管理部門・バックオフィスはいらない?その転職市場価値とは

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売上を生み出さない管理部門(人事、経理、総務、法務等)は価値の低い劣後部署であり、突き詰めればいらない部署なのか。

その役割はどんなところにあるのでしょうか。

ある大企業の社長が、人事畑出身の役員(人事部長)についてこう言っていました。

「人事屋だろ?ビジネスのことわからないだろ」

管理部門人材には価値がなく、高給は望めないのでしょうか。

そんなことはない。

人類は分業を発達させることによって生産性を高めてきたのであり、売上に直結しない管理部門も全体の生産性を高める価値がある。

というのが本記事です。

目次

1 管理部門は価値がないのか

損益だけで見れば管理部門はコストしかかかりません。

売上を生み出さないコストセンターです。

数字だけを見ると、管理部門をすべて消し去れば人件費や場所代等の様々な費用が減ります。

そして、管理部門を消しても、管理部門は売上を持っていないため、計算上は売上は減らない。一気に利益率がよくなります。

管理部門は、利益を悪くするだけの部門に見えます。

2 「役立たず」の仕事が生産性を高める

「管理部門は無価値」というのは短絡的な見方です。

経済学の父アダム・スミスは分業によって人類は生産性を高めてきたと説いています。

(1) 分業は生産性を高める

労働の生産性が飛躍的に向上してきたのは分業の結果だし、各分野の労働で使われる技能や技術もかなりの部分、分業の結果、得られたものだと思える

(アダム・スミス、山岡洋一訳『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)』(日本経済新聞出版社、2007年3月)7ページ)

アダム・スミスはこうも言います。

みんなが有益な仕事に着く社会は生産性が低い。

狩猟社会では全員が狩猟という役に立つ仕事をしているが、生産性は極めて低く、文明社会として発展しませんでした。

その後、文明が発達して分業が進んで「役に立たない仕事」も爆発的に増え、生産性が多いに高まりました。

これは最新の経済学の教科書でも書かれている近代経済発展の理由の1つです。

近代経済を繁栄に導いた重要な特徴の1つは、分業によって労働者1人当たりの生産量が増加したことだ。

(ダロン・アセモグル/デヴィッド・レイブソン/ジョン・リスト『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)202ページ)


(2) 分業はなぜ生産性を高めるのか

分業によって同じ人数が働いたときの生産量が大幅に増加するのは、3つの要因のためである。

アダム・スミス、山岡洋一訳『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)』(日本経済新聞出版社、2007年3月)

理由は以下の3つ。

①個々人の技能が向上する。
②1つの種類の作業から別の種類の作業に移る際に必要な時間を節減できる。
③多数の機器が発明されて仕事が容易になり、時間を節減できるようになって、1人で何人分もの仕事ができるようになる。

同上

① 個々人の技能向上について

アダム・スミスはこう説明します。

技術が向上すれば、1人がこなせる仕事の量は当然増加する。
そして分業が進めば、各人が単純な作業を1つだけ担うようになり、その作業を一生の仕事にするようになるので、技能がかならず大幅に向上する。

② 別作業への移行時間削減について

ある作業から別の作業に移る際の無駄な時間を甘く見るなとスミスは言います。

1つの種類の作業から別の種類の作業に移る際に無駄にする時間を節減できる利点は、
たいていの人がまず想像するよりはるかに大きい。
働く場所も違えば使う道具もまったく違う場合には、1つの作業から別の作業にすばやく移ることはできない。
たとえば、農村の織工が小さな畑を耕している場合、織り機から畑に、畑から織り機に移るだけで、相当な時間を無駄にする。2つの作業を同じ仕事場で行えるのであれば、無駄にする時間はもちろんはるかに少ない。だがこの場合ですら、無駄にする時間はかなりになる。
人は誰しも、1つの作業から別の作業に移るとき、少しはだらだらする。新しい作業をはじめた瞬間から、熱心に仕事に打ち込むことはまずない。よくいわれるように、しばらくは気が乗ってこないので、だらだらしてすごし、仕事に専念できない。

営業マンが経理作業も人事採用も何でもやるというのは、大いなる無駄を混入させることになります。

人は誰しも、1つの目標に注意をすべて集中していると、さまざまな点に注意を分散しているときより、目標の達成を簡単にし速くする方法を見つけ出す可能性がはるかに高くなる。
そして分業の結果、各人はごく単純な目標に自然に注意を集中するようになる(同上・12ページ)。

③についてはそのままなので省略。

③多数の機器が発明されて仕事が容易になり、時間を節減できるようになって、1人で何人分もの仕事ができるようになる。

分業によって各個人を一定の業務に集中させるのがカギなのです。

ぼんやりとした何でも屋を多数そろえるのは個人の専門性は身につかず、組織全体で見れば非効率です。狩猟社会のような未開の社会と同じです。

営業は営業、経理は経理、ITはIT、法務は法務とそれぞれに特化するのはある意味あるべき姿です。

3 専門に特化させて全体の知を高める

各部門が独自に勝手にやればいいというのではありません。

各自が専門性を磨き相互依存することで組織全体の知力が高まります。

知性は、個人がたった一人で問題の解決に取り組むという環境のなかで進化してきたのではない。集団的協業という背景の下で進化してきたのであり、私たちの思考は他者のそれと相互にかかわりながら、相互依存的に進化してきたのだ。ハチの群れと同じように、それぞれの個体が特定の役割に精通すると、その結果として生まれる知能は部分の総和を超える

(スティーブ・スローマン=フィリップ・ファーンバック『知ってるつもり――無知の科学』(早川書房、2018年4月)126ページ)

「他部門に丸投げ」は嫌われる行為ですが、適切な相互依存は全体の知力を高めます。

4 小企業から大企業に移行する際には機能の分化は必ず生じる

1人で会社を始めて、2,3人で活動していれば、全員が何でも屋です。

しかし、組織が大きくなれば、「何でも屋」はパンクしてしまいます。

全部が中途半端になってしまうのです。

そうしたら、誰でもそれぞれを得意なものに特化させる分業スタイルを取るはずです。

ある人は売上に貢献する営業を、ある人は開発を、ある人は人事をというふうに。

おおもとは「1つの会社のビジネス」から分化したものですので、歴史からさかのぼれば「プロフィットセンターは偉い。コストセンターはだめ。」とはならないはずです。 

社員が20~30人くらいのときは、私が面倒を見ることができます。「最近落ち込んでいるようだな」と思ったら、声を掛けられる。でも、100人、200人と増えていくと、そうしたコミュニケーションは難しくなります。一度立ち止まり、きちんとした組織を作る必要があると痛感しました。

人事や総務、経理などの部門を作ったのは、そのときです。総務があれば、社員から不満の声が上がっても吸い上げることができます。

ー澤田秀雄(HIS会長兼社長)(日経ビジネス2020年1月17日号)

上記インタビューでは、エイチ・アイ・エスが小さな企業から組織を大きくしていく過程で、人事、総務、経理などの管理部門を作っていったことが述べられています。

5 管理部門も価値がある

管理機能は「1つの会社のビジネス」の効率性を高めるために分化して派生したものであり、そのビジネス環境下において価値があります。

その機能だけ切り出して「売上がないから無価値」というのは、当該ビジネスにおける
業務の役割や位置づけを理解していない発言です。

管理部門におけるスキルは、ある1つの会社だけでなく、他の会社でも使える「ポータブルスキル」です。

自信をもってスキルを磨いて市場価値を高めましょう。

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