知識ゼロの初心者が経済学を独学するための本と無料講座を提供しているサイトの紹介です。
裏付けのある素材を選びました。
私は弁護士であり、司法試験には経済学は出題されていないため、知識ゼロの状態から勉強しました。
その体験も含めた記事です。
私は、「経済学の勉強って何から始めたらいいんだろう」と思いつつネットをあれこれ見て、「これらの勉強法って信用できるのかなあ。。」と長年悩みつつ色々な書籍等を見てきました。
この記事に載っている勉強素材を選べば経済学の勉強の第一歩としてちょうどよいと思います。
以下では、本を先に紹介し、後に動画講座を紹介しています。
動画講座の方が興味がある方はまず動画講座を見るようにしていただけたらと思います。
多くの初心者には動画講座の方がわかりやすいはずです。
1 経済学を独学するための本
おすすめの本を最初のとっかかり、ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学の4つに分類して紹介します。
(1) 経済学のとっかかり本ー市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)
出版社のウェブサイトの内容紹介は以下の通りです。
東京大学で、毎回教室が超満員になる大人気講義を書籍化! 世界で活躍するトップランナーが、最新の経済学の世界へナビゲート。
週刊ダイヤモンドが発表する「2020年ベスト経済書」第2位に選出!
経済学を味わう|日本評論社 (nippyo.co.jp)
(『週刊ダイヤモンド』2020年12月26日・2021年1月2日新年合併特大号掲載)
この内容紹介に「最新の経済学の世界へナビゲート」とあるとおり、本書の内容は経済学の各分野をそれぞれ紹介するものとなっています。
本書の以下目次を見れば経済学の色々な分野が取り扱われているのがわかります。
- 第1章 経済学がおもしろい:ゲーム理論と制度設計……松井彰彦
- 第2章 市場の力、政府の役割:公共経済学……小川光
- 第3章 国民所得とその分配:マクロ経済学……楡井誠
- 第4章 データ分析で社会を変える:実証ミクロ経済学……山口慎太郎
- 第5章 実証分析を支える理論:計量経済学……市村英彦
- 第6章 グローバリゼーションの光と影:国際経済学……古沢泰治
- 第7章 都市を分析する:都市経済学……佐藤泰裕
- 第8章 理論と現実に根ざした応用ミクロ分析:産業組織論……大橋弘
- 第9章 世界の貧困削減に挑む:開発経済学……澤田康幸
- 第10章 歴史の経済分析:経済史……岡崎哲二
- 第11章 会計情報開示の意味:財務会計と情報の経済学……首藤昭信
- 第12章 デリバティブ価格の計算:金融工学……白谷健一郎
この本を読んでも経済学がどんなものかは全然わかるようにはならず、「これだけ読めばOK」という本ではありません。
各分野の学習の羅針盤としてはとても良い本です。
このような内容の授業が大人気ということは、頭の良さそうな東大生でも自分は何を勉強したらよいのかよくわからないという人が多いのだと思います。
(2) ミクロ経済学おすすめの教科書・テキスト
どちらから勉強してもよいですが、どちらかというとミクロ編を先に勉強するよう勧める人が多いです。
ビジネスにより近いのはミクロ経済学でしょう。
経済学には様々な部門がありますが、ビジネスに最も重要なのはミクロ経済学だと思います。ミクロ経済学は『それぞれの企業や個人がどのような動きをするのか』『その動きの結果、社会がどうなるか』を研究するものです」
ーマネーフォワードの滝俊雄執行役員兼Fintech研究所長
(日経産業新聞2021年6月16日「経済学を経営に生かす(上)経済学、事業の最適解導く、理論ビジネス展開、先駆者に聞く(NIKKEILIVE)」)
ア ミクロ経済学・入門~初学者向けテキスト | ティモシー・テイラー『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編』(かんき出版、2013年)
軽めの初心者用経済学入門書としておすすめはこちらの書籍です。
全く予備知識ゼロで経済学のテキストを読むならこれ。
なぜこの本がおすすめか?
「とっつきやすい入門書」として、楡井誠さん(東京大学大学院経済学研究科教授)に『経済学を味わう—東大1、2年生に大人気の授業』にて勧められていたからです。
イ ミクロ経済学・初学者~中級向けのテキスト
初心者向けで終わらずにややしっかりした内容学びたい人や、きちっと学びたい人向け。
① グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学I ミクロ編』(東洋経済新報社、第4版、2019年)
著者のグレゴリー・マンキューさんは1987年29歳の若さでハーバード大学教授に就任した超一流の経済学者です。
ハーバード大学の経済学入門講義を長年担当。
▶ハーバード大学のマンキュー先生の紹介ページ N. Gregory Mankiw (harvard.edu)
マンキューさんは、ブッシュ大統領(子ブッシュ)の大統領経済諮問委員会という重要ポストについていたことがあります。当該ポストと、マンキューと元FRB議長のベン・バーナンキとの関係について、バーナンキが自らの回顧録で少し言及しています。
2005年前半にはグレッグ・マンキューがブッシュ大統領の大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長職を退いてハーバードの教職に戻ることを発表した。グレッグは―――大学院からの知り合いなのだが―――私に電話をくれて、後任になる気はあるかとたずねてきた。
政策に関心がある経済学者にとって、大統領経済諮問委員会の委員というのはワシントンで最も興味深い仕事のひとつだ(委員長ならなおさらである)。この委員会は1964年に作られたもので、ホワイトハウス内部の経済コンサルティング会社的な役割を果たしている。委員長と2人の委員に加えて、20人ほどの経済学者が(たいていは大学やFRB、ほかの政府機関から一時休暇を得て)職員となっている。また、卒業したばかりの学部生や大学院生が数名研究助手を務めている。
ベン・バーナンキ『危機と決断(上)前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』(KADOKAWA、2015年12月)144ページ
そんなマンキューさんの書く教科書は業界で「わかりやすい」と評判です。
マンキューさん本人も「経済学を教えるのはあまりに楽しい」とこの教科書で述べており、わかりやすく説明することに意欲的です。
後述する『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』の監訳者まえがきでは、マンキュー経済学について以下のとおり評されています。
従来の教科書では一番やさしいとされる
(アセモグル/レイブソン/リスト 経済学・訳者まえがき~日本語版刊行にあたって~(岩本康志))
マンキューは長年「わかりやすい教科書」の定番の地位を維持してきています。
現在の学部教科書の定番はマンキューの教科書
Book Guide : Aso (keio.ac.jp)
ウォーレン・バフェットの右腕であり、ビル・ゲイツからも「誰よりも幅広い思考の持ち主」と評されたチャーリー・マンガーも、マンキューについてこう言及していたことがります。
マンキューの経済学の最高のテキストを読めば、彼は知性的な人たちは機会費用に基づいて意思決定を行うと言います。
(原文:”If you take the best text in economics by Mankiw, he says intelligent people make decisions based on opportunity costs”)
(バークシャー年次総会2003年 QAセッションにて)
マンガーは、マンキューのテキストが「経済学の最高のテキスト」と評しています。
『経済学を味わう』では、修士課程への進学準備という観点においてですが、中級テキストを読む前の基本的な内容を理解するためにマンキュー経済学を勧められています。
修士課程への進学準備にあたっては、マンキューの経済学教科書(マンキュー、Nグレゴリー〔2019]『マンキュ一入門経済学〔第3版]」足立英之他訳、東洋経済新報社)などで基本的内容について見通しをつけ、さらに学部の授業やゼミでの学習に加え、以下に挙げたようなテキスト(注 後述するの中級テキストに相当するテキスト)で独習しておくと大きな助けとなるだろう。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)275ページ
ちなみに、上記の『経済学を味わう』でマンキュー経済学が中級前のテキストとして勧められている箇所は、「あとがき」であり、東大教授陣「編者一同」による唯一の初心者レベルの経済学教科書のおすすめです。
私は、次の「アセモグル」よりもマンキュー経済学の方がわかりやすいと感じました。
さっと簡単に読める内容ではないですが、丁寧に読めばわかりやすい。
② ダロン・アセモグル=デヴィッド・レイブソン=ジョン・リスト『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年)
従前の入門教科書のベストセラーであったマンキュー経済学よりも新しくわかりやすいとの評のある最新の教科書です。
「アセモグルって何だ?」とタイトルが謎な本。
タイトルの前半は以下の著者3人の名前です。
- ダロン・アセモグル
- デヴィッド・レイブソン
- ジョン・リスト
大阪大学総合図書館の案内では以下のとおりおすすめされています。
入門書でありながら最新のマクロ経済のデータだけではなく、最先端の研究者がどのような事象に関心を持っているかを知ることができるため、難しい数式を使わずに、より深くマクロ経済学を学びたい方におすすめ。
2020_Macroeconomics.pdf (osaka-u.ac.jp)
本書の訳者まえがきでも以下のとおりわかりやすい教科書であるとの説明があります。
内容が複雑にならない、記述が難しくならない、という意味での「やさしさ」について本書のレベルは、従来の教科書では一番やさしいとされる『マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編』よりも少しやさしい水準だろう。また、重要な話題が精選されていることによって読みやすく、かつ学びやすくなっている。
(アセモグル/レイブソン/リスト 経済学・訳者まえがき~日本語版刊行にあたって~(岩本康志))
岩本教授にマンキュー経済学を超えるやさしさであると大絶賛されています。
ただ、岩本教授はアセモグル経済学の翻訳者であり、まえがきを書いたという立場があります。
「アセモグル本を翻訳しましたが、ぶっちゃけマンキューの方がわかりやすいです」とは言えません。
そうした立場を差し引くと、「『マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編』よりも少しやさしい水準」という控え目な褒め方を考慮すれば、マンキューの方がわかりやすいと言えるかもしれません。
私はマクロ経済学の本を使ってアメリカ中央銀行の組織に関する以下のブログ記事を書きました。勉強になりました。
以下記事はおすすめ。
この記事を書くにあたって、マンキューとアセモグルとクルーグマンのマクロ経済学とFRBウェブサイトを参照したのですが、「アセモグル」の記述は、他の本とあっておらず、FRSの存在を説明していませんでしたので、何となく腑に落ちませんでした。
ですので、私はアセモグルよりもマンキューをお勧めします。
③ 井堀利宏『入門ミクロ経済学』(新世社、第3版、2019年)
外国の翻訳版の教科書はちょっと、、という人には日本の教科書。
たしかに外国人の初学者向け教科書は説明が冗長です。
この本も437ページあってコンパクトではないですが、マンキューやアセモグルよりは短い。
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」の参考書籍として紹介されている入門レベルの教科書です。
図表を多く使用した非常にわかりやすい入門書である。ミクロ経済学とは何かという導入的な話題に始まり、余剰分析、効用最大化問題、ゲーム 理論に至るまで、非常に広範囲の分野を取り扱っている。厚生損失の説明なども、カラーのグラフを用いて非常に丁寧に記載されている。
『CBR EREミクロ・マクロ 経済学検定試験 対策問題集』(経済法令研究会、2021年)
ウ ミクロ経済学・中級向けテキスト
経済学は初級レベルでも難しいですが、とはいえ初級レベルだと学べることは限られます。
もっと学んでみたい方向けに、中級者向けミクロ経済学の教科書を紹介します。
① 神取道宏『ミクロ経済学の力』(日本評論社、2014年)
東大駒場で評判ナンバーワン講義の書籍化だ
ー松井彰彦・東京大学大学院経済学研究科教授(市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ)
後述する経済学無料講座の「はじめよう経済学」を提供されている加藤さんは、この『ミクロ経済学の力』を初学者が初級レベルを学び終えた後の教材としておすすめしています。
おすすめの経済学の本 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
『経済学を味わう』のあとがきでも、「主に学部中級から大学院入学レベルを想定したテキスト」として紹介されています。
アマゾンの書籍紹介には「圧倒的な文章のわかりやすさ」とあります。
そして、本書のはしがきを読めば、学生のみならず、公務員、政治家、ジャーナリスト、ビジネスマンなどあらゆる経済学に興味のある人が対象読者であり、「私に任せなさい」という力強い著者の言葉が載っています。
しかし、任せてよいのはミクロ経済学の基礎的な知識がある人だけです。
そんなに分厚い本ではなく、懇切丁寧に初心者向けに書かれているような感じの内容ではありません。
この本を中級テキストとしておすすめしている加藤さんも以下のように難しい本だと注意喚起しています。
正直に言うとこの本は難しいです。とても勘の鋭い方で、しかも数学にも強い方でなければ、恐らく読みこなすことはできないと思います。
おすすめの経済学の本 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
② 奥野正寛編『ミクロ経済学』(東京大学出版会、2008年)
この本は『経済学を味わう』のあとがきで、『ミクロ経済学の力』と並んで勧められていた中級者向け教科書です。
書籍案内では、ミクロ経済学の第一人者による東大講義ノートをベースに編集されたテキストとされています。
③ 武隈愼一『新版ミクロ経済学』(新世社、2016年)
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」の参考書籍として紹介されている中級レベルの教科書です。
消費者の効用最大化問題や企業の費用最小化問題や社会選択理論などについて、より厳密に数学的議論を展開している。内容はコンパクトであるが、双対性アプローチにまで踏み込んで議論がなされている。本書の内容に沿った演習問題の姉妹書もあり、独学しやすい中級テキストといえる。この本の理解には微積分に関する知識が必要となる。
『CBR EREミクロ・マクロ 経済学検定試験 対策問題集』(経済法令研究会、2021年)
エ ゲーム理論を学ぶ
ゲーム理論を独学で学ぶための本は別記事「ゲーム理論の本と講座のおすすめ | 入門からわかりやすく」で紹介しています。
オ ミクロ経済学・上級向けテキスト
中級に飽き足らずさらに極めたい人向けの本。
『Microeconomic Theory』(Andreu Mas-Colell, Michael Dennis Whinston, Jerry R. Green 著/Oxford University Press)
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」の参考書籍として紹介されている上級レベルの教科書です。
ページ数は1000を超え、値段は1万円を超えます。ここまで独学でたどり着ける人はいるのでしょうあk。
大学院レベルのミクロ経済学の教科書の決定版といえる本である。選好に関する基礎的議論から始まり、競争均衡の存在証明や、繰り返しゲーム、 メカニズムデザインに至るまで、上級レベルのミクロ経済学の内容を大部分カバーしているといえる。読むのには時間がかかるが、その分得るものも多いであろう。演習問題も豊富である
『CBR EREミクロ・マクロ 経済学検定試験 対策問題集』(経済法令研究会、2021年)
(2) マクロ経済学おすすめの教科書・テキスト
ミクロ経済学と並ぶ2大領域のもう一方、マクロ経済学を学ぶテキスト。
ア マクロ経済学・入門~初学者向けテキスト
ゼロからマクロ経済学を本で学ぶ人向け。
① ティモシー・テイラー『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 マクロ編』(かんき出版、2013年)
この本の説明については、同書の『ミクロ編』についての上述の説明をご覧ください。
② グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学II マクロ編』(東洋経済新報社、第4版、2019年)
ハーバード大学のマンキュー教授の教科書。
マンキューさんはマクロ経済学の大家です。
入門だけれどもしっかりゼロから学びたい!という人におすすめ。
690ページあります。
イ マクロ経済学・初学者~中級向けのテキスト
① グレゴリー・マンキュー『マンキュー マクロ経済学I 入門篇(第5版) (マンキュー マクロ経済学シリーズ)』(東洋経済新報社、2024年)
上述の『マンキュー経済学マクロ編』と紛らわしい教科書。比較するとざっと以下のような感じ。
入門~初学者向け:『マンキュー経済学 マクロ編』
初学者~中級向け:『マンキューマクロ経済学』
『マンキュー経済学 マクロ編』だと、なが~い本を全て読み終えてもIS-LM分析も出てこないので、どうせしっかり読むならこちらの『マンキューマクロ経済学入門編』の方がいいかもしれません。
こちらだと『応用編』に続く、という道もあります。
② 齊藤誠=岩本康志=太田聰一=柴田章久『マクロ経済学(New Liberal Arts Selection)』(有斐閣、新版、2016年)
814ページ。
『経済学を味わう』のあとがきで、マクロ経済学の中級テキストとして紹介されていた2冊のうちの1冊。
究進塾の塚田さんもこの本はとても良いとして中級テキストとして勧めています。
長い分、丁寧に書かれているので、初学者から中級までカバーできます。
③ 吉川洋『マクロ経済学』(岩波書店、第4版、2017年)
304ページ。
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」では、入門レベルの教科書として紹介されています。
2色刷りでグラフや図も多く、非常に理解しやすい入門テキストである。 コンパクトであるが扱う範囲はGDP統計から資産価格に至るまで豊富で ある。経済統計も簡潔に紹介してあり、現実のマクロ経済への理解も深まるであろう。他のマクロ経済学の入門書と比べ、景気循環に関する記述が 丁寧になされているのも特徴の1つである。
『CBR EREミクロ・マクロ 経済学検定試験 対策問題集』(経済法令研究会、2021年)
他方で、「はじめよう経済学」の加藤さんは、この本を中級テキストとして勧めています。
著者の吉川先生は東京大学の名誉教授であり、現在は立正大学の教授になります。この本も『ミクロ経済学の力』と同じで簡単な本ではないですが、安心してマクロ経済学の基本を学ぶことができます。一行一行に深みがありますので、飛ばし読みで理解できるものではないですが、じっくりと取り組むことで現実の経済を理解する上で大切なことが学べるかと思います。
おすすめの経済学の本 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
ウ マクロ経済学・中級テキスト
① グレゴリー・マンキュー『マンキュー マクロ経済学I 応用篇(第5版) (マンキュー マクロ経済学シリーズ)』(東洋経済新報社、2024年)
マンキューマクロ経済学シリーズの応用編。
世界の大家の教科書を読みたい人はこれ。
② 二神孝一=堀敬一『マクロ経済学』(有斐閣、第2版、2017年)
484ページ。
『経済学を味わう』のあとがきで、中級テキストとして紹介されている教科書。
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」では、中級レベルの教科書として紹介されています。
本書は、マクロ経済学モデル、特に動学的なモデルを丁寧に説明する良書である。入門レベルのマクロ経済学のテキストにあるモデルは時間を考慮しない静学的なものが多いが、この本では動学的一般均衡モデルや内生的成長モデルなど、ミクロ経済学的基礎付けを持つ動学モデルを基本から丁寧に説明している。入門書と上級書の橋渡しをする貴重な教科書といえ る。
『CBR EREミクロ・マクロ 経済学検定試験 対策問題集』(経済法令研究会、2021年)
③ 宮尾龍蔵『コア・テキスト マクロ経済学』(新世社、第2版、2017年)
365ページ。
著者の宮尾さんは神戸大学名誉教授。
『経済学を味わう』の第3章のマクロ経済学案内の章末の「次のステップに向けて」の中で、この宮尾さんのマクロ経済学が「マクロ経済学を体系的に学び、財政政策や金融政策の考え方を知る」ための中級の良書であると東大教授の楡井さんに照会されています。
エ マクロ経済学・上級テキスト
デビッド・ローマ―『上級マクロ経済学 [原著第3版]』(日本評論社、2010年)
上級だけれども日本語翻訳版。ちょっと安心?
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」では、上級レベルの参考書として紹介されています。
海外の経済学系大学院の講義においてテキストとして指定されていることの多い洋書の翻訳版である。消費、投資から経済成長、失業にいたるま で、広範囲のマクロ動学モデルを丁寧に説明している。金融政策分析に関する論文に近年よく用いられるニューケインジアンモデルについても丁寧に解説がなされている。
「EREミクロ・マクロ 経済学検定試験」では、中級レベルの教科書として紹介されています。
(3) 計量経済学おすすめの教科書・テキスト
計量経済学は、ミクロ経済学・マクロ経済学と並ぶ経済学のコアとなる分野です。
修士課程には、「コアコース」と呼ばれる必修科目がある。たとえば東京大学大学院経済学研究科では、コアコースはミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学の3科目で構成され、それぞれ半年間週1回の授業が2コマずつ、計6コマで構成される。修士課程の1年目はひたすらこの6コマに集中して経済学の基礎を身につけることになる。コアコースをよく習得することが、卒業後も含めてその後の学習や研究にとって必須の条件になる。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)274-275ページ
東大の経済学修士でも、ミクロ・マクロ・計量の3つをコア科目として徹底的に経済学の基礎を叩き込まれるとされています。
計量経済学のおすすめ教科書は、『経済学を味わう』のあとがきに紹介されている以下3冊を挙げます。
ア 田中隆一『計量経済学の第一歩』(有斐閣、2015)
288ページ。
この教科書のシリーズである有斐閣ストゥディアは、初学者向けの教科書のラインナップを揃えています。
著者陣は、若手の学者の共著です。
計量経済学のまさに入門として書かれた教科書です。
イ ストック、J.H.=M.W.ワトソン『入門計量経済学』(共立出版、2016)
732ページ。
そして値段が1万4300円。
ウ 西山慶彦=新谷元嗣=川口大司=奥井亮『計量経済学(New Liberal Arts Selection)』(有斐閣、2019年)
744ページ。
やはりNew Liberal Arts Selectionシリーズは分厚い。
2 経済学の独学のためのおすすめ無料講座
「最初は、本よりも先生に教えてもらえる講座がいい」という人向けに無料で学べる経済学の講座を4つ紹介します。
とっつきやすさで言えば、本よりもまずこちらの講座の方がわかりやすくおすすめです。
動画講座 | 初心者度 | コメント |
---|---|---|
(1) 加藤真也「はじめよう経済学」 | ★★★★★ | 知識ゼロでとりあえず経済学を勉強してみたい初学者に一番おすすめ。 |
(2) 茂木喜久雄『新らくらくミクロ経済学/マクロ経済学入門』試験対策講座 | ★★★★ | (1)よりもやや進んだ内容まで知識ゼロの人向けへ解説。ノートをしっかり取りたい人向け。 |
(3) 石川秀樹「速習!ミクロ経済学/マクロ経済学 2nd edition」 | ★★★ | (1)の講座終了者向けに勧められているくらい、網羅度が高い。満遍なく学びたい人におすすめ。 |
(4) ピーター・ナヴァロ「ミクロ経済学 基礎 (The Power of Microeconomics) 」 (カリフォルニア大学 アーバイン校) | ★★★ | トランプ政権で経済政策の要職にも就いたナヴァロの講座。ミクロだけでやや講座時間が短い。 |
どれも非常にわかりやすいです。無料でこれだけの講座が受講できるとは、経済学を独学したい人にとっては現代は大変恵まれた環境だと言えます。
(1) 加藤真也「はじめよう経済学」
山口大学経済学部准教授の加藤さんが公開している経済学の無料講義です。
後述する茂木講座や石川講座と違って、テキストも購入しなくて済むので完全無料で受講できます。
完全無料だからといってレベルが低いということは全くありません。非常にわかりやすいです。
全く経済学を学んだことがない初心者を念頭に置かれて講義しているのが印象的です。
公務員試験等への対策を特に念頭においた講座ではなく、講座時間も他の講座より短いため、「とりあえず経済学を勉強してみよう」という方が最初に見るにあたっては一番おすすめの講座です。
経済学に必要な数学の講義もあるのは数学が苦手な人にはとてもいいです。
微分なしで経済学の勉強は辛いですが、この講座で勉強すれば全く問題ありません。
はじめよう経済学 (introduction-to-economics.jp)
(2) 茂木喜久雄『新らくらくミクロ経済学/マクロ経済学入門』試験対策講座
これらの本をテキストとして、筆者の茂木さんがYouTubeで解説講座を公開しています。
洋泉社『新らくらくミクロ経済学入門 第2版』試験対策講座 – YouTube
茂木さんは、黒板等や手元のノートを使って図を書いて手堅く説明するスタイルです。
自分で講義ノートを取りながら受講したい人には一番いい講座ですし、説明もとてもわかりやすい。
前述の(1)加藤さんの講座は一般教養という趣きの講座ですが、この茂木さんの講座は初心者向けですが資格試験対策を念頭に置いた内容です。
加藤さんの講座よりも難しい知識に踏み込んでいます。
加藤さんの講座よりもより多くを学びたい人におすすめです。
(3) 石川秀樹「速習!ミクロ経済学/マクロ経済学 2nd edition」
この講座は、著者の石川さんの市販書籍をテキストとした無料講座です。
(1)加藤講座と(2)茂木講座との対比で言うと、資格試験対策の講座ですので、茂木講座と同じ部類です。
茂木講座よりも講座の時間が長く、網羅性が高いです。茂木講座では扱っていない内容を扱っているところがけっこうあります。
(1)講座の加藤さんは、(1)加藤講座を学び終えた後にさらに高いレベルの内容を学ぶための講座としてこの石川講座をウェブサイトで勧めています。
おすすめの経済学の本 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
石川さんの説明のわかりやすさですが、人にもよると思いますが、私は茂木さんの方がわかりやすいかなと思います。
石川さんの方が茂木さんと違って、サササッと口頭で説明して進んでしまうことが多いような気がします。
とはいえ、石川さんの説明もとてもわかりやすいですし、テキストを色分けしていってサブノート化していくという進め方は合理的でそのスタイルが気に入る人も多いと思います。
経済学のモデルがどのような仮定を置いているかの説明は石川さんの方がわかりやすかったりします。
Youtubeで見れます。
以下がその動画案内のページです。
使用するテキストは以下のとおりです。
それぞれ2000円台の書籍を買えば講座が全部無料で視聴できるのでお得です。
(4) ピーター・ナヴァロ「ミクロ経済学 基礎 (The Power of Microeconomics) 」 (カリフォルニア大学 アーバイン校)
講座時間は、5時間。
この講座は、日本最大のeラーニング提供会社ネットラーニンググループが支援するNPO法人であるAsuka Academyが提供しています。
カリフォルニア大学アーバイン校から提供を受けた授業に日本語字幕が付されています。
講師がすごい。ピーター・ナヴァロ。あのトランプ大統領の政権で「新設された国家通商会議(現・通商製造業政策局)のトップ」を務めた大物です(Wikipediaより)。
本格派な講義を受けた人におすすめ。
わかりやすいです。
Asuka Academyに無料登録すれば無料で受講できます。
マクロ経済学はまだ提供されていないようです。
Asuka Academy|世界最高の大学講義を日本語で無料で学べるオンライン講座
3 確実に経済学を習得するには資格試験(中小企業診断士、公認会計士試験等)講座
独学をより効果的にするには目標を設定して、その目標達成のためにがんばることです。
社会人であれば資格試験をちょうどよい目標にできます。
幸いなことに、経済学を試験科目にしている資格は多めです。
その中でも、中小企業診断士はビジネスマンが自己啓発目的で目指すにはおすすめです。公認会計士や不動産鑑定士は難易度が高い。
中小企業診断士でも難しいですが、経済学を身につけつつ他の科目で周辺知識も学べるので悪くありません。
中小企業診断士の1次試験の科目は以下7科目です。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・政策
資格試験を目指すのは強制的な目標設定におすすめです。
独学だとどうしても勉強が進まない、という人には予備校の利用をおすすめします。
たとえば、資格試験予備校のアガルートは、通常の教室授業を提供する予備校とは異なり、講義は全てオンライン形態であることから、安く受講することができます。
最高3倍速の速さで受講できるのもよい点です。私は講座系の音声や動画はだいたい倍速にしていますので、この機能がない動画・音声教材を見ようとは思いません。
アガルートの中小企業診断士の1次試験対策パックは2万9800円です。
断固たる決意がない人は、2次試験対策講座も含めたフルパッケージの講座10万8000円はきついですので、1次試験対策向けをおすすめします。
1次試験対策なら経済学含めて幅広く学べますし、金額もやや高いので自分に強制力を課すにはちょうどよいと思います。
▼アガルートの公式サイトはこちら
パックで講座を申し込むと簿記3級講座が無料でついてきます。
簿記3級の知識は、ビジネス知識としてぜひ持っておきたい最低限の会計知識です。中小企業診断士の勉強であわせて勉強してしまうのはおすすめです。
「よし勉強するぞ!」と思ったら、思い立ったら吉日で、資料請求してみるのがおすすめです。
私も何か勉強を始めるときは、なんとなく始めています。
コメント
コメント一覧 (3件)
[…] 転職キャリアルール 経済学を合理的に独学するためのおすすめ入門本・講座 | 転職キャリアルール 知識ゼロから経済学を独学するための書籍と講座の紹介です。 裏付けのある素材 […]
[…] 転職キャリアルール 経済学を合理的に独学するためのおすすめ入門本・講座 | 転職キャリアルール 知識ゼロの初心者が経済学を独学するための書籍と講座の紹介です。 裏付けのあ […]
[…] 転職キャリアルール 経済学を独学するための本・サイトのおすすめ | 合理的勉強法はこれだ | 転職キャリアルール 知識ゼロの初心者が経済学を独学するための本と無料講座を提供 […]