弁護士がインハウスに転職するならこんな会社がいい

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「もう法律事務所はいやだ…」

そう思ってインハウスに転向しようとしている弁護士。

インハウスならどこだってよいわけではありません。

四大出身者だらけの法務部で、四大からやってきたクソ細かいことばかり指摘してくる上司なんかマジ最悪

 ー四大法律事務所出身のインハウスローヤー談

その会社の法務部の人員構成のパターンによって転職後の職場環境がどうなるかは、転職する前に考えるべきです。

目次

1 弁護士有資格者しか入れない法務部

応募要件として、「弁護士資格要」となっている法務部はたまにあります。

外資系であったり、ハイポジションだったり、部員がほとんど弁護士であったりするところがそうなっています。

こうした法務部では弁護士資格は当然必要です。

弁護士資格のある人は、こうした法務部に行きたいかを考えなければなりません。

メリットは、まず、弁護士資格が特別なものとその組織で認識されているということです。これはけっこう重要です。

また、他の人たちは有資格者ですので、法的議論ができます。杓子定規に言ってしまえば、無資格者の方が法務知識レベルが低く、あまり議論ができません。話のレベルが合うか合わないかもなかなか大切です。

デメリットは、意を決して法律事務所を辞めるのに、法律事務所っぽい環境にまた突入することになることです。細かいことにうるさいヤメ弁先輩や上司からネチネチ法律論についてとやかく言われなくないでしょう。

もっとも、企業内弁護士がたくさんいる会社が法律事務所のようにワークライフバランスが崩れたりしているところは私は聞いたことがありません。その点はあまり考えなくてもいいのかもしれません。

2 弁護士有資格者に事実上占拠されている法務部

有資格者をどんどん採用してそれが多数派を占めるに至った法務部には、私が無資格者なら行きたくありません。「どうせ私は弁護士じゃないですよ」といじけてしまいそうです。

このいじけ精神に共感する方は、大企業法務部に転職しようとする場合、そこの弁護士数が現在どうなっているかだけでなく、弁護士数の伸びも確認した方がいいでしょう。転職してから猛烈な勢いで弁護士が採用されて無資格者が少数派になってしまった、という状況はあまり楽しくなさそうです。

弁護士有資格者はこの類型は前記1と同じようにメリットデメリットを判断すべきでしょう。

3 弁護士有資格者が少数派な法務部

このパターンが一番多いと考えられます。このパターンの企業法務部への転職の場合、弁護士有資格者はどのようなことを考えるべきでしょうか。

(1) 弁護士資格は不要

慶應義塾大学法科大学院の奥邨弘司教授の「数字で見る組織内弁護士」(法律のひろば2019年6月号)の記事がちょうどよいインハウス弁護士の特集になっていますので、これを引用しながら考えていきます。

企業内法務関係者は、しばしば「企業内法務での業務に弁護士資格の有無は関係ありません」と発言する。

多くの日系大企業の法務部では、この説明のとおり、資格は全く必要とされていません。弁護士登録費用は支払ってもらえたりもらえなかったりで、特別手当が出ることもあまり聞きませんし、出世やポジションで優遇されることもありません。

普通の従業員です。

有資格者として力を発揮する機会もなければ期待もされません。専門家としての働きが期待されるのは社内弁護士ではなく外部法律事務所の方です。

それについて奥邨教授は次のようにコメントします。

この発言の趣旨は、先にみたように、弁護士資格がなければできない業務(=訴訟代理)はさせていない、ということに尽きるのである

担当授業の受講生には「企業内法務での業務に弁護士資格の有無は関係ありません」という発言の趣旨は、企業内法務での業務として、弁護士資格がなければできない訴訟代理などの業務を企業内弁護士に担当させるつもりはありません。では、有資格者をなぜ採用するのか。それは、皆さんが有する高い専門能力や法的素養に期待しているからであり、それを活かしてもらうことで我が社の経営に大いに貢献してくれるはずと考えています。」と解釈すべきである―そうでなければ、企業が積極的に企業内弁護士を採用するはずがない―と解説するようにしている

このコメントの考えには反対です。企業の人は訴訟代理という小さなことを指しているのではないはずです。

企業は、専門能力や法的素養には期待していますが、どうしても有資格者が欲しいとまでは考えていないはずです。 

残念ながら、企業内法務を目指す法科大学院生(そして、多分若手弁護士)の多くは、この言葉を文字通り受け止めているというか、もっと端的に言えば、弁護士資格を有していてもなんら評価されないのだ、と受け止めてしまっているように思う。……学生たちの顔に失望の色が浮かぶのを、何度も間近で見てきた。

この率直な受け止め方は間違ってないと思います。

企業によっては、「弁護士資格を有していてもなんら評価されない」というのは普通にあります。

転職エージェントに聞いたところでは、弁護士資格があるのに無資格者と違いなく評価されることに不満を持って他社への転職を考えるインハウスローヤーはけっこういるそうです。

私の知り合い弁護士も、財閥系商社法務部の雰囲気に不満を持って外資系企業に転職しました。 

単に法学部を出ただけ、特に勉強もしていない、法律問題は外部の法律事務所に丸投げするだけ、の10年選手法務部員と有資格者は評価が同じなのです。

司法試験合格、司法修習、法律事務所勤務と苦節を経て会社法務部に至って高い法実務処理能力がある弁護士であっても、知識の乏しいプロパー社員と社内では評価が変わらないのです。

なぜそんな不合理な評価がなされるのか。法務部だから法務の実力が評価されるのではないか。そう疑問に思うのも無理はありません。

しかし、なぜそのような評価になるかといえば、こうした法務部には法務処理能力が評価対象に入ってないのです。そう、「年功序列」の企業の法務部では、資格も実力も関係ありません。

そういう評価尺度だからしょうがない。

また、法務に明るくない人が、高い能力を持った法務部員を適切に評価できるかは疑問です。

(2) 弁護士少数派法務部に行くべきか否か

「弁護士資格を尊重してもらいたい。私は法律の専門家として企業内に行くのだ。」という人は、この弁護士資格がある人が少数しかおらず、無資格者が多い法務部への転職は慎重になるべきです。

単に「高い専門能力を期待してます」と企業側に説明されるだけでは不十分です。

特別な手当があるのか、給与水準は同世代よりも高いものを設定してもらえるのか、将来のキャリアパスはどうなっているのか、という点を質問すべきです。

可能であれば事前に転職エージェントに確認しておくべきです。

「弁護士資格の特別な尊重はなくてもいい。周りが法律知識の乏しい人ばかりで気が楽だ。弁護士が少ないところに行って猿山のボスになれれば楽でいいや」と考える人は、こうした企業に行くのは気楽でいいと思います。

また、「もう弁護士や法律事務所は懲り懲りだ」という人もぜひこうした法務部を目指しましょう。

(3) 弁護士資格は社内では役に立たないがあった方がいい

弁護士を給料、ポジション、評価で優遇する体制のない会社であっても、資格はそれ以外で事実上役に立ちます。

まず、「いつでも辞められる」「嫌なら転職すればいい」と思うことができます。

また、なんだかんだで事業部の人と仕事をするときは弁護士であることは重宝してもらえます。その人のキャラクターによりますが、弁護士資格は使い勝手のよい信頼してもらうための武器になります。

ただ、現に弁護士名簿に登録されているかはそんなに重要ではないと思います。「元弁護士」でもOK。

4 自分にとって弁護士資格がどれほど大事か

弁護士が会社に転職しようとする場合、自分が弁護士であることをどれほど重視しているのか、どう評価してほしいのか正直に考えるべきです。

完全に無視されるとさすがに悲しくなるはずです。どの程度悲しいのかが重要です。

その程度と、応募先企業の考え・評価を照らし合わせて転職先を決定すべきです。ミスマッチ防止のためにこの判断方法は少し役に立つと思います。 

企業内で弁護士資格の評価がどんな感じであるかは、転職エージェントに聞いてみましょう。以下のように、法務専門で、企業側と直接やりとりしているエージェントがいいでしょう。

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