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転職先の選び方を最新心理学から考えてみた

転職先の選び方

最適な転職先をどのように選んだらいいのかをノーベル賞受賞者の見識からポイントを抽出した

  • 自分は一体何がしたいのか
  • どのような職場に言ったらいいのか

禅問答のような答えのない質問です。

 

これに答えるべく、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンの知見から最適かつ実践的な転職先選びを紹介します。

ダニエル・カーネマン

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 上・上』(早川書房、2012年11月)

ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?  文庫 (上)(下)セット

本記事はこの著作をベースにしました。

 

「アダム・スミスやフロイトの著作に匹敵する来たる世紀の新たな古典である」
―ナシーム・タレブ(『ブラック・スワン』著者)


「コペルニクスが宇宙の中心から地球を放り出し、ダーウィンが人類の神の御業でないと示したのと同じくらいの重要性で、カーネマンは人間がこれまで考えられてきたほど合理的でないと明かしたのだ」
―《エコノミスト》誌

 

(2020年2月14日改訂)

1 転職先は直感で選ばずによく考えよ

次のような転職先の選び方をしていませんか?

  • 「何となく面白そう」
  • 「考えるな。感じろ」

こういう決め方はしてはいけません。

あなたが直感系の人でもよく考えた方がいい。

 

(1) 人は安易な思い込みを根拠なく優先させる

なんでかというと、人はよく考えるのが苦手で、すぐに答えがでる考えを優先しがちだからです。

そのため、「一度これだ!」と思うと、「悪くないスト―リー」を瞬時に作り出してしまいます。

(人の思考は)いちばんもっともらしく見えるストーリーにうまくはまる考えや情報だけを呼び出す仕組みになっている。
「見たものがすべて」なので、自分の知らないことはないものとし、簡単に自信過剰になってしまう。


人は簡単に答を出すのですが、その答は実は答になっていないのかもしれません。

問題が難しすぎて、スキルを総動員してもよい解決が思い浮かばないときにも、直感は働く。そしてすぐに答えを出してくるが、しかしそれは、もともとの問題に対する答ではない。あの投資責任者が直面した問題、すなわち「私はフォード株を買うべきか」は難しい。だが、もとの問題と関係はあるがより簡単な質問「私はフォードのクルマが好きか」になら、すぐに答は出せる。そしてこの答が選択を決めた。これが、近道探しをする直感的なヒューリスティクスの本質である。困難な問題に直面したとき、私たちはしばしばより簡単な問題に答えてすます。しかも問題を置き換えたことに、たいていは気づいていない(上・23ページ)。

人は、問題が難しいと、頭の中で勝手に簡単な問題にすり替えてしまうのです。

 

つまり、「この内定先に転職すべきか」という問題が難しいと、「この内定先の面接官は好きか」という問題に置き換えてしまうのです。

そうすると「感じが良かった」ということになり、「内定先に転職すべき」という問いへの答えが出たと思ってしまう。


なんでそんな簡単に直感に頼るのか。

問題の置き換えを「ヒューリスティック」といいます。人はこのヒューリスティックに頼って思考の省エネを図ろうとするのです。

「難しい質問に対してすぐには満足な答が出せないとき、システム1はもとの質問に関連する簡単な質問を見つけて、それに答え」るという操作をします。

ここで言う「システム1」とは、瞬間的に答えを出す人の思考システムと考えてください。

もう一つの思考システムは「システム2」です。これは、時間をかけて熟慮する思考システムです。


(2) 直感には根拠がない

「直感」は自分に素直な、意味のある決め方ではないのか。

納得して自信を持って決めた転職先ならいいのではないのか。

そんな「思い込み」があるかもしれません。

 

しかし、単なる直感であって理由がなければよい選び方ではありません。

人々が自分の直感に対して抱く自信は、その妥当性の有効な指標とはなり得ない


言い換えれば、自分の判断は信頼に値すると熱心に説く輩は、自分も含めて絶対に信用するな、ということだ。


自分の思い込みを信じてはいけない、ということです。


(3) 直感を信じていい場合

しかし、信じていい場合もある。

どういう場合でしょう。

主観的な自信は信用できないとしたら、直感的な判断のもっともらしい妥当性をどうやって評価すべきだろうか。

 

答は以下のとおり。 

答は、スキル習得の2つの基本条件から導き出すことができる。

①十分に予見可能な規則性を備えた環境であること。
②長期間にわたる訓練を通じてそうした規則性を学ぶ機会があること。

 
上記2つの条件が満たせる場合に限って、直感は機能する可能性があるということです。

どういう場合が当てはまるのか。

カーネマンはチェスを具体例としてあげています。

また、以下の職業も秩序がある環境に置かれているといいます。

  • 医師
  • 看護師
  • 運動選手
  • 消防士

 

他方で、規則性のない環境に置かれている職業の具体例は以下のとおり。

  • ファンドマネジャー
  • 政治評論家

この人達の直感は当たらないということです。


(4) 転職先選びは「直感」が機能する条件を満たさない

転職先選びは、チェスのように「十分に予見可能な規則性を備えた環境」といえるでしょうか。

言えないでしょう。

人によって置かれた状況が全く違いますし、業界、業種、職種、会社、具体的条件、場所、時代等あまりに多くの要素が複雑に絡み合っています。

 

ダニエル・カーネマンの教えを引用します。

予測不能な状況で直感は当たらない


転職先選びは、「予測不能な状況」であり、直感は当たらないのです。


当たらないものに頼ってはいけません。


直感で職場を選ぶのは、異性と出会って少し話して気が合ったからといって2,3日で結婚するようなものです。

それでも幸せになれるかもしれません。

しかし、そんな選び方したいですか?

 

2 転職先選びは杓子定規に機械的に決めた方がいい

「直感で選べないとしたら、面接でよ~くチェックだ」

この考えも危険です。

面接で人はわかりませんし、応募者であれば面接だけで応募先がどんな職場かは判断できません。

 

(1) 面接官がよければいいというものではない

面接官の印象が良いと、その会社が全てがいいと思えてくるのです。

ハロー効果にやられているからです。

もしあなたが大統領の政治手法を好ましく思っているとしたら、大統領の容姿や声も好きである可能性が高い。
このように、ある人のすべてを、自分の目で確かめてもいないことまで含めて好ましく思う(または全部を嫌いになる)傾向は、ハロー効果(Halo effect)として知られる。後光効果とも言う。


人である以上、自分がこういう不合理な思考様式を持っていることを理解しなければなりません。

 

(2) 熟練の面接官でも人材評価はできない

応募者だけでなく、面接官も安易に人を判断しようとしてしまいます。

しかし、うまくいきません。

考えるべきなのは、この応募者が仕事で能力を発揮できるか、ということだ。しかしわれわれは、彼女が面接で好印象を与えたか、という質問に答えようとしているように見える(上・153ページ)。

面接では、感情ヒューリスティックが働き、置き換えが生じてしまい、適切な人を採用できないのです。そして、自分でそれに気づいていない。

 

勝手に置き換えてはいけない


また、カーネマンは、一般的な面接方式では適切な判断ができないと指摘します。

たとえばメディカルスクールの入学試験では、教授陣が受験生と面接した後に合議により最終合格者を決める方式が多い。まだ断片的なデータしか集まっていないが、次のことは確実に言える。面接を実施して面接官が最終決定を下すやり方は、選抜の精度を下げる可能性が高いということである。というのも面接官は自分の直感に過剰な自信を持ち、印象を過大に重視してその他の情報を不当に軽視し、その結果として予測の妥当性を押し下げるからだ

通常行われる面接なんてこんなものなのです。


日本の転職本でも同じような説明がされています。

悲しいかな面接官には面接に無知な人が多く、あまり深く考えずに転職理由だの志望理由だのを聞いてしまう。そしてそのやり取りで何をしているかといえば、対話の奥の本質をとらえようとするのではなく、話の筋の通らないところを見つけては執拗に掘り下げるのです。その結果、対話の中身そのものより、そのときの説明の仕方や話し方などを見て直感で評価してしまい、「やはり第一印象が大事」などとなるのです(細井智彦『転職面接突破法―10万人が受講した究極メソッド』(高橋書店、2011年8月)4ページ)

 

カーネマンもこう言います。

現在の面接(注 「15~20分程度で、……総合的な印象を形成するために、できるだけいろいろなことを話題にするよう指示されていた」)が失敗した原因の少なくとも一部は、面接官が自分に最も興味のある話題を取り上げて、相手の内面生活を知ろうとする点にある(上・333ページ)

 

(3) 応募者もまた職場の評価をするのは難しい

しょっちゅう採用をやっている面接官ですら大した意味のない面接を重視して第一印象で決めています。

本業で忙しい転職希望者が面接で職場を直感で判定しようというのは極めて困難です。

 

3 転職先選びの基準(オリジナル通信簿)を作れ

じゃあどうやって決めたらいいのか。

(1) カーネマンが勧める採用法

「採用する側」はこうやって採用したらいい、というカーネマン・メソッドが紹介されています。

応募者による会社の選び方の基準はこれを応用するので落ち着いて読んでください

 

たとえば、あなたの会社でセールスマンを採用するとします。

 

その場合にすべきことはこうです。

 

①まず、「この仕事で必須の適性(技術的な理解力、社交性、信頼性など)をいくつか決める」。しかし、あれこれとたくさん項目を作るのではなく、「六項目がちょうどよい」。

 

そして、この適性は、「できるだけ互いに独立したもの」にしましょう。いくつかの事実確認質問によって、その特性を洗い出せるものが望ましいです。

 

②次に、「各項目について質問リストを作成し、採点方式を考え」ましょう。

5段階や、「その傾向が強い、弱い」という評価方式でも問題ありません。

 

この①と②を30分程度準備するだけで、「採用する人材のクオリティは大幅に向上するはずだ」とカーネマンはいいます。

 

30分かけるだけでいいのか。

これでそんなに効果が上がるとは。

 

次に実施方法についてのカーネマンの説明。

ハロー効果を防ぐために、面接官には項目ごとに、つまり次の質問に進む前に評価させる。また、質問を飛ばしてはいけない。

なるほど。面接官は、ある項目の質問を終えた時点でその項目についての点数をつけるわけですね。ある質問に対する受け答えで好印象を持って他の質問への回答について高く評価したりすることを避けるためです。

 

応募者の最終評価は、各項目の採点を合計して行う。……合計点が最も高い応募者を採用すること。この点は、強く心に決めなければならない。ほかに気に入った応募者がいても、そちらを選んではいけない。順位を変えたくなる誘惑に、断固抵抗しなければいけないのである。

ここも重要。

機械的に点数を合計して評価する。主観を交えて総合評価をしてはいけません。

 

面接官の総合評価をもって最終決定とすべきではない。

ミールの本(※カーネマンが感銘を受けた本)は、そのような評価は信頼に値せず、個別に評価された属性を統計的に統合するほうが信頼性が高い、と示唆していた。


(2) 転職先選びの方法を作る

ダニエル・カーネマンの採用法をベースにして「転職先の選び方」を作成しましょう。

 

① 転職先に求める項目を6項目を決める

どんなのがあるでしょうか。

  • 待遇
  • 業務内容
  • 対人関係
  • ポジション・職位
  • 場所
  • 多忙さ
  • 裁量の広さ

こんな感じでしょうか。
それぞれが独立した項目であるのが望ましい。


② 採点方式・評価方法を決める

6項目を選び、それぞれ5段階で評価する方式としてみました。

 

▼こんな感じ

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6項目の中でも重視したいものとそうでもないものもある、と考えて、

①~③の項目はそれぞれ2倍、

④と⑤は1.5倍としてみました。

その結果、このモデルケースの応募先企業の点数は37.5点でした。


③ 評価

複数の応募先ごとにこの点数を付けます。

総合点が高いものを選びます。

 

4 転職先選定の基準作りは難しいので良い転職エージェントに相談できるとよい

なんで上記3のような採点基準を作るか。

それは、人の思い込みや直感によるそそっかしい決定を避けるためです。

 

ただ、3の選び方だと「基準」をしっかり作れるかが大事になります。

転職の本を読んだり、人に相談したりするべきです。基準作りに協力してもらいましょう。

そして、信頼できる転職エージェントに相談しましょう。

転職エージェントに相談に行く際には、自分で一応の基準表を作って持っていきましょう。その方が話が早いです。

自分がどういう考えで基準表を作っているか話してエージェントに理解してもらうべきです。

よいエージェントなら理解してくれ、その基準表の改訂に協力してくれるはずです。

また、基準表の採点にもよいアドバイスをくれるでしょう。

 

*****

 

いかがでしたでしょうか。

行動経済学という興味深い学問の知見に基づいて「ノーベル賞クラス」の転職先選びの方法を紹介してみました。

世の中でよく見聞きする「私の転職はこうやった」とは一味違った内容になっていると思います。

この転職先選びは、実践にそれほど時間はかかりません。

理解することが大事です。

理解したら、実践してみてください。


▼相談相手となる転職エージェント選びの参考記事 

www.career-rule.com