保険はいらない?社会人がはいるべき保険はどれか

保険 いらない はいるべきか
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「保険に入る必要はないか」

保険必要派と保険不要派はしばしば激突し、両陣営がわかりあえることがあまりない宗教論争です。

「持ち家派 vs 賃貸派」論争ほど激しくないかもしれませんが、両派とも相手方の意見を受け入れる気はさらさらなく、自陣営こそが真理であって、敵陣営は邪教を広める悪魔の化身であるかのように扱います。

怪しい宗教の勧誘に等しい保険についての意見(「保険で安心を買うことは必要だ」「保険は不要。騙されるな!」)に頼らずに、自分にとって必要または不要な保険をどう見極めたらいいでしょうか。

ここで保険に入るべきかどうかを判断するシンプルな基準を紹介します。

【保険に入るか入らないかの基準】
自分で支払えるものについての保険は入らない

この基準で考えて余計な保険には入るべきでないとチャーリー・マンガーは説いています。

マンガーは、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの副会長です。バークシャーは、長年保険事業を主力ビジネスとしており、保険業界の巨人です。

何十年もそのバークシャーで副会長を務める保険の達人であり、大富豪でもあり、合理的な判断に優れるマンガーが、保険について語ったことをベースに、社会人が合理的に保険と付き合うにはどうしたらよいのか。

また、経済学者もこの基準を用いるのが合理的と考えています。

目次

1 保険に入るかどうかの選び方の基準

「なんとなく保険があった方が安心」

この「なんとなく」「安心」は合理的な考えではありません。

(1) 入るべき保険の選別基準

簡単に言えば、「小さなことには保険をかけるな」が大原則です。

「小さいことに保険をかけるな」だ。これはほんとうによいアドバイスなのだが、それが守られているようには見えない。

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)319ページ

自分で支払えないものについてだけ保険をかけるべき(自分で支払えるものについては保険をかけるべきではない)
ーチャーリー・マンガー

you should insure against things you can’t afford to pay for yourself. But if you can afford to take the bumps, so unusual expense coming along doesn’t really hurt you that much.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

チャーリー・マンガーは、2023年2月15日のデイリー・ジャーナルでの年次総会でこう述べました。

マンガーは、保険がなくても自分で対応できるものについて保険に入るのは賢くないと述べています。

そして、経済学者もマンガーと同じように考えています。

保険についてどう考えるのが正しいかという点については、経済学者の意見は一致している。最も重要な原則は、「まれにしか起こらないが、いったん起こった場合には経済的に破綻してしまうような重大な出来事に備えること」である。

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)318ページ
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(2) 入るべき保険

前記(1)の基準に照らすと入るべきと言える保険は以下のようなものがあります。

  • 住宅の保険
  • 子どもがいる一家の家計を一人で支えている場合の生命保険

保険でカバーするべきリスクは、洪水や火災による住宅の被害、大きな健康問題、一家の家計を支える働き手の死亡や障害、自家用車の事故(まだ少しでも価値が残っている場合)である。こういった出来事
がどれか一つでも起きると、家計は何年も債務を抱えることになりかねない。破産することだってある。会社にお金を払ってこうしたリスクを分かち合うのは理にかなう

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)318-319ページ

住宅ローンを完済していても、家が火事で焼けてしまったり、嵐の被害にあったりするなどの万一の事態に備える保険に入っておくのは、完全に理にかなっている。多くの家庭にとって、いちばん価値の高い保有資産は住宅であり、全焼・全壊となった場合に、住宅(土地ではない)の再調達価額を基準として保険金が支払われるようになっているか、確認するべきである。

同上320ページ

(3) 入るべきではない保険

ネット上で以下のような保険が検索されているようですが、これらはいらない保険と言えるでしょう。

  • スマホ 保険 いらない
  • ペット 保険 いらない
  • うさぎ 保険 いらない
  • ハムスター 保険 いらない
  • バイク 盗難 保険 いらない
  • ペット 保険 入る べき か

「自分で支払えるものついての保険は入らない」の基準に照らすと、上記はいずれも自分で支払える損害についての保険だからです。

ひいきのチームが優勝決定戦で負ける可能性や、コーヒーマシンが壊れる可能性はもちろん、夜中にバックで車庫入れをして車をへこませる可能性については、保険をかけるべきではない。

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)319ページ

家電の延長保証

家電を買うとお金を支払うことで保証期間を延長できますが、どうしますか?と聞かれる。

将来壊れた時に無料で直してもらえるなら延長しておいた方が安心かもしれないし、みんなそうしているかもしれない。

このように考えるかもしれません。

しかし、家電の延長保証はやめましょう。

「小さなことに保険をかけるな」の基準に照らせば家電は保険対象とはいいがたい。

電子レンジを買おうとネットで探していたら、約100ドルのちょうどよいものが見つかった。10ドルを追加で支払うと、延長保証がつけられるという。これはお得なのだろうか。
そんなときは、こう問いかけるとよい。前回電子レンジが動かなくなったのはいつだろう。われわれの経験では、そんなことは起きたためしがない。だが、あなたはこう考えるかもしれない。金属が使われているものをうっかりレンジに入れてしまって、配線が焦げたらどうする?
ここでわれわれが言いたいことは二つある。第一に、それはたぶん補償の対象ではない。細字部分を見てほしい。そして第二に、電子レンジは100ドルだ。けっして安くはないが、ものすごく高いわけでもない。新しいのを買いなさい!

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)319ページ

(4) 人によって入るべき保険は異なる

大富豪であったマンガーは、家の火災保険に入っていないと述べましたが、保険をやめたのはお金持ちになってからと述べています。

お金に余裕ができてからは家の火災保険をかけなくなった。

once I got rich, I stopped carrying fire insurance on houses.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

これからすると、自分の持ち家が火事にあって自分の資産では再建は困難な人は保険に入るのは合理的な判断です。

自分の家が火事にあったとしてもすぐに自分でまた建てられるので、私にとって家に火災保険をかけるのは愚かなことです。

It’s ridiculous for me to carry fire insurance on my house because I could easily rebuild a house if burned down.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

しかし、マンガーのように家が焼けたからすぐに自腹で新しく家を建てられるような資力に余裕のある人は限られます。

家も含めて、何が保険をかけるには「小さいこと」かは人によって異なります。

なにが「大きな」損失となるかは、その人の経済状況によって変わってくる。大富豪には保険はいっさい必要ないが、貧しい家庭はなにかあったときの影響が大きい。

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)319ページ

そのため、前記(2)入るべき保険で述べた生命保険については、資産が十分にある働き手については、生命保険に入る必要性は激減します。

子供が小さくて、妻が専業主婦であっても、財産を十分にもっていれば自分が亡くなっても相続財産があれば遺族は生活できます。その場合生命保険は不要です。

2 余計な保険に入るべきでない理由

余計な保険(自分で支払える損害についての保険)に入るべきでない理由は、当然コストです。

(1) 保険料

保険事故は起きるかどうかわかりませんが、保険に入れば確実に保険料が取られます。自分のお金が確実に減る。

保険料を支払うのは、詐欺(fraud)に金を支払うことであるとまでマンガーは言います。

保険料を支払うということは、他人の詐欺に対して金を支払うということです。人生にはたくさんの詐欺的なことがありますがね。

You’re paying when you buy insurance for the other fellows frauds, and there’s a lot of fraud in life.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

まったく必要もないのに、心では「この人には保険必要ないよなあ」と思っていつつも、不要な保険を売りつけるために「安心ですよ!」などとごり押しする保険営業はたくさんいるわけです。

保険で得をすることは絶対ありません。保険料収入は、保険金に全て使われるのではなく、従業員の給料、オフィスや設備、莫大な広告宣伝費、株主への配当等々で思いっきり削られます。

保険会社は集めたお金を運用してはいますが、だからといって保険金として大盤振る舞いをすることは絶対ありません。

保険金を支払う顧客側は必ず負けるようになっています。

(2) 保険会社とのやりとり

保険料は問題ですが、マンガーは、保険会社とのやりとりを避けるべきとして話しています。

保険請求の申請などのバカげたことをやりたいと思うでしょうか。

why would I want to bother fooling around with the claims process and all kinds of things.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

保険の勧誘はしつこいですよね。

保険はあのしつこい勧誘の人達とやりとりをしなければなりません。

ネット保険等のドライな保険もありますが、その場合は数多くの複雑な保険商品から選ばなければなりません。

携帯電話のプランと同じように、保険も中身が全然わかりやすくありません。

保険にはいるということは、そうした難解な保険商品に向き合うということです。

保険の中身を一切チェックせずに加入することも当然できますが、そうであるとすると自分が何を得るために対価を支払っているのか全くわかっていないということになります。これは賢い行動ではありません。

保険に加入しようとすれば、よくわからない書面にあれこれ書かないといけません。

加入後は保険証券も保管しておかないといけません。「あれどこにあったっけ?」となりやすいばかりか、「どの保険にはいってたっけ?」と忘れることもあります。

保険を維持するのもお金以外にコストがかかるのです。保険証券をなくして、保険料を支払っていることも忘れたら、いざ事故が起きた時も請求できなくなってしまいます。

また、いざ事故が起きたときに本当に保険金がもらえるかはわかりません。

申請をしても保険会社は「対象外です」と言ってくるかもしれません。

申請もそんなに楽とは思えません。

保険会社は、保険料を客に支払ってもらうときは親切ですが、客に保険金を支払う時は冷たいです。

3 保険にはいらなくても大丈夫なの?

でも保険に入っておけば安心。入らないと不安。

そういう人が多いでしょう。

(1) イメージの洗脳

「保険」という言葉は、何かいいもの、あって安心というポジティブなイメージがあります。

多くの人はこの広く共有されるこのイメージに半ば洗脳されています。

保険会社もその洗脳を維持強化したいので、日々テレビは保険のCMで溢れています。

保険に入らなくても大丈夫か?

前述した基準【自分で支払えるものの保険は入らない】によれば、保険に入る必要はありません。

なぜなら保険がなくても対応できるから。

突発的な出費があってもそれほどダメージを受けることにはなりません。

unusual expense coming along doesn’t really hurt you that much.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

「え、でも何かあったとき保険金もらえたらラッキーじゃん」と思う人もいるでしょう。

保険会社の洗脳から抜け出すのが困難な人のようです。

納得できないのであれば、保険にはいった場合のNPVを計算してみるべきです。

保険料を投資額として、その投資によって将来得られるであろう保険金の期待値(発生確率と保険金)を現在価値に割引いて、期待の現在価値ー保険料は大きくマイナスになるはずです。

金銭的に評価すれば大きく赤字になることが見込まれる保険になぜ入るのか?

それは「安心」を不当に高く評価し、頭の中で保険にはいる場合の金銭的な赤字を埋め合わせるだけでなく黒字にしてしまうからです。

(2) 自分保険・自分の資産運用で備える

自分で支払える損害には保険ではなく自分で支払えばいいのです。

わざわざなぜ保険会社にお金をあげたりする必要があるのか。

われわれのアドバイスの根底にある一般原則は、できるだけ多くのリスクに〝自家保険”(貯蓄)で備えたほうがよい、というものだ。なんといっても、保険会社があなたに保険を売って、保険金の請求を処理するにはコストがかかる。そのため、小さなリスクに保険をかけるのは消費者にとっては得策ではない。そうした保険に入るように求められたら、まず例外なく断るべきだ。

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)321ページ

(3) 自分保険を取り入れたいがもっと安心したい場合

「小さいことは保険に入らない方がいいのはわかったけど、それでも不安。何かないのか?」

という方は、自分用の保険を自分で作るべきです。

それぞれの損害に備えて別にお金を貯蓄しましょう。

人生をもっとハッピーにするために、ある特殊なメンタルアカウンティング・プランをとりいれることを勧めたい。心の会計として、その名も「じぶん保険勘定」をつくるのである。万が一、保険に入っていたほうがよかったという、まれなケースにあたったときに、どうして保険に入っていなかったのかと配偶者に責められそうな場合はとくに勧める。じぶん保険勘定は、銀行でリアルの口座をつくってもよいし、家計簿上でもスプレッドシート上でもかまわない。延長保証や旅行保険に入らなかったとき、あるいはレンタカーに車両・対物事故免責額補償をつけるのを断ったとき(いずれにしてもクレジットカードの付帯保険でカバーされるだろう)、さらには保険の契約でより高い免責金額を選んだときに、節約したぶんのお金をそこに入れるのだ。

リチャート・セイラ―=キャス・サンスティーン『NUDGE実践行動経済学完全版』(日経BP、2022年11月)322ページ

4 保険は金持ちになるか貧乏人になるかのファクター

保険 いらない

保険に頼らず自分保険にすべきだと前述しました。

(1) 合理的な賢者はみな自分保険

賢明な人は、”自己保険”をかけている。マンガーだけでなくバフェットもそうしている。

賢明な人は無駄な保険には入らないのです。

賢明な人はみな保険に入るものは自分で支払えないものだけにして余計なものには入っていない。

 all intelligent people do that way. I don’t say all, but — maybe I should say, all intelligent people should do it my way.

Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

マンガーはこのように説いています。

  • In my own life, I’m a big self-insured and so is Warren.
  • There should be way more self-insurance in life.
  • you self insure, it’s simpler and so forth.
Charlie Munger On BYD, Tesla, Alibaba and Bitcoin — Daily Journal’s Shareholders Meeting — 2/15/2023 – YouTube

”自己保険”とは、保険をかけず、自らリスクを引き受けるということです。

ただ保険事故に身をさらすだけでは、たんに危険なだけです。

自分の財力を積み上げ、”自己保険”をかけられる範囲を広げるべきです。

マンガーは、自分の資産を積み上げて自宅の火災保険をやめて”自己保険”に切り換えました。

(2) なぜ自分保険か

自己保険に切り換える、すなわち保険会社に保険料を支払うのをやめて保険をかけないようにすれば、保険料を支払わずにすみます。

また、保険会社との無駄な付き合いにかける時間も減ります。

こうしたコストがかからなければ、自分の可処分所得は増えます。資産運用に回すお金も増えるのです。

(3) 無駄な保険に入らないのが蓄財の小さいが重要なファクター

お金持ちほど保険にコストをかけずにすみ、費用を抑えて投資でより資産を増やせる。好循環です。

資産が乏しい貧乏人は、「自分で支払えないもの」が多い。それゆえ、保険をかけざるを得ないものが多くなります。

保険をかければかけるほどコストがかさみ、貯金額は減り、資産は増えにくくなります。

金持ちよりも貧乏人の方がコストがかかるという逆転現象がおき、貧富の差は拡大します。

また、「心配だから保険に入れば安心」「たぶんみんな保険に入っているから」となんとなく保険に入り、自分の身を削って保険会社にせっせとお布施する。

これも賢明な判断とは思えません。

保険に入る入らないは小さな判断に思えるかもしれませんが、それほど小さな支出判断ではありません。

支払うものには慎重に。他にもっとよい支出先があるかもしれません。

特に支払うものがなければ投資に回しましょう。

保険 いらない はいるべきか

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