M&A仲介会社のうち、上場会社の年収、平均勤続年数、オフィス等を比較します。
有価証券報告書等の開示資料から分析してみます。
上場6社の概要は以下のとおりです。
日本MA | MAキャピタル | ストライク | 名南MA | オンデック | M&A総研 | |
---|---|---|---|---|---|---|
商号 | (株)日本M&Aセンターホールディングス | M&Aキャピタルパートナーズ(株) | (株)ストライク | 名南M&A(株) | (株)オンデック | 株式会社M&A総合研究所 |
銘柄コード | 2127 | 6080 | 6196 | 7076 | 7360 | 9552 |
決算期 | 3月 | 9月 | 9月 | 9月 | 11月 | 9月 |
設立 | 1991年 | 2005年 | 1997年 | 2014年 | 2007年 | 2018年 |
従業員数 | 972人 (2022.3) | 229人 (2022.9) | 220人 (2022.9) | 53人 (2022.9) | 38人 (2021.11) | 49人 |
売上高 | 404億円 (2022.3) | 207億円 (2021.9) | 107億円 (2022.9) | 13億円 (2022.9) | 7.7億円 (2021.11) | 13億円 (2021.9) |
本記事では、主に上位3社に焦点を当てて検討します。
M&A仲介上場6社の平均年収ランキング:1位のM&Aキャピタルパートナーズは2688万円
2021年と2020年の平均年間給与ランキングは以下のとおりです。
順位 | 会社 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|
1位 | MAキャピタル | 2269万円 | 2688万円 | 3161万円 |
2位 | ストライク | 1375万円 | 1432万円 | 1438万円 |
3位 | 日本MA | 1353万円 | 1243万円 | 有報に記載なし |
4位 | 名南MA | 774万円 | 727万円 | 734万円 |
5位 | オンデック | 746万円 | 720万円 | |
6位 | MA総研 | 開示資料無し | 686万円 |
上位3社と下位3位とは大きな差があります。
MAキャピタルは突出している。
そんな傾向が見て取れます。
某社についての年収と厳しさについてのツイートがありました。
「ノロマが厳しすぎる」とは、きっと動きの鈍い上司がすごい厳しかったということでしょう。
2週間でドロップって何があったんでしょう。
多くの社員は年収1000万円に届かず、一部の稼ぎ屋が平均を押し上げているのかもしれませんね。
M&A仲介会社は他業界に比べると高年収です。
日本MA、MAキャピタル、ストライクの平均年収推移
上位3社についての平均年収推移を見てみます。
昔から平均年収が高いのか、最近高くなってきているのか。
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本MA | 1237万円 | 1418万円 | 1319万円 | 1413万円 | 1353万円 | 1243万円 | N/A |
MAキャピタル | 1905万円 | 2994万円 | 2478万円 | 3109万円 | 2269万円 | 2688万円 | 3161万円 |
ストライク | 1616万円 | 1771万円 | 1539万円 | 1343万円 | 1375万円 | 1432万円 | 1438万円 |
MAキャピタルは直近は平均3000万円超え。
日本MAとストライクが安く見えてきてしまいます。
しかし日本企業で平均年間給与が1000万円を超えるところはほとんどありませんので、この3社は群を抜いて高給な会社群です。
高給のM&A仲介会社で働く際のデメリット
平均年収の高さという夢を見たところで、早めに現実を見ましょう。
仲介会社がそんなにいいならみんな仲介会社に殺到するはずですが、そうではないはず。
仲介会社の良くない点とは。
成果主義がきつい
給料が高いM&A仲介会社の特徴は成果主義です。
大きな規模の案件をたくさん成約させて多く手数料をとることでそれが給料に跳ね返ります。
このM&Aの中身がどんなものかよく考えずにサバサバと笑顔で案件を進める厚顔無恥な営業気質の人が向いているはずです。
会社内の儲かっている人とそうでない人の格差はあるはずであり、幹部からの突き上げや競争に疲れる人もいるでしょう。
時間的ストレス
M&Aは、案件が佳境に差し掛かると非常に忙しくなります。
複数件が立て込んだりすれば極めて多忙になりますし、それが続くとなると負荷はそれなりのものになります。
また、M&A仲介会社の給料は高いですが、忙しくなければ高くならないはずであり、高給は身体的・精神的負担の対価であり、高給を得ている平社員は文字どおり身を削っていると考えられます。
M&Aそれ自体あれこれ手続きがあって忙しいですが、会社が売上を上げるという観点から社員にかかるストレスも見逃せません。
「早く進めろ」と会社は社員に圧力をかける構造的インセンティブがM&A仲介ビジネスには存在します。
案件が完了しないとM&A仲介業者は売上を計上できないからです。
たとえば、ストライクは、有価証券報告書で「対処すべき課題」として「案件の進捗管理」をあげています。
業績目標を達成する上では、個々案件の成約に向けた進捗管理が重要な課題になると認識しておりますが、案件の成約時期については、譲渡希望先と買収候補先のそれぞれの意向や意思決定手続等により左右され、当社で完全にコントロールできない面もあります。また最近では、譲渡希望先と買収候補先のいずれかが大企業となるケースも増えており、以前に比べると成約までの期間が長期化する傾向にあります。
ストライク有価証券報告書2021.9
当社では、コンサルタントが成約目標時期を譲渡希望先と買収候補先に示すとともに、当事者の意思決定プロセスも考慮し、スケジュール化することで、成約までの期間がさらに長期化することのないよう努めております。また全案件の進捗管理のため、毎週、案件の進捗状況を把握し、必要に応じた対策を図るようにしております。さらに、会計・法律などの専門家で構成された業務支援部を設置し、コンサルタントをサポートするとともに、専門知識が必要となる高度ないし複雑な案件も成約できる支援体制を整備しております。
これらの施策により、案件の進捗管理は徐々に改善されておりますが、さらに改善の余地はあると考えており、また、進捗管理の対象となる案件数も増加傾向にあることから、継続的に管理体制の見直しに努めてまいります。
仲介会社の中で優秀とされる社員は、顧客に寄り添って「重大な決断ですから、ゆっくりよく考えて迷っていいですよ。無理して決断しないでもかまいません」というようなことを言う人ではありません。
買うなら今でしょ、という林先生のようなせっかちタイプで素早く案件をまとめる社員の方が売上をあげられます。
「速く、早く」が至上主義とされる文化であると思われます。
MAキャピタルの平均年収は2000万円超ですからね。のんびりなはずがない。
当社は両者のマッチングが円滑に進み、早期に成約に至るよう取り組んでおり
ストライク有価証券報告書2021.9
案件紹介先に低姿勢でなければいけない
どの会社も金融機関から案件紹介を受けており、紹介料を支払っています。
たとえば、ストライクは買掛金の相手先として以下会社を有価証券報告書に記載しています(2021年9月期)。
- ㈱エスネットワークス
- 野村證券㈱
- SMBC日興証券㈱
- ㈱京葉銀キャピタル&コンサルティング
- ㈱みなと銀行
金融機関は相対的に見て相手にするのはストレスな会社だと思います。
コンプラなんて知らねえぜという荒くれものの建設業界や、自分達を王様か何かと思い込んでいる病院といった群とならんで金にアグレッシブな金融機関も私はあまり相手にしたくありません。わらわらと不合理なクレームを述べてくる個人相手も辛いです。
平均勤続年数と平均年齢
M&A仲介会社は人材流動性が高く大変そうです。
それをチェックするために上位3社の平均勤続年数と平均年齢を有価証券報告書からまとめてみます。
平均勤続年数
日本MA、MAキャピタル、ストライクの平均勤続年数は。
平均勤続年数(年) | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本MA | 3.8 | 3.9 | 4.1 | 3.8 | 3.5 | 3.4 | |
MAキャピタル | 2.99 | 3.29 | 3.31 | 3.15 | 3.11 | 3.16 | 3.15 |
ストライク | 3.6 | 3.1 | 2.5 | 2.3 | 2.6 | 2.5 | 2.7 |
どの会社もさすがに平均勤続年数が短いですね。
ストライクがとりわけ短い。前述のツイートに出てきた短期ドロップ組はけっこういるのかもしれません。
勤続年数が短いと、あまり稼げないかもしれません。
採用したコンサルタントについては、入社1年後は収益貢献がほぼなく、2年目で1~2組の案件成約、3年目で2~3組の案件成約というように経験とともに成約数が増加することが一般的であります。
ストライク有価証券報告書2022.9
多くの人はあまり稼げないまま会社を去る。勝ち残った者が高い給料にありついている。そんな感じなのかもしれません。
新しい人をガンガン雇うと平均勤続年数は低い数値が出ます。そこで、各社の従業員数の推移も見てみましょう。
従業員数(人)* (前年比) | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本MA | 266 (+32.8%) | 295 (+11.1%) | 357 (+21.0%) | 484 (+35.6%) | 617 (+25.7%) | 843 (+36.6%) | |
MAキャピタル | 50 (+31.6%) | 115 (+130%) | 143 (+24.3) | 169 (+18.2%) | 199 (+17.8%) | 222 (+11.6%) | 229 (+3.1%) |
ストライク | 39 (+30.0%) | 56 (+43.6%) | 86 (+52.7%) | 132 (+53.8%) | 152 (+15.2%) | 205 (+35.3%) | 220 (+15.1%) |
どの会社もすごい勢いで従業員が増えています。
業績好調なのが従業員数の伸びに現れています。
平均勤続年数が短いのは、採用人数が多いというのは大きな要因になっていると見て取れます。
MAキャピタルは2017年に130%増と従業員数が急増していますが、その後は順調に増えているとはいえなだらかになっています。
平均年齢
どの会社も人をたくさんとって勢いがある感じがしますので、平均年齢は若そうです。
平均年齢(歳) | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本MA | 34.7 | 33.5 | 35.7 | 35.1 | 34.7 | 34.3 | |
MAキャピタル | 31.1 | 31.5 | 31.3 | 31.2 | 31.4 | 32.2 | 32.0 |
ストライク | 34.9 | 35.0 | 36.2 | 34.8 | 35.5 | 35.3 | 35.8 |
MAキャピタルの平均年齢が若い。MAキャピタルは若くして稼げる会社だということです。
日本MAとストライクは同じくらいですね。
最高給のMAキャピタルに転職したいなら、年齢が高くなるとそれなりのバックグラウンドが求められるので、若いうちに早めに動かねばならないようです。
M&A仲介上場会社のオフィスが入居しているビル対決:上位3社は東京駅近辺豪華ビルで火花を散らしている
次はやや平和な話題です。
M&A仲介は基本的にテレワーク不可なようですが、どんなオフィスで働くことになるのでしょうか。
本社ビル | 月額賃料 | 本社従業員数 (臨時雇用者は半分にして加算) | オフィス高級度(1人当たり月額家賃) | 出所 | |
---|---|---|---|---|---|
日本MA | 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 鉃鋼ビルディング 24階 | 3639万円 | 551人 | 6.6万円 | 有報2022.3 |
MAキャピタル | 東京都千代田区丸の内1-9-1 グラントウキョウノースタワー38階* | 2398万円 | 159人 | 15万円 | 有報2022.9 |
ストライク | 東京都千代田区大手町1丁目2番1号 三井物産ビル15階 | 2818万円 | 192人 | 14.7万円 | 有報2022.9 |
名南MA | 名古屋市中村区名駅1-1-1 JPタワー名古屋34階 | 317万円 | 37人 | 8.5万円 | 有報2021.9 |
オンデック | 大阪府大阪市中央区備後町3-4-1 備後町山口玄ビル3F | 207万円 | 23人 | 9万円 | 有報2021.11 |
MA総研 | 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館17階 | ** |
* MAキャピタルは、本社オフィスを2023年3月10日から東京都中央区八重洲二丁目100番(地番) 東京ミッドタウン八重洲 A-1街区 36階に移転。
**MA総研は増床したりしているので除外。
日本MAとMAキャピタルはお隣のビルですね。東京駅八重洲口側を出てすぐ。
日本MAは家賃は高いですが、MAキャピタルとストライクに比べると社員が多いので、1人当たりの家賃は安めになっています。
金額から推計すると、従業員1人当たりの家賃はMAキャピタルのオフィスが一番高く、一番豪華なのかもしれません。
2023年3月から入居するというMAキャピタルの東京ミッドタウン八重洲のオフィスを自慢するYoutube動画が公開されています。
「どうせ高給取りなら派手な豪華ビルがいいぜ!」という考えでM&A仲介会社に就職したい人には上位3社がおすすめです。場所も丸の内、大手町、八重洲とお高いところです。
名古屋本社の名南MAと大阪本社のオンデックは東京に比べると家賃が安めに感じますが、上位3社の家賃が高すぎるのでしょうがない。
ちなみに名南MAの本社ビルは立派です。名古屋の勝ち組ビル。
さらにちなみに、オンデックの東京のオフィスの永田町の合人社のビルはお世辞にもかっこいいビルとは言えません。M&A仲介会社への転職希望で、東京勤務でかっこいいビルに通勤したい人にはオンデックは勧められません。
M&A仲介会社に転職するために必要なものは営業力だ
若手ハイクラス向け転職サイトである『VIEW』会員向けのセミナーとして開催された「M&A仲介への未経験からの転職セミナー」に参加してみました。
簡単に結論を言うと、M&A仲介会社への転職で求められるのは、売り込みの能力、売上をあげられる営業力です。
M&Aやビジネスの知識は求められていません。
当該セミナーの中で「面接でよく出てくる専門用語3つ」が以下のとおり紹介されていました。
全然中身のない用語ばかりですので、M&A仲介会社への転職面接の際にはM&A業務バックグラウンドはほとんど求められていないといえそうです。
M&A仲介ビジネスで大切なことはマッチングさせることですのでM&A知識はなんとなくでも大丈夫。
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- なんかM&Aかっこいい。
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弁護士求人でしたが、年収マックスは2000万円近かったです。
さすがM&Aキャピタルパートナーズ。バックオフィスでも高年収。
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