仕事を面白くする方法|自分も人も動く仕組みとゲーミフィケーション

デスクで疲れた表情を見せる男性
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朝、タスクリストを開いて、ため息が出る。会議とメールを処理して1日が終わり、何が進んだのか自分でも言えない。一方で、部下に仕事を振れば「言われたことしかやらない」と苛立つ。

仕事がつまらないのと、他人が動かないの。この2つは別の悩みに見えます。自分のやる気の問題と、他人を動かすマネジメントの問題。そう分けて考えたくなります。

しかし、根っこは同じです。

人は、何をすれば前に進むのか分からないと動きません。進捗が見えないと続きません。行動しても反応が返ってこないと冷めます。少しうまくなっている感覚がないと、仕事はただの処理になります。

これは、自分の仕事でも同じです。

会議、メール、資料作成、調整、報告。ひとつずつ終わらせているのに、前に進んでいる感じがしない。やる気を出せと言われても、やる気が出ないから困っているのです。

そして、これは他人に仕事を頼むときも同じです。

目的が曖昧で、進み具合が見えず、反応もなく、失敗したら責められるだけ。そんな環境で、人が主体的に動くはずがありません。

仕事を面白くするのに、仕事そのものを好きになる必要はありません。

必要なのは、人が動きやすくなる仕組みです。小さく区切る。進捗を見えるようにする。行動したら反応が返るようにする。少しずつできることが増えていると分かるようにする。

この考え方に近いのが、ゲーミフィケーションです。

ただし、仕事をゲームみたいに軽くする話ではありません。ポイントやバッジを付ければ人が動く、という雑な話でもありません。

ゲームから盗むべきなのは、派手な見た目ではなく、人がもう一歩進みたくなる構造です。

目次

1 仕事を面白くするとは、気分を上げることではない

仕事を面白くする、という言葉は危ういです。

言い方を間違えると、「前向きに考えましょう」「感謝しましょう」「好きな仕事を探しましょう」という薄い自己啓発になります。そんな話で動けるなら、最初から悩んでいません。

仕事は、気分だけでは面白くなりません。

面白さは、仕事の中にある構造から生まれます。

  • 何をすれば前に進むのか分かる
  • 小さく始められる
  • 進捗が見える
  • 行動に反応が返ってくる
  • 少しずつうまくなっている感覚がある
  • 自分で選んでいる余地がある
  • 失敗しても戻れる

これは、自分の仕事にも、他人に仕事を頼む場面にも当てはまります。

自分の仕事であれば、仕事を小さく切り、進捗を見えるようにし、自分が動ける状態を作ることです。

他人に仕事を頼むなら、目的、完了条件、最初の一歩、途中の反応、やり直し方を設計することです。

仕事を面白くするとは、仕事を遊びに変えることではありません。人が動きやすい構造を作ることです。

ここを間違えると、ただの精神論か、部下を操作する管理術になります。

2 自分も他人も動かなくなる理由

自分が動けないときと、他人が動かないときには、共通点があります。

だいたい、仕事の構造が悪いです。

目的が曖昧。完了条件が見えない。始めるには大きすぎる。進捗が見えない。反応が返ってこない。失敗したら責められる。裁量がない。

この状態で「やる気を出せ」「主体的に動け」と言っても、無理があります。

動かなくなる理由 自分の仕事で起きること 他人に仕事を頼むときに起きること
目的が曖昧 何から手をつけるか分からない 依頼された側が判断できない
完了条件がない どこまでやれば終わりか分からない 期待値のズレが起きる
仕事が大きすぎる 着手する前に萎える 丸投げされたと感じる
進捗が見えない 前に進んでいる感覚がない 放置されているように感じる
反応が返らない 頑張っても意味がないと感じる 協力しても報われないと感じる
失敗が怖い 動くほどミスが増えると感じる 自主的に動かなくなる
裁量がない やらされ感が強くなる 指示待ちになる

「主体的に動け」と言う上司ほど、部下が主体的に動ける設計をしていません。

目的を言わない。判断基準を渡さない。途中で反応を返さない。失敗すると詰める。最後に「もっと自分で考えて」と言う。

それは主体性の問題ではありません。設計の問題です。

自分に対しても同じです。

仕事を大きな塊のまま抱え、何から始めるか決めず、進捗も記録せず、終わったらすぐ次の仕事に流れる。これでは、自分の仕事が面白くなるわけがありません。

3 やる気に頼ると、自分も他人も続かない

やる気は弱いです。

朝は少し前向きでも、昼には会議で削られます。夕方にはメールとチャットで死にます。翌朝には、昨日のやる気など残っていません。

自分の仕事でも、他人への依頼でも、「やる気」に頼る設計は壊れます。

  • やる気が出たらやる
  • 相手が主体的なら動く
  • 優秀な人なら察してくれる
  • 責任感があれば最後までやる
  • 本気なら自分で調べる

こういう考え方は、仕事ができる人ほど言いがちです。

しかし、それは仕事の設計を放棄しています。

人は、始めやすいものから始めます。進捗が見えるものを続けます。反応が返ってくるものに力を入れます。失敗しても戻れるものには挑戦しやすくなります。

逆に、曖昧で、大きくて、反応がなく、失敗だけが目立つ仕事からは逃げます。

これは怠けではありません。自然な反応です。

だから、仕事を面白くしたいなら、まず「やる気」ではなく「設計」を見てください。

自分が動けないときも、他人が動かないときも、見るべきなのは気合いではありません。

動ける形になっているか。ここです。

4 ゲームが人を動かすのは、楽しいからだけではない

ゲームコントローラーを持つ2人の手

ゲームが人を動かすのは、ただ楽しいからではありません。

ゲームには、人が動き続ける構造があります。

  • 次に何をすればいいか分かる
  • 進捗が見える
  • 小さな成功がある
  • 失敗してもやり直せる
  • できることが増えていく
  • 難易度が段階的に上がる
  • 行動に反応が返ってくる
  • 自分で選んでいる感覚がある

この構造を、ゲーム以外の場面に使う考え方がゲーミフィケーションです。

仕事に使うなら、ゲームの見た目を持ち込む必要はありません。会議をRPGにする必要もありません。社員にバッジを配るだけでは足りません。

見るべきは、構造です。

ゲームの要素 自分の仕事への使い方 他人に仕事を頼むときの使い方
ミッション 今日やることを3つに絞る 依頼内容を小さな行動に分ける
レベル 今月できるようになったことを記録する 相手の成長段階に合わせて任せる
進捗バー 大きい仕事を25%・50%・75%で見る 途中経過を見えるようにする
クエスト 面倒な仕事を15分だけ始める 最初の一歩を具体的に渡す
フィードバック 完了ログ、改善ログを残す 途中で反応を返す
ボス戦 重い資料作成や交渉を攻略対象にする 難しい仕事の前に準備条件をそろえる
リプレイ 失敗した仕事を手順書に変える 失敗後の戻り方を決めておく

この考え方を使えば、自分の仕事も少し動かしやすくなります。

同時に、他人にも仕事を頼みやすくなります。

「人を動かす」というと、少し操作的に聞こえます。実際、操作しようとする会社は危ないです。

正しくは、人が動きやすい環境を作ることです。

仕事を面白くするとは、自分にも他人にも、この構造を作ることです。

5 自分の仕事を面白くする方法

まず、自分の仕事からです。

会社全体を変えるのは面倒です。上司を変えるのも難しいです。だから、最初は自分の仕事に小さくゲームの構造を入れます。

今日の仕事を3つのミッションに分ける

朝にタスクリストを20個作ると、だいたい嫌になります。

全部が重く見えるからです。

まず3つでいいです。

  • 今日必ず倒す仕事
  • 進めればよい仕事
  • 触るだけでよい仕事

全部を同じ重さにしないでください。

仕事がつまらない人は、タスクを並べすぎます。並べれば整理された気がしますが、実際には「終わらないものリスト」を見ているだけです。

仕事を小さく切るだけで、少し動きやすくなります。

15分だけ着手する

面倒な仕事は、完了を目指すと始まりません。

15分だけ開く。資料名だけ決める。見出しだけ作る。関係者に1通だけ送る。

これで十分です。

ゲームでも、最初からラスボスを倒しに行きません。最初の敵を倒すから進みます。仕事も同じです。

着手できない仕事は、能力不足ではなく、最初の一歩が大きすぎるだけです。

進捗を見える場所に残す

人は、進んだものが見えないと萎えます。

だから、終わった仕事を消すだけでは足りません。

完了ログを残してください。

  • 今日片付けたこと
  • 昨日より早くできたこと
  • 先週より判断できるようになったこと
  • 避けられたミス
  • 次に楽になるように残したメモ

これは自己満足ではありません。

自分の進捗を見えるようにする作業です。

仕事がつまらない状態では、「今日も何も進まなかった」と感じやすいです。でも実際には、細かい判断、調整、修正、改善をしています。

それを見えるようにしないと、仕事はただ消費されます。

雑務を「処理」ではなく「攻略」に変える

雑務はつまらないです。

ただし、雑務を毎回ゼロから処理しているなら、それは仕事の仕方が悪いです。

攻略対象にしてください。

  • メール返信をテンプレ化する
  • よく聞かれる質問をメモにする
  • 毎回探す資料をまとめる
  • 会議前に確認する項目をチェックリスト化する
  • 面倒な承認フローを図にする

雑務そのものは面白くありません。

でも、雑務を減らす仕組みを作るのは少し面白いです。

ここにゲーム性があります。

週1回、自分のレベルアップを書く

仕事で成長実感がない人は、自分ができるようになったことを記録していません。

週1回でいいので、次を書いてください。

  • 今週できるようになったこと
  • 今週ミスしなくなったこと
  • 今週少し速くなったこと
  • 今週他人に説明できるようになったこと

これをやると、自分の仕事を少し客観視できます。

評価されるかどうかは会社次第です。ただ、自分の中で成長が見えないまま働くのは危険です。

職場が悪いのか、自分の仕事の切り方が悪いのか、それすら分からなくなります。

そして、この週1回の記録は、後で効きます。自分の市場価値を確認するときや職務経歴書を書くとき、「できるようになったことの記録」がある人とない人では、書ける中身がまるで違います。

6 他人が動きやすくなる仕事の頼み方

次に、他人に仕事を頼む場面です。

ここでも、根性論は弱いです。

「ちゃんとやって」「主体的に考えて」「いい感じに進めて」と言っても、人は動きません。

動けるように渡す必要があります。

目的を言う

作業だけ渡すと、相手は判断できません。

なぜやるのか。誰のためなのか。何が変われば成功なのか。

ここを言ってください。

目的が分からない仕事は、ただの作業になります。作業として渡された仕事に、主体性を求めるのは無理があります。

完了条件を言う

仕事を頼むときは、完了条件を言うべきです。

  • 何ができていれば終わりなのか
  • どの粒度まで調べるのか
  • 誰に確認するのか
  • どの形式で返せばよいのか
  • いつまでに必要なのか

これがないと、相手は無駄に悩みます。

依頼する側は「考えれば分かる」と思うかもしれません。しかし、相手が欲しいのは正解ではなく、判断基準です。

最初の一歩を小さくする

大きい仕事をそのまま渡すと、相手は止まります。

特に、経験が浅い人や、まだ全体像が見えていない人には、最初の一歩を小さくしてください。

  • まず論点だけ出して
  • まず関係資料を3つ集めて
  • まず過去例があるか見て
  • まず10分だけ話そう

これで動きやすくなります。

丸投げしておいて「なぜ動かない」と言うのは、面接官の思い上がりと同じです。相手の能力を見る前に、自分の渡し方を見てください。

途中で反応を返す

仕事を頼んだら、途中で反応を返してください。

最後まで放置して、最後にダメ出しするのは下手です。

相手は、自分の進め方が合っているのか分からないまま走ることになります。

途中で短く返せばいいです。

  • 方向性は合っている
  • そこは見なくていい
  • この観点を足して
  • 一度ここで止めて見せて

これがフィードバックです。

人は、反応が返る仕事には動きやすくなります。反応がない仕事は、後回しになります。

相手に選べる余地を残す

全部指定すると、相手は作業者になります。

何も指定しないと、相手は迷子になります。

だから、選べる余地を残します。

  • 方法は任せるが、目的は固定する
  • 順番は任せるが、期限は決める
  • 表現は任せるが、入れる観点は決める
  • 案は2つ出してもらい、最後に選ぶ

自分で動かしている感覚があると、人は少し前に出ます。

裁量を渡さないまま主体性を求めるのは、ただの矛盾です。

7 会社やチームで使える領域

ノートパソコンを囲んで話し合うチームメンバー

ゲーミフィケーションは、個人の仕事術や依頼の仕方だけではありません。

営業、人事、採用、オンボーディング、社内研修、ナレッジ共有、プロジェクト管理、業務改善、リスキリングにも使えます。

ただし、会社でやる場合は注意してください。

人が動きやすい仕組みは、簡単に人を管理する仕組みに変わります。ここを間違える会社は多いです。

領域 使える設計 狙う行動 やってはいけない形
営業 商談準備、提案、フォローをミッション化する 売上前の行動を増やす 売上ランキングだけで煽る
採用 面接官トレーニングをケース化する 候補者対応の質を上げる 候補者をゲームの駒にする
オンボーディング 入社後90日の習得を段階化する 新入社員の迷子化を防ぐ 会社礼賛コンテンツにする
社内研修 ケース判断、分岐シナリオ、確認問題を入れる 受け身の研修を減らす クイズ大会で終わらせる
ナレッジ共有 投稿、更新、閲覧、改善提案を見える化する 知識を個人に閉じ込めない 投稿数だけを競わせる
プロジェクト管理 タスク進捗をステージ化する 遅延と詰まりを早く見つける タスク消化ゲームにする
業務改善 小さな改善提案をミッション化する ムダやミスを減らす 提案数だけを評価する
リスキリング 学習進捗、演習、到達度を可視化する 学習を続ける 学習時間だけで評価する
社内コミュニケーション 感謝、協力、相談を見える化する 部署間の断絶を減らす 人気投票にする

営業をゲーム化するなら、売上だけを競わせてはいけません。

売上は大事です。しかし、売上だけをランキングにすると、強い人がさらに強く見えるだけです。弱い人は萎えます。中間層は諦めます。チームは情報を出さなくなります。

見るべきは、売上の前にある行動です。

  • 商談前の準備
  • 顧客課題の仮説
  • 提案後のフォロー
  • 失注理由の共有
  • 次回提案への改善

ここをゲーム化するなら意味があります。

ナレッジ共有も同じです。

投稿数だけ競わせると、薄い投稿が増えます。社内SNSにありがちな「いいこと言ってる風」の投稿が増えるだけです。

評価すべきは、他人の仕事を楽にした投稿です。あとから検索される投稿です。ミスを防いだ投稿です。

ここを間違えると、社内の知的労働がくだらないスタンプ集めになります。

8 会社でやると失敗するゲーム化

ゲーミフィケーションは、雑に入れると壊れます。

失敗例は、だいたい同じです。

  • ランキングで社員を晒す
  • ポイントだけ配る
  • バッジを配って終わる
  • 上司の監視ツールになる
  • 人事評価に直結させすぎる
  • つまらない仕事を「楽しい」と偽装する
  • 意味のない業務をそのままゲーム風にする
  • 強い人だけが勝つ仕組みにする
  • 失敗した人が目立つ仕組みにする

腐った仕事をゲーム化しても、腐ったゲームになるだけです。

仕事の意味がない。評価基準がない。上司が気分で指示を変える。失敗すると詰められる。成果を出しても報われない。

この状態でポイントやバッジを付けても、社員は冷めます。

むしろ、「また会社が変な制度を入れてきた」と思われます。

人を動かしたいなら、先に仕事の構造を見てください。

  • 何をすれば前進なのか
  • 誰のための仕事なのか
  • 行動した人に何が返るのか
  • 失敗したときにやり直せるのか
  • 強い人だけが得をする仕組みになっていないか

ここを見ずに、ゲーム要素だけ入れる会社は危ないです。

社員の行動を変えたいのではなく、社員を都合よく操作したいだけになっているからです。

9 それでも仕事が面白くならないなら、職場か仕事が合っていない

ここまでの話は、自分の仕事の進め方や、他人が動きやすい環境を作る話です。

ただし、限界もあります。

どれだけ仕事を小さく切っても、どれだけ進捗を見えるようにしても、どうにもならない職場があります。

  • 上司が部下を信用していない
  • 評価基準が曖昧
  • 考える人ほど仕事を押し付けられる
  • 失敗を許さない
  • 改善提案をすると面倒な人扱いされる
  • 低能な管理職が、仕組みではなく気分で動かす

こういう職場では、ゲーム化より先に考えるべきことがあります。

その会社で、あなたの仕事は面白くなり得るのか。

ここを見誤ると、時間を失います。工夫でどうにかなる職場と、工夫を潰す職場は、別物です。

仕事を面白くする工夫は、試す価値があります。ただし、職場そのものがあなたをすり減らす構造なら、工夫だけで粘る必要はありません。

仕事で言われたことだけをやる人が増える職場も、似た構造を持っています。動いても報われない、考えても損をする、余計な提案をすると仕事だけ増える。そういう職場では、人はだんだん考えなくなります。

「自分の職場もこれかもしれない」と思ったら、言われたことだけやる人が増える職場の問題で、それが本人の性格ではなく会社の評価構造の問題であることを確認してください。

上司や職場との相性で消耗しているなら、思い上がった社員や上司が職場を壊す構造も読んでください。個人の努力ではどうにもならない職場が、実際にあります。

もうひとつ、分けるべきことがあります。

いまの会社で評価されていないだけなのか。それとも、市場で評価されにくい働き方になっているのか。この2つは、社内にいるだけでは区別できません。

転職するかどうかを今すぐ決める必要はありません。ただ、自分の市場価値を知らないまま、つまらない職場に残り続けるのは危険です。「工夫して粘る」のか「出る」のか、判断材料がないまま悩み続けることになるからです。

市場価値を確認するなら、先にビズリーチの使い方を読んでください。登録してスカウトを待つだけでは判断を間違えます。職務経歴書の見せ方、公開範囲、スカウトの反応の読み方で、得られる答えが変わります。

転職エージェント全体を比較したいなら、転職エージェントの選び方で、自分の年齢・職種・市場価値に合う入口を確認してください。入口を間違えると失敗します。

10 仕事をゲーム化する考え方を学ぶ本

ゲーミフィケーションは、ネット記事だけで分かった気になると危ないです。

ポイント、バッジ、ランキングだけを見てしまうからです。

本で読むなら、ゲームデザイン、動機づけ、学習設計、組織行動をまたいで読むべきです。日本語本は多くありません。英語本も含めて、仕事に使いやすいものを挙げます。

先に結論を言うと、全部読む必要はありません。3冊だけ選ぶなら、この順です。

  • 自分の仕事を面白くしたい人:『The Progress Principle』
  • 日本語で全体像をつかみたい人:『ゲームフルデザイン』
  • 会社・チームで設計したい人:『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』

以下、目的別に説明します。

『ゲームフルデザイン 「やりたくなる」を生み出すゲーミフィケーションの進化』

新しめの日本語本から読むなら、まず候補になります。

伊藤真人『ゲームフルデザイン 「やりたくなる」を生み出すゲーミフィケーションの進化』は、ゲーミフィケーションを単なるポイント設計ではなく、「やりたくなる」体験設計として扱う本です。

仕事への応用を考えるなら、「楽しくする」より「行動を変えたくなる体験を作る」という視点で読んでください。

『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』

ビジネス寄りの基本書です。

ケビン・ワーバック、ダン・ハンターによる本で、ビジネスにゲーミフィケーションを使うときの考え方を押さえるのに向いています。

仕事や会社でゲーミフィケーションを使うなら、雰囲気ではなく設計手順として読むべきです。

『ゲーミフィケーション 〈ゲーム〉がビジネスを変える』

国内でゲーミフィケーションを押さえるなら、古典寄りの一冊です。

井上明人『ゲーミフィケーション 〈ゲーム〉がビジネスを変える』は、ソーシャルゲームやビジネスとの関係を通じて、ゲーミフィケーションを説明する本です。

現在の実務にそのまま使うというより、「なぜ日本でゲーミフィケーションが語られ始めたのか」を見るための本です。

『ゲームにすればうまくいく』

フレームワークで考えたい人には、深田浩嗣『ゲームにすればうまくいく』も候補です。

仕事やサービスをゲーム化する際に、どのような要素を設計するかを考える入口になります。

ただし、タイトルだけを真に受けて「ゲームにすれば何でもうまくいく」と読まないでください。うまくいくのは、仕事の構造を見て設計した場合だけです。

『ゲームの力が会社を変える ゲーミフィケーションを仕事に活かす』

会社での活用事例に寄せて読むなら、この本も候補です。

岡村健右『ゲームの力が会社を変える ゲーミフィケーションを仕事に活かす』は、仕事の効率化、社員教育、顧客獲得など、ビジネスのさまざまな場面への活用を考える本です。

いま読むなら、事例の新しさより、「仕事にゲームの構造を持ち込むとき、どの領域が対象になるのか」を見る本です。

『営業のゲーム化で業績を上げる』

営業組織に寄せるなら、長尾一洋・清永健一『営業のゲーム化で業績を上げる』も候補です。

営業は、ゲーミフィケーションと相性が良い領域です。ただし、売上ランキングだけで煽ると壊れます。

営業で見るべきは、売上の前にある行動です。商談準備、仮説、フォロー、失注理由の共有、次回提案への改善。そこをどう設計するかを見るための本として読むべきです。

『GAMIFY ゲーミファイ』

組織やビジネスの導入に寄せるなら、Brian Burkeの『GAMIFY』も候補です。

会社の目的だけでゲーム化すると、社員は動かされている感じを持ちます。

社員側の目的と会社側の目的が重なる場所を作らないと、制度は冷めます。ここを考えるために読む本です。

『For the Win』

英語で読めるなら、ワーバックとハンターの『For the Win』も候補です。

マーケティング、生産性向上、イノベーション、従業員の動機づけ、顧客エンゲージメントなど、ゲーミフィケーションを幅広い領域に使う本です。

会社で使うゲーミフィケーションを、研修だけに閉じず、仕事全体に広げたい人向けです。

『Actionable Gamification』

設計フレームを重視するなら、Yu-kai Chouの『Actionable Gamification』です。

Octalysisというフレームワークで、なぜ人が動くのかを整理します。

仕事に使うなら、「人を動かす」と言いながら、実は恐怖や損失回避だけで動かしていないかを点検する本になります。

『The Gamification of Learning and Instruction』

研修や学習設計に寄せるなら、Karl Kappの本です。

ゲームデザインの力をトレーニングと教育に使うための本です。

会社の研修、オンボーディング、リスキリング、eラーニングを設計する人には向いています。ただし、この記事の主題は研修だけではありません。研修担当者が読む本として位置づけます。

『The Gamification of Learning and Instruction Fieldbook』

Kapp本を実践に落とすなら、Fieldbookも候補です。

前著のコンセプトを実装するための例、ヒント、ワークシートを含む本です。

研修や学習施策を実際に作る人向けです。読むだけでなく、設計の手順書として使うタイプの本です。

『The Progress Principle』

ゲーミフィケーション本ではありませんが、仕事を面白くするうえで外せません。むしろ、この記事のテーマで1冊だけ選ぶなら、これです。

Teresa AmabileとSteven Kramerの本で、小さな進捗が働く人の内面に与える影響を扱います。

ゲーム化を考えるとき、派手な報酬に寄せるより、進捗が見えることを重視した方が仕事に効きます。仕事を面白くする本質は、ここに近いです。

11 仕事をゲームにするな。人が動く構造だけ盗め

仕事をゲームにする必要はありません。

会議をRPGにする必要もありません。社員にバッジを配る必要もありません。営業成績をランキングで煽る必要もありません。

盗むべきなのは、ゲームの構造です。

  • 次に何をすればいいか分かる
  • 進んだことが見える
  • 少しずつうまくなる
  • 失敗してもやり直せる
  • 行動に反応が返ってくる
  • 自分で動かしている感覚がある

この構造があれば、自分の仕事は少し動かしやすくなります。

他人に仕事を頼むときも、相手が動きやすくなります。

逆に、この構造がまったくない職場で、精神論だけで頑張るのは危ないです。

仕事を面白くする努力はしていいです。ただし、腐った職場を自分の工夫だけで救おうとしないでください。

自分が動けないときも、他人が動かないときも、見るべきなのは気合いではありません。

設計です。

仕事を小さく切る。進捗を見せる。反応を返す。失敗しても戻れるようにする。少しずつうまくなっていると分かるようにする。

それでも仕事が面白くならないなら、仕事そのものか、職場が合っていない可能性があります。

順番はこうです。まず自分の仕事の切り方を変える。変わらないなら、職場の構造を見る。職場も変わらないなら、市場を見る。

市場を見る最初の一歩は、ビズリーチの使い方で市場からの反応を確かめることです。エージェントを比較するなら転職エージェントの選び方から入ってください。悩みながら同じ職場で消耗し続けるより、判断材料を先に集めるべきです。

参考文献・参照資料

  • Sebastian Deterding, Dan Dixon, Rilla Khaled, Lennart Nacke, “From Game Design Elements to Gamefulness: Defining Gamification,” CHI 2011.
  • Richard M. Ryan and Edward L. Deci, “Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being,” American Psychologist, 2000.
  • Teresa M. Amabile and Steven J. Kramer, The Progress Principle, Harvard Business School Press, 2011.
  • Kevin Werbach and Dan Hunter, For the Win, Wharton Digital Press.
  • Karl M. Kapp, The Gamification of Learning and Instruction, Wiley.
  • Yu-kai Chou, Actionable Gamification.
  • 伊藤真人『ゲームフルデザイン 「やりたくなる」を生み出すゲーミフィケーションの進化』翔泳社。
  • ケビン・ワーバック、ダン・ハンター『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』。
  • 井上明人『ゲーミフィケーション 〈ゲーム〉がビジネスを変える』NHK出版。
デスクで疲れた表情を見せる男性

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