出世する人と出世しない人の違いは何か。
実力か。実績か。上司との関係か。

現実を言うと、「評価者に気に入られている人が出世する」組織が多いです。実力主義を掲げている会社でも、最終的に昇進を決めるのは人間です。
ただし、それだけで話を終わらせると、出世できない人に何も残りません。
「頑張って評価者に気に入られろ」ではなく、「自分が評価される環境にいるかどうかを確認する」という視点の方が建設的です。
出世する人に共通する特徴
評価者との関係を管理している
出世する人は、評価者が何を重視しているかを把握しています。直属の上司だけでなく、その上のマネジメント層が何を見ているかを理解して動きます。
これは「媚びる」ではなく、「評価の仕組みを理解して仕事をする」ということです。
成果を言語化して伝える
出世する人は、自分の仕事の成果を具体的に伝えます。「頑張りました」ではなく「◯◯の結果を出しました」と言える。評価者は全員の仕事を細かく見ていません。見えていない成果は、ないのと同じです。
今の役割の枠を少しだけ超える
現在の役割をこなすだけでは、昇進の理由にならない会社が多いです。出世する人は、次のポジションで必要な仕事を先取りします。
出世しない人の特徴
評価の仕組みを無視している
自分なりに頑張っているが、評価者が見ていないところで頑張っている。評価の仕組みを理解せずに働くと、正しく評価されません。
そして、実力ある社員を出世させることは組織にとって良いことなのである。そう思われているのです。
実力主義は重要である。才能や努力、成果に報いる企業は、縁故主義や組織的な偏見、有害な政治、そして無能さが蔓延している企業よりも、優れた業績を残すだろう。いまは実現できていなくても、遅かれ早かれそうなるはずだ。
なぜ従業員のパフォーマンスは公平な評価が難しいのか データ主導の組織を構築する重要性 | チームマネジメント|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
確かに「優秀な社員」が出世し、「仕事ができない社員」が出世しないのは道理のように思います。
それは、ハロー効果が作用するからです。
ハロー効果とは、ある人について、とても良い(あるいはとても悪い)何かを知っていることが、その人についてのあらゆる種類の判断を色づけるという効果である
リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学』(青土社、2018年1月)78ページ
上司が、ある部下について「あいつは見込みがある良い部下だ」と思い込めば、その部下のする仕事内容も良いに違いないと思い込むだけでなく、仕事に対する姿勢や、飲み会等への関与も部署や会社にとって望ましいものだと思い込むのです。
外資系企業の方が上司の主観的裁量が大きく、より上司に媚びを売ることが出世には必要かもしれません。
多くの場合、組織の成功に実際に貢献したというより、人気投票で勝った、あるいは評判が高いといったことが成功と見なされている可能性が高い。
なぜ従業員のパフォーマンスは公平な評価が難しいのか データ主導の組織を構築する重要性 | チームマネジメント|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
「実力があれば見てもらえる」と思っている
実力があっても、見せ方が下手なら評価されません。黙って仕事をこなすだけでは、評価者の目に入らないことがあります。
当然現代でもその問題は解決されていません。
従業員の職務遂行能力を公平に管理するためのカギとなる、信頼性が高く、正確でバイアスのない測定法は、テクノロジーが進化しても依然として定義が難しい。ハイテクツールはいたるところにある。データを見栄えよくするツールやビジュアライゼーションツール、ダッシュボードなど、さまざまだ。それにもかかわらず、従業員の価値創造を信頼できる形で定量化することは、40年前から変わらず、いまなおマネジメントの現実とはかけ離れている。
なぜ従業員のパフォーマンスは公平な評価が難しいのか データ主導の組織を構築する重要性 | チームマネジメント|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
そんな困難な実力測定・評価を企業ではどうやってやっているのか?
心理的なテクニックを内面で知らずに行います。問題を置き換えてしまうのです。
難しい質問に対してすぐには満足な答が出せないとき、システム1はもとの質問に関連する簡単な質問を見つけて、それに答えるからである。このように代わりの質問に答える操作を「置き換え(substitution)」と呼ぶ。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 上』(早川書房、2012年11月)145ページ
部下の行動をどう評価すべきか、という難しい問題に答えられない上司は、「あの部下は良い部下か」と問題を置き換えてしまうのです。
感情ヒューリスティックとは、「熟考や論理的思考をほとんど行わずに、好きか嫌いかだけに基づいて判断や決断を下すこと」です(ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 上』(早川書房、2012年11月)23ページ)。
問題が難しすぎて、スキルを総動員してもよい解決が思い浮かばないときにも、直感は働く。そしてすぐに答えを出してくるが、しかしそれは、もともとの問題に対する答ではない。あの投資責任者が直面した問題、すなわち「私はフォード株を買うべきか」は難しい。だが、もとの問題と関係はあるがより簡単な質問「私はフォードのクルマが好きか」になら、すぐに答は出せる。そしてこの答が選択を決めた。これが、近道探しをする直感的なヒューリスティクスの本質である。困難な問題に直面したとき、私たちはしばしばより簡単な問題に答えてすます。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 上』(早川書房、2012年11月)23ページ
「部下の行動をどう評価すべきか」という具体的で難しい問題を、「あの部下は良い部下か」という抽象的な人物判断に置き換える。
また、その部下が他の人ではなかなかできないような精緻な仕事を仕上げたとしても、その事実にはあまり目を向けません。自分が信じたい「雑な仕事をする部下A」という仮説に合わない情報だからです。見たとしても「あれくらいは他の人もできる」「あれをやったからといって雑な人間ということには変わらない」と思い続けます。
人間にとっては、自分の期待や仮説に合致するような情報を探すのが自然であって、たとえ反証のほうが有益な場合であってもその傾向は変わらない。
マックス・H. ベイザーマン=ドン・A. ムーア『行動意思決定論―バイアスの罠』(白桃書房、2011年7月)46-47ページ
私達は、自分の考えと合致するような情報に出会うと、通常はそれを批判することなく喜んでそれを受け入れる。その情報について綿密に調べようとするときですら、 Gilovich (1991)の言うように、「それを信じても、いいだろうか」と問いかける。私達はそれを疑わざるを得ない明白な嫌疑がある場合を除いては、肯定的な情報を無批判に受け入れてしまう。もし自分の考えに疑問を投げかけざるを得ないような事実を見つけたときには、私達は随分と違った問いかけをする。「どうしてそれを信じなければいけないのか」と。つまり私達は、そのやっかいな情報を無かったことにすることができないだろうかと考えるのである。
本質的な問い:今の会社で評価される環境にいるか
出世する人の行動を真似るよりも先に、確認すべきことがあります。
今の会社で、自分が評価される仕組みがあるか。昇進・昇給の条件が明確か。頑張れば報われる構造になっているか。
この答えが「ノー」なら、出世する人の行動を真似ても限界があります。
評価制度が曖昧な会社、昇進枠が詰まっている会社、実力より年功序列の会社では、出世する人の行動パターンを実践しても無駄になることがあります。
そういう場合は、評価される環境を選ぶことを考えるべきです。
市場価値を上げることが出世より先になる場合もある
今の会社で評価されにくい環境にいるなら、「出世を目指す」より「市場価値を上げる」方が将来の選択肢が広がります。
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学習心理学の分野で出てくる概念です。
「流暢性の錯覚」は、教材をすらすら読めることを習熟と勘ちがいすることから生じる。たとえば、むずかしい概念をとくにわかりやすく説明されると、概念自体がじつは単純で、自分も最初から知っていたと思いこむことがある。すでに紹介したとおり、教科書の再読で勉強する学生は、すらすら読めるようになったことを、主題に関する知識が身についたと勘ちがいし、テストでも高得点が取れるだろうと過大評価する。
ピーター・ブラウンほか『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』(NTT出版、2016年4月)123ページ
人事評価システムをすらすら入力できることを人事評価に習熟したと勘ちがいしてしまいます。
まとめ:出世より先に「評価される環境」を選ぶ
出世する人の特徴を真似ることより、自分が評価される環境にいるかどうかを先に確認してください。
評価制度が機能していない会社、昇進枠が詰まっている会社で頑張り続けるのは消耗するだけです。
今の会社で評価されない理由が、自分の行動ではなく会社の構造にあるなら、外の選択肢を見ることを考えてください。

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