法務部で高い年収を得るには
法務部員が手に入れられる年収はどの程度か。
法務部員が高年収を狙うにはどうしたらよいのか。
実力を付ける、弁護士資格を取る、留学する、英語を勉強する、といったような手段よりも直接的で簡単な話をします。
▼法務部員以外向けの一般的な説明はこちら
(2020年10月11日改訂)
- 法務部で高い年収を得るには
1 法務転職で年収を上げるには高い給料をもらえるポジションに就く
当たり前なのですが、これしか方法はありません。
年収を上げようと思うなら、弁護士資格の有無や職務経歴がどうのこうの考える前に、まずこの大原則を理解しなければなりません。
論点を少し変えてここでクイズです。
司法試験に受かるにはどうすればいいか?
「基礎を身につける」?
違います。
司法試験で合格最低点以上取ればいいのです。
当たり前だ、とブーイングされそうです。
なぜ当たり前のことを書くかというと、これを意識しないと給料を上げられないからです。
自分の給料を見て「安いなあ。他の会社はもっといいんだろうなぁ」と言っているだけではサラリーアップの行動としてダメです。
シンプルで確実な思考法が大事です。
別記事でも説明しています。
本記事は、「法務転職」での年収アップですので、法務に絞って考えます。
2 法務で高年収のポジションとは
高い給料のもらえるリーガルのポジションの要素は以下のものがあります。
- 会社の給料が高い
- 給料が高いポジション
(1) 給料が高い会社の法務部
そもそも全般的に従業員の給与の高い会社に就職すれば、高い年収を得られます。
たとえば、財閥系商社、外資系製薬、外資系金融系の企業等は給料が高いです。
逆にベンチャー企業では給料が低いことが多いです。
ただ、有力ベンチャーであれば話は別です。
「日本で唯一のユニコーン」と呼ばれる日本最強のベンチャー企業であるプリファード・ネットワークスの1年前の法務求人情報では、想定年収が1000~1500万円でした。
ベンチャー企業法務の提示年収を遥かに超えています。
ちなみに、このプリファードの独占求人案件を持ってきたのはJACリクルートメントでした。
(2) 給料が高い法務ポジション
その特定の法務ポジションに高い給与が与えられる場合です。
たとえば、法務部長であれば相対的に給料は高いです。
マネジメントポジションではなくとも、専門スキルに着目して高い給料が設定される場合もあります。たとえば、M&A専属で高い給料が出たりすることがあります。
JACリクルートメントから来た東証二部上場企業の法務部長の求人で、年俸2400万円という法務求人情報を見たことがあります。
3 給料が高い会社の法務部を狙う
シニアになる前の段階の法務転職で年収を上げるには、給与レンジの高い会社を狙うというのが王道です。
給料が高い会社の特徴を列挙してみます。
(1) 大企業の方が法務の給料は高い
これは残念ながら事実です。たくさんの求人を見ていますが、知名度の低い中小企業の給料は低いことが多いです。
(2) 法務の給料は外資系企業の方が高い
リーガルの会社内での地位を反映しているのか、全般的に外資系企業の方が法務の給料は高めです。
私は日系企業から外資系企業に転職したらかなり給料が上がりました。
外資系企業法務はけっこう会社を転々としている人がいますので、外資系企業の法務人材になると「高給でつぶしがきく」というメリットがあります。
私は、ロバート・ウォルターズをよく使っていますが、年収が1000万円くらい上がりそうなハイポジションの求人情報が来たことがあります。
全てが応募するわけではないのですが、4回面接に行った企業もありました。年収を考えるととても残念でした。
▶ ロバート・ウォルターズ www.career-rule.com
(3) 製薬、金融等の一部の業界の給料は高い
昨年にはメルク、武田テバ等の製薬会社の求人が来ていました。他と比較すると提示年収が高いです。
また、外資系金融の法務は高いところだとかなり高年収が狙えます。かつてJPモルガン法務で3000万円くらいの給料だったという知り合いがいます。
日系だと見劣りしますが、それでも製薬や金融の給料は高いです。
こうした業界の転職は、「同じ業界」の人が転職することが多いので、若いうちに儲かる業界に入っておく、というのは法務ではかなり有効な戦略です。
儲かる業界に強い転職エージェントは、ここでもJACリクルートメントです。
4 法務ハイポジションを狙う
法務人材のシニア層にさしかかったら、会社のネームバリューばかり追いかけるのをやめて、ポジションを考えなければなりません。
ハイポジション狙いには2つの要素があります。
- 法務専門知識を活かす
- 法務知識以外を活かす
(1) 専門的な法務知識を活かせるポジション
金融法務、M&A関連、海外法務等の経験があることがこうしたポジションに就くには必須です。
法律事務所からいきなりこうしたポジションに就く弁護士もいます。
こうしたポジションを狙う際に、弁護士資格や職務経歴が役に立ちます。
高い英語力、留学経験、著名な会社出身といったものも武器になります。
(2) マネジメントポジション
課長や部長といった部下を管理するポジションです。
上記(1)よりもこちらの方が数が少なく、高い給料が望めます。
5 どの要素を持つ求人情報を狙うのか
法務が転職で年収を上げるには、上記2~4を考慮するべきです。
「給料が高い会社」の「ハイポジション」が最強の高年収を得られます。
しかし、すべての要素が含まれた無敵のハイサラリー法務職の求人情報は滅多にないですし、あったとしてもほとんどの人にはスペックが合いません。
若手法務は、まず「給料の高い会社」を狙いましょう。大企業、外資系、高年収業界を狙うのです。そこからさらに高い給料を得るには、将来的にハイポジションを狙う必要があることは頭の片隅に置いておきましょう。
シニア層法務は、どうしたらハイポジションに就けるか考えなければなりません。特に、マネジメントポジションに就いて高給を得るには、法律の勉強や契約書レビュー等の日常業務をやっているだけでは難しいといえます。
ただ、その際にも、給料レンジの高い会社の方がハイポジションの給料は高めであることは当然考慮すべきです。
6 年収400万以下から年収1000万超の法務になるための手法
上記の情報をベースに具体的な思考法を検討します。
(1) いきなり400万円→1000万円の年収アップは難しい
現実的にこれは厳しいです。求人を出している会社はこのような猛烈な年収アップを望む応募者には取り合ってくれませんし、転職エージェントも相手にしてくれません。
(2) 段階的ステップアップ
400万円から1000万円に年収をアップさせるには、時間をかけた複数のステップが必要でしょう。
たとえばこんな感じです。
- 転職1回目:400万円→450万円
- 給料アップ:450万円→500万円
- 転職2回目:500万円→600万円
- 給料アップ:600万円→700万円
- 転職3回目:700万円→800万円
- 給料アップ:800万円→850万円
- 転職4回目:850万円→1000万円
これはなかなかのサクセスストーリーです。
注意すべきは、時間をかける必要がある、ということです。
転職で今より高い給料の求人を狙うには、自分の現年収を高めておく必要があります。
現職場で給料アップを図るには、数年かかります。待つしかありません。
また、転職で給料アップを図るにも、現職場で数年は働く必要があります。半年や1年ずつ勤務しただけですぐ次にポンポンと転職するのは困難です。すぐに辞める人は採用してもらいにくいからです。
(3) 少しずつ経験の幅を広げていく
上記(2)のステップの中で、自分のスキルを高め、様々な経験を積んでいきましょう。
経験を積む際には、あまり関係のない業務をあれこれやるのではなく、一定の方向性が必要でしょう。
たとえば、相続法の業務をやった後に金融法務の経験を積んでも関連性がないです。
専門的な知見を磨いてエキスパートポジションを狙う、というルートも当然ありえます。そうした「これだ」というものが見つかったらそこを狙うのもいいと思います。
私自身はこれという深い専門性がないので、ジェネラリスト寄りのポジションからのステップアップを狙っています。
(4) どこかで年収大幅アップのステップが入るといい
上記(2)の着実ステージアップの中に、ボーナスのように年収大幅増が入るとうれしいですね。
昇進や、思わぬ高給求人への転職などです。
こうしたラッキーボーナスは、短期的な視点では手に入りにくいと思います。昇進は短期ではできませんし、レアな求人情報は長年虎視眈々と待っていた方が入手できる確率が高まるからです。
焦りは禁物です。
7 あなたより高給の他社法務部員はより金持ちになっていく
法務職はボロ儲けができる仕事ではありません。
急に給料が高騰することもありません。
あなたと同い年の他社法務部の社員があなたより高い給料をもらっていたとしたら、それはどんどん開いていって追いつかなくなるかもしれません。
なぜなら給与レンジが違うから。
長い目で見て賢明な行動をとることが年収アップに不可欠です。
この長期的戦略についての相談相手としては以下の転職エージェントがいいと思っています。
転職相談に行って「今は転職しない方がいい」と言って、求人案件を1件も提示しなかったという例が物語っているとおり、相談者のキャリアを考えてくれます。法務専門なのでより良いです。
② リソースリーガル
ここも転職相談で、「現職場にしばらくいた方がいいですよ。転職回数は無駄に増やさない方がいいです」と、求人案件を紹介しなかった転職エージェントです。