ」とすぐに釣ってあげる。
「ありがとう」と喜ばれる。
法務部員も、釣りの技術を習得して、毎日頑張って魚を釣ってあげて喜んでもらえる。
なんて充実感だろう。
こう思います。
この結果、事業部門はますます魚釣りができなくなります。
それによって、さらに法務部への魚釣り依頼が増えます。
事業部門のスキルが衰えれば衰えるほど、法務部人気は高まる。
会社全体で見ると、由々しき事態です。
このような法務部に「魚を釣ってあげるな」と言えば、猛反発が起きます。
事業部はこう言います。
「魚を釣るのは法務部の仕事だろ。俺たちは忙しいんだ。」
法務部もこう言います。
「そのとおりです。魚釣りの仕事こそ我々の使命です。事業部から信頼されています。」
事業部は新しい業務を追加でやりたくない。
法務部はこれまでやってきた自分の仕事の価値を否定されたくない。
利害が一致してしまいます。
しかし、契約書は事業において社外との取引をまとめた書面です。
ビジネスの内容そのものです。
法務部というよりも、事業部の担当者がきちんと理解しておかなければなりません。
法律も、法務部だけが知っておけばよいものではありません。
やさしい法務部は、そうした現実を無視し、自分たちの満足感だけを優先してしまうことがあります。
「頭のいいエリートの私が、至らない事業部さんたちの問題を解決してあげているのだ」
こういう気分になりやすい。
みんなの人気者を意識してあれこれやってあげる法務部員は、自分の仕事にやりがいを感じるかもしれません。
しかし、「自分は良い仕事をしている」という自己満足と、その仕事が組織にとって本当に良いかどうかは別です。
能天気に「自分はみんなの役に立っている」と感じられればよい人は、人気者法務部を目指せばよいと思います。
私はあまり目指したくありません。
3 法務部はなぜ偉そうに見えるのか
法務部の罪は、法務部以外の人たちの法律無関心化を進めてしまうことです。
これは罪深い。
それでいて、なぜか偉そうです。
(1) 発想が自己中心的である
法務部が法律問題の他人事化を進めてしまうのは、法務問題についての発想が自己中心的だからです。
- 契約書は法務部がやるべき業務だろう
- 法律問題は法務部がやって当然
- 法務部だからこの手続きに入るべき
こういう発想です。
「法務部だから」という、理由にならない理由を使います。
そもそも法務部とはこういうことをやるべきだ、という思い込みに基づいて、業務のあり方や法務部の役割を決めてしまいます。
上記の書籍は、「法務部員とは」という常識がよく現れた書籍です。
以下が目次ですが、見事に「法務部とは、こういう業務をするものである」という思い込みが凝縮されています。
第1章 法務部の1年
1 法務部の仕事 -日常業務は堅実に、揉め事あれば迅速に
2 法務部の仕事の理念 -「法律の地雷」を踏ませない
3 法務部員が持つべき力 -法務部員は常識人であれ!第2章 法務部の4~6月
1 4~6月の主な仕事 -年度はじめ早々にやってくる繁忙期
2 新法への対応 -4月は新法の施行時期
3 決算・株主総会 -会社法にきちんと従う
4 取締役・取締役会 -株主総会後の重要な業務
5 監査役 -職務を理解し協力する
6 株式 -出資者との関係を法的に処理
「法務部ってこういう仕事をするところだよね」という思い込みを帰納的に集めたらこうなった、という感じの内容です。
もちろん、こうした実務を理解すること自体は重要です。
ただ、それを「法務部の仕事だから」と無批判に広げていくと、法務部のための法務部になります。
会社のための法務部ではなくなります。
(2) 自己の売り込みに使いやすい
「法務はこういう仕事をするべきだ」という発想は、弁護士や法務部員が自分を売り込むのに都合がいい。
弁護士は、そうやって顧客から仕事を取ります。
「私に任せてください」
社内で評価を高めたい法務部も、積極的にそうした常識を使います。
「これは法務部の役割です」
「法務がもっと前に出るべきです」
「法務のプレゼンスを高めるべきです」
本来、誰がやるべきかは案件ごとに考えるべきです。
しかし、自分の売り込みが優先されると、法務部が関与する理由を後から作り始めます。
これは会社にとっては迷惑です。
(3) 無駄を増やす
契約書を事業部が自ら読めば、法務部に回さなくても済む案件はあります。
しかし、法務部の契約書レビューを経るとなれば、法務部レビューの社内手続きが増えます。
契約書に限りません。
社内決裁、広告確認、規程確認、研修、稟議、社内相談。
法務部が関係者として加わるほど、手間が増えます。
関係者が増えれば、時間もかかります。
その余計な手続き、本当に必要ですか。
必要なのは、必要だと思い込んでいるからではないんですかね。
(4) コストがかかる
法務部を置けばコストがかかります。
法務部員の人件費が当然かかります。
給料以外にも、あれこれかかります。
- 商事法務を読みたい
- AI契約書レビューを使ってみたい
- セミナーに行きたい
- 海外ロースクールに留学したい
- 外部法律事務所に相談したい
もちろん、必要な投資もあります。
ただ、法務部員と外部法律事務所の距離が近くなると、報酬交渉もろくにせず、外部法律事務所の費用がかえって高くなることもあります。
「外部弁護士先生様に失礼があってはならない」
こういう謎の遠慮が働くことがあります。
さらに、法務部が社内で発生させる部署間の調整手続きもまたコストです。
目に見える人件費だけがコストではありません。
(5) コストの見返りはあるのか
法務部にコストがかかるのはしょうがない。
どの部署だってコストはかかっています。
問題なのは、かけたコストの見返りがあるかです。
法務部が会社全体の法律感度を上げているなら、価値があります。
事業部が自分でリスクを考えられるようにしているなら、価値があります。
経営判断の質を上げているなら、価値があります。
しかし、法務部以外の人たちの無責任化を推し進める法務部は、かえって害なのではないかと考えてしまいます。
4 困った法務部員
問題は法務部という部署だけではありません。
法務部に所属する法務部員にも、問題が隠れています。
(1) 意識高い系の困ったエリート法務部員
法律系のキャリアに関するメディアのインタビューなどで、積極的に発信するタイプの法務部員がいます。
法律を知っているだけではダメ。
事業を深く理解してビジネスセンスを磨く必要がある。
法務は会社に欠かせない役割を担っている。
これから法務の役割は日本でますます重要になる。
こういうことを語ります。
CLOとかよく分からない役職について、法務とは何かを熱く語る。
エリートである自分が、後輩法務にキャリアパスを示してあげようとする。
極めて自己中心的です。
このタイプの人たちは、「私は優秀」と思い込みたい願望が強い。
その願望を補強するために、いかに法務が重要かを論証する材料集めに余念がありません。
自己否定になるような法務不要論は、無視するか、全力で潰しにかかります。
こういう人が増えるほど、法務部は肥大化します。
法務の仕事が本当に会社のためになっているのかではなく、法務部の存在感を高めることが目的になります。
かなり危ない。
(2) 勉強に余念がない法務君
お勉強が好きな法務部員もいます。
お気に入りの学者の新しい基本書が出ると思うとテンションが上がる。
判例、論文、セミナー、法改正、専門書。
そういうものが好きなタイプです。
勉強すること自体はよいです。
法務部員が不勉強なのは困ります。
ただ、この人たちは、自分の勉強が会社に役立つと信じすぎることがあります。
自分の世界に浸り、自分の仕事が組織の中でどのような役割を果たしているかは見えていない。
法律の知識が増えることと、会社に価値を出すことは別です。
知識があるのに価値を出せない法務部員は普通にいます。
知識は必要条件かもしれません。
でも、それだけでは足りません。
(3) 知識はないが勉強もしない法務部員
大企業の法務部に新卒で入社したタイプの法務部員で多く見られます。
新卒で法務部に入った。
法学部出身だとしても、実務知識はほぼない。
では、勉強するか。
仕事が忙しいので勉強する時間はない。
その忙しい仕事というのは、たいてい雑用です。
会社内で本来必要もないのに、その部、その人が存在するので発生する無駄な作業をやって日々を過ごしている。
でも、法務部といういかにも法律ができそうな部署にいる。
他部署からは専門性があると言われる。
自分でも専門家だと思うようになる。
傲慢無能大企業社員はこうやって養成されます。
また、1人法務の会社でも問題が生じます。
その1人法務部員の法務スキルが乏しいとしても、誰もチェックする人はいません。
その会社の法務問題を独占し、自分の思うがままに「こうすべきだ」と判断します。
これは危ない。
法律問題の調査の仕方、文書作成方法、問題への対処法について誰からも教わる機会がない。
それなのに、社内では法律問題について指導する身になってしまう。
自分のやりたいとおり頑張って忙しくしていると、「自分はできる」「有能だ」「役に立っている」という勘違いが止まらなくなります。
会社法務部はこれがこわい。
だから私は、司法修習生には、最初から会社に入るより、まず法律事務所に入ることを勧めています。
5 価値のある法務部とは
普通の法務部は価値がないのではないか。
なぜなら、会社内で法律問題を法務部が独占してしまい、法律問題の他人事化を生じさせてしまうからです。
これが典型的な法務部の問題点です。
こうした問題意識を持つと、法務部の仕事をつまらないと感じるのも無理はありません。
自分のやっている日々の仕事は意味がない。
こう感じながら毎日長時間事務作業に明け暮れて、楽しいわけがありません。
(1) 会社内で法律問題を自分事化できる法務部
それでは、どうすれば法務部は会社内で価値ある存在となれるのでしょうか。
会社内で「法律問題の自分事化」をはかることができれば、その法務部には価値があるのではないでしょうか。
法務部がない会社が「法務部を設置しよう」と思うのは、会社が法律問題に対処したいと考えているからです。
その設置意図にかなえば、価値があります。
よくある法務部は、法務部が社内の法律問題を独占してしまい、法務部以外の無関心化を進めます。
その結果、かえって会社全体の法律問題対応レベルが下がるおそれがあります。
そうではなく、会社全体の法律問題対応レベルを上げればよい。
「法律問題は法務部がなんとかする」という意識ではない。
「法律問題は会社の問題であり、これに関与している自分が責任をもって取り組まねばならない」という意識を社員に広く持たせる。
そういう法務部には価値があります。
魚を釣ってあげる法務部ではなく、各自が魚を釣れるような状態を作る法務部の方がよい。
魚釣りを教えてもいい。
ただし、法務部が毎回教えるのではなく、各部署内で自発的に上司や先輩が部下や後輩に魚釣りを教えるような会社であればもっとよい。
そうした社内環境を設計し、日々その環境が継続・強化されるように目を光らせる。
こうした会社内のコンプライアンス環境を作り上げて維持する方が、会社の法律問題対応レベルは間違いなく高くなるはずです。
こんな体制や環境を作れる法務パーソンは、一法務部員としてではなく、経営レベルで高い価値があります。
会社全体に波及する仕事をやっているからです。
(2) 多数派法務部員の常識のせいで価値創造が進まない
しかし、上記のような価値ある法務パーソンが出てくる可能性は低いように思います。
まず、「法務部とはこうあるべきだ」という常識が極めて強い。
リーガルが強い会社の方が、法務部はあれこれ権限を持っていることもあります。
私の考える「価値ある法務部」とは逆の価値観です。
「法務のプレゼンスはもっと高くなるべきだ」と主張する意識高い系法務人材が、これから法律問題独占型法務部を強化し続けていくはずです。
その結果、法務部の見せかけの価値は上がりそうです。
しかし、法務機能が肥大化すれば、法務部の現実的なコスパは下がると思います。
真面目で良心的な法務部員は、やりがいを感じなくなってしまっても無理はありません。
ただ、残念ながら、私の考える「価値ある法務部モデル」は受け入れられにくいでしょう。
法務部ではない経営陣に、その価値を理解してもらいにくいからです。
自分で動かず、汗をかかず、法務部以外に法律問題へ自ら対処させる。
そして「これがあるべき姿です」と経営陣に説明する。
そういう法務部長が会社内で評価されるのは難しい。
「評価される」「高い給料をもらえる」には、見せかけの方が重要だからです。
こう思うと、法務の仕事ってむなしいなと思えてきます。
やりがいのある法務部はどこかにあるのだろうか。
6 今の法務部がつまらないと感じるなら、環境を疑った方がよい
惰性で日々の契約書を見る。
価値のあまりない社内手続きを回す。
事業部に雑に投げられた相談を処理する。
その繰り返しだけの法務部に入ってしまい、それが嫌ならどうすべきか。
「ぬるま湯でいいわ」という人はそれでよいです。
そうでなく、退屈な環境が嫌な人もいます。
そんな無意味法務部が嫌な人は、その場に留まって改革するか、出ていくしかありません。
改革は難しい。
成功する法務部改革を想像することができません。
私ならとっとと出ていきます。
出ていくとした場合、社内で異動するか、社外に転職するかです。
転職が嫌で、今の会社がよく、やりたい仕事があるなら社内異動を狙った方がよい。
しかし、会社に強い愛着がなく、法務以外にスキルがないなら、転職を狙うほかありません。
「今の法務部、かなりつまらない」と思うなら、転職を検討する価値はあります。
私は国内大企業法務部を辞めて転職してよかったです。
低スキルな法務部員が「私たちは専門家です」と偉そうにしている環境が耐えられなかったからです。
働く法務部の環境は転職で選べます。
たとえば、外資系企業なら1人法務部があります。
1人なら、法務部の仕事を自分で決められます。
他部署との調整という大変な仕事はありますが、法務部内の常識というものは存在しません。
法務部の雰囲気は会社によってかなり違います。
- 国内企業か、外資系企業か
- 法務部は何人くらいか
- 1人法務か、チーム法務か
- 外部法律事務所をどの程度使うか
- 契約レビュー中心か、M&Aや新規事業にも関われるか
- 経営に近いか、事務処理部署に近いか
- 事業部に口を出せるか、単なる下請けか
こうした要素を見ていくと、自社との違いが見えてきます。
つまらない法務部が嫌なら、いきなり辞めなくてもよいです。
まずは外の求人を見て、自分の経験がどう評価されるかを確認すればよい。
転職するかどうかは、その後に決めれば足ります。
7 法務部員が転職を考えてよいサイン
法務部がつまらないと感じても、全員が転職すべきとは思いません。
転職しない方がよい場合もあります。
給料が高い。
労働時間が短い。
人間関係が悪くない。
今の会社で別の仕事に移れる可能性がある。
こういう場合は、無理に転職する必要はありません。
ただし、次のような状態なら、外を見た方がよいです。
- 契約書レビューだけで成長している感覚がない
- 事業部からの雑な相談処理ばかりで疲れている
- 上司や先輩法務部員のレベルが低い
- 法務部内の謎ルールにうんざりしている
- 外資法務、1人法務、事業寄り法務に興味がある
- 法務の仕事は好きだが、今の会社の法務部が嫌い
- 弁護士資格や英語力を活かせていない
- 将来の市場価値が下がりそうで不安
この場合、問題は法務という仕事ではなく、今いる法務部かもしれません。
法務部の役割は会社によってかなり違います。
つまらない法務部にいると、法務そのものがつまらないように見えます。
でも、外に出ると違う法務があります。
法律事務所に近い法務。
事業部に近い法務。
経営に近い法務。
外資で英語を使う法務。
M&Aや新規事業に関わる法務。
いろいろあります。
今の法務部だけを見て、法務キャリア全体を判断するのは少しもったいないです。
8 法務転職で最初に見るべき導線
法務部員が転職を考えるときは、求人サイトを適当に眺めるだけでは足りません。
法務職は、読者属性によって見るべきサービスが変わります。
非弁護士の企業法務部員、弁護士資格者、外資志向、管理部門寄り、1人法務志向では、使うべき導線が違います。
雑に高単価案件へ送るのはよくありません。
自分の属性に合うところから見た方がよいです。
| 読者の状況 | 最初に見る記事 | 理由 |
|---|---|---|
| 企業法務部員 | 法務転職に強い転職エージェント比較 | MS-Japan、JAC、NO-LIMITなどを読者属性別に比較できる |
| 弁護士資格者 | 弁護士転職エージェント比較 | 弁護士向け求人、法律事務所、インハウス転職を分けて見られる |
| 外資・ハイクラス法務に興味がある | ビズリーチで市場価値を確認する方法 | 今すぐ転職しなくても、スカウトや求人傾向を見やすい |
| すぐ転職する気はない | ゆっくり転職活動する方法 | 焦って応募せず、求人と市場価値だけ確認できる |
法務転職では、いきなり応募する必要はありません。
まずは求人の傾向を見る。
自分の職務経歴がどの会社に刺さるかを見る。
今の法務部に残る価値があるかを外部の求人と比較する。
それで十分です。
「今すぐ転職しろ」という話ではありません。
ただ、外を見ないまま、今の会社の法務部だけで悩み続けるのは効率が悪い。
自分の市場価値を知らないまま、つまらない法務部に残り続ける必要はありません。
9 まとめ:つまらない法務部にいるなら、まず外を見た方がよい
法務部は、外から見るとエリートっぽい部署です。
しかし、実態はかなり泥くさい。
契約書レビュー、社内調整、事業部からの雑な相談、経営からの無茶振り、外部法律事務所との調整。
そして何より、法務部があることで、会社全体の法律問題が法務部だけのものになってしまう危険があります。
法律問題は、本来会社全体のものです。
契約も、法務部だけのものではありません。
法務部が魚を釣ってあげ続けると、事業部は魚を釣れなくなります。
法務部が人気者になるほど、会社全体の法律感度が下がることもあります。
価値ある法務部とは、法律問題を独占する部署ではありません。
会社全体に法律問題を自分事化させる部署です。
そういう法務部で働けるなら、面白いと思います。
しかし、現実には、法務部の常識や社内政治に埋もれて、退屈な事務処理部署になっていることも多い。
今の法務部がつまらないなら、まず環境を疑った方がよいです。
法務という仕事がつまらないのではなく、今いる法務部がつまらないだけかもしれません。
つまらない法務部にいるなら、いきなり辞めなくてもよい。
まずは外の求人を見て、自分の法務経験がどう評価されるか確認すればよいです。
転職するか、現職に残るかは、その後に決めれば足ります。

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