法務転職市場のトレンド

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法務転職市場のトレンドを過去の記事から。

2020年1月24日 インハウスローヤーは過去5年で2倍に増えた

(日経新聞朝刊「企業内弁護士、5年で2倍、昨年、2400人超える、働き方改革など、業務多様化。」)

民間企業で働く「インハウス」の弁護士が増えている。

過去のインハウスローヤーの人数の推移は以下のとおりです。

  • 2001年:66人
  • 2014年:1000人超
  • 2019年:2400人超

(日本組織内弁護士協会調べ)

本記事によると、増えた理由は次のとおり。

M&A(合併・買収)や訴訟だけでなく、コーポレートガバナンス(企業統治)などで法律の専門知識が求められているからだ。
かつてインハウス弁護士は訴訟対応が主な業務だったが、近年はM&Aの検討段階で法的リスクを分析するなど経営戦略に関わる存在になった。
最近は「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)を受けて社内体制を整備したり、働き方改革のための人事労務制度の設計をしたり、業務がさらに多様になっている。

企業は「法務全般のスキルアップ」(日本組織内弁護士協会の村瀬拓男理事)を目的としてインハウス弁護士の採用を増やしている。

これはどこまで本気なのだろう、と私の大企業法務部インハウス経験から思います。

大企業法務部でも弁護士資格のないプロパー社員で大多数を占められているところに、外部から中途で弁護士有資格者が入ってもそのスキルは特に重宝されません。

司法修習のすぐ後に新卒で大企業に入ってしまえば、弁護士として働くというよりも、大企業の会社員としてのマインドが植えつけられてしまいます。 

数年前までは新人弁護士をしょっちゅう採用する大企業がいくつかありましたが、それならば法律事務所の若手弁護士を採用すればいいのに、と思って眺めていました。

最近はこのトレンドに変化があるようです。

以下のような注目すべきことが書かれていました。 

これまでインハウスは新人弁護士など若手が多かったが、最近は即戦力としての採用が本格化しており、「キャリア10年以上の弁護士を迎える傾向が強まっている」(村瀬理事)という 

法務実務経験がない新人の「先生」が即戦力とは程遠い存在であることがようやく理解されてきたのでしょうか。

2019年8月14日 法務転職市場は拡大している

市場において法務人材は貴重である。

8月14日の日経新聞朝刊「デジタル法務で省力化、AIサムライ、類似特許を数十秒で検索、リーガルフォース、契約書不備をAIが指摘」から法務転職市場の有望性に関わる部分を抽出しました。

本新聞記事では、「法律に関連する業務をIT(情報技術)で効率化する「リーガルテック」が広がっている」ということを紹介しています。

なぜ法務分野でITの活用が広がっているか、記事はこう言います。 

法務部門の人材採用は難しくなっており、スタートアップの活躍の場が広がっている。

企業は法務人材を採用したいがなかなかとれない。そこで新しい技術を使って代用しようとしているのです。

どれくらい企業は法務人材を採用しようとしているのか。つまり、法務経験者はどれくらい転職市場で人気があるのか。

人材サービス大手のエン・ジャパンによると、法務やコンプライアンス(法令順守)に関連した求人数は7月で2年前の2倍近くに伸びた。

求人数が2年で2倍!

事務職については驚異的な伸びです。

どんなところで人気者になれるのでしょうか。

金融や建設・不動産などで求人が増えており、「フィンテックなど新規事業への進出でニーズが増している」という。

なるほど。金融や不動産では給料も比較的高いので、転職でこれら優良ポジションを狙うには今がチャンスです。景気いつまでいいかわからないので。

人手不足の中で法務人材の需要も高まっており、リーガルテックのスタートアップが受け皿になっている。

求人数は増えて需要増になるけど、市場にはそれほど応募者は出てこない。法務転職市場はかなり恵まれた市場のようです。

2019年7月 法務転職市場は売り手市場(doda「転職市場予測2019下半期」)

dodaの「転職市場予測2019下半期」によれば、法務の転職市場は活況、求人数は増加傾向にあるようです。

(1) 求人数が増加傾向の活況転職市場

業界・職種で14の分野に分けたうち、dodaキャリアアドバイザー予想で求人数の増加が予想される分野は以下の5つでした。 

  • 人事
  • 法務
  • 建築・土木
  • 金融
  • メディカル

法務が入っています。

(2) 法務機能の内製化の動き

法務求人分野では、法律事務所に外注していた業務を内製化する動きがあるようです。また、社内に業務の知見を蓄積する狙いもあるそうです。

優れた企業には、外部法律事務所への外注から内部法務部のパワーアップをぜひ図ってもらいたいと思います。無駄に高い報酬を外部弁護士に支払う必要はありません。

会社員になると専門家としてやる気が落ちるのかわからないのですが、外部法律事務所外注からレベルを落とさずに内製化を図るのはけっこう難しいと思いますので、どのように進めるかは要検討事項だと思います。外からフィードバックを受ける仕組みが必要でしょう。法務部が「我が社の法務のレベルは日本最高クラスだ」と勝手に自己満足に陥っては失敗です。

(3) 法務は常に一定の求人がある

法務は人事や経理などほかの管理部門職種のような季節的な影響を受けにくく、ニーズに対してまだまだ人材が足りていない企業が多いため、大企業や外資系企業、中堅・ベンチャー企業まで、業界を問わず多くの求人が出続けています。

なるほど。これは法務人材にはいい情報です。

実際、法務の転職情報は、大手、外資、中堅、ベンチャーと幅広いです。

(4) 法務にはいろいろなレベルのポジションの求人がある

組織強化を急ぐ企業や採用がスムーズに進んでいない企業は、さまざまな形で採用条件の緩和や待遇アップをしているため、経験の浅い若手層から経験豊富なベテラン層まで、希望する条件での転職を実現しやすい状況にあると言えます。

法務転職市場ではどこも即戦力を求めるのは変わりません。しかし、30代以下の若手の求人が一番多い気がします。

マネージャークラス、部長クラスの上位ポジションの数は若手よりもかなり少ないです。しかし、そこそこの数は常に出回っている感じです。

(5) 法務は比較的異業種への転職がしやすい

金融であったり、製薬であったりといった給料の高い業界は、その業界出身の人が転職に有利です。外資系製薬会社の法務の人は、同じ業界を渡り歩いている人が多いです。

とはいえ、業界経験は必須とされることは少なく、他業種からでも法務は参入可能です。 

各業界特有の法務知識に関しても入社後に身につければ問題ないとする企業が増えているため「IT業界からメーカーへ」「不動産会社から商社へ」といった異業界への転職を考えている人もチャンスです。

(6) 「なんとなくコンプライアンスをしっかりしないとやばそう」と考える風潮にあるため法務人材は追い風を受けている

海外進出や異業種への参入、ビジネス上の係争、不祥事・炎上対策など、攻守を問わず増え続けている企業のリーガルニーズを背景に、弁護士資格を持った人材をインハウスローヤーとして社内に抱えることで法務部門の強化を目指す企業が増えています。

会社の経営陣にとって、「リーガルリスク」や「コンプライアンス」と言われると何がなんだかわからなくて恐いと思います。

法務は、取引の契約書を読んだりするだけのポジションから、神経質にあれもこれもと考える社会の進展にあわせて業務範囲を拡張してきています。

「コンプライアンス」が何かを説明できる(わかっている)人はいないか、共通理解はあまりないような気がしていますが、それゆえに言ったもの勝ちで法務がそのポジションを占める機会は多そうです。

(7) 法律事務所の弁護士はインハウスになる絶好の機会

法律事務所や弁護士事務所から一般企業への転職を目指す希少な弁護士人材を多くの企業が取り合っている状況なので、年収アップやワーク・ライフ・バランスの改善を考えている弁護士にとっては豊富な選択肢があります。

歴史的なサイクルで見れば、インハウスを狙うには今はとてもよい時期だと思います。企業業績が悪化すれば企業は法務機能の拡張に金をかけなくなります。求人も減ります。

(8) 注目の法務ポジション

ア 中堅企業の契約・取引法務

法務部門の継続的な強化、増加する契約・取引法務案件への対応を急ぐ中堅企業では、法務のポテンシャル採用が活発化しています。「難度の高い案件に挑戦するために業界を移りたい」という希望もかなえやすいほか、法務経験のない法学部卒業者や法科大学院(ロースクール)修了者を歓迎する企業も増えています。また、法律事務所や司法書士事務所での実務経験があれば法学部出身者でなくても採用されることが珍しくないようです。

法務のポテンシャル採用なんてあるんですね。

これは少し驚きです。優良中堅企業を狙って法務職を狙う手があるわけですね。

イ 大手企業のグローバル法務

メーカーや商社といったグローバルに事業を展開する日系企業や外資系企業を中心に、グローバル法務経験者へのニーズが高い状況が続いています。

この系統のポジションは法務転職市場の花形のようなものです。海外案件を担当する法務部員を欲しがる企業は多いと思います。企業は海外進出をどんどんしていますが、法務の人はあまり海外案件をやりたがりませんし、経験も乏しいです。

高い英語力が求められる傾向は変わりません

採用する側は高い英語力がある人に来てほしいと思っています。しかし、それほど高い英語力があって仕事がちゃんとできる人は希少です。英語力に関しては実際は「そこそこできる。英語に抵抗はそんなにない。ぜひ英語で仕事がしたい」という程度で受け入れられることは多いでしょう。

なお、外資系企業で英語を使うことが多い場合はこれより高いレベルが求められます。

が、採用が難しいポジションでもあるため、担当してもらいたい業務領域に関して多少知識や経験が不足していたとしても将来性を見込んで採用するという企業が増えています。

dodaでも同じような説明です。

語学力に自信があれば希望する企業や求人を選びやすい状況です。

 同意です。大いなる自信がなくてもそこそこあれば大丈夫です。


ウ コンプライアンス・リスク管理系の法務

最近流行りのポジションです。法務部門ではなくコンプライアンス部門専属の求人というのもあります。 

近年では、コーポレートガバナンスやコンプライアンス(法令遵守)、企業の社会的責任(CSR)が話題になることが多く、法律知識をベースにコンプライアンスの強化やリスク管理対応を担える人材を求める企業が増えています。

要するに「それっぽいこと」をやってくれる人をほしがっているわけです。

とくに個人情報を取り扱うビジネスを展開しているIT企業、グローバルな取引が増えているメーカー、直近で大きな訴訟に発展するような品質問題や不祥事が発生した業界ではその傾向が強いようです。

これもそのとおりだと思います。このdodaの記事はよく書けています。

(9) 今は法務転職の好機

今は法務求人がたくさんあります。今すぐ転職する気がなくても、自分の市場価値を知るために「こんな求人があるのか」と見ることのできる状態です。

法務人材には自分の専門性を高めて転職に積極的になってもらって、人材の流動性を高めて適材適所が進んだ職種に法務がなってくれればいいなあと思います。

2018年12月17日 第14回「企業法務・弁護士調査」からも法務転職市場は好調のよう(日経新聞朝刊)

2018年12月17日の日本経済新聞の朝刊で第14回「企業法務・弁護士調査」の結果が掲載されていました。 

その記事で、法務転職は今がチャンス!という内容が書かれていたので取り上げます。

(1) 大企業ではインハウスローヤーがいるのが多数派になりつつある

調査結果によると、

弁護士を社員として雇用している企業が全体の6割を超えた

ということだそうです。

日本の全企業ではなく、一部の大企業の6割です。中小企業では法務部がないところがほとんどですので、インハウスローヤーはほとんどいません。

(2) インハウスローヤーを含めて企業は法務部員を増やす傾向にある

企業内(インハウス)弁護士を過去1年で増員した企業は3割に上る

多くの日本企業が法務部門の強化を迫られている格好で、専門性が高く即戦力となるインハウス弁護士の採用を増やす動きが強まっている。

日本企業の法務部門を増強する動きは続きそうだ。

どうせ増やすなら弁護士資格ある人を、と考えるのが大企業の人の発想だと思います。 

(3) 企業はグローバル人材(英語に抵抗がない人)を求めている

グローバル化を背景に専門性を持つ法務人材のニーズは大きく、今後も法務部門を拡充する企業が多い。

ここの「グローバル化を背景に」というのは意味不明ですね。グローバル化と法務人材はリンクしないはずです。とりわけ日本の弁護士はグローバル案件が苦手なはずですので、海外対応を要求するのであれば企業は弁護士資格にはこだわらずに人材を採用すべきです。多くの日本人が英語で躓いているので、そこの問題がない人を採用しなければなりません。

転職希望者は覚えておくべき部分です。企業が欲しいのはグローバル人材です。

簡単に言えば、英語ができる人がほしいのです(これ以外に日本企業が求めるグローバル人材要件があるのでしょうか)。

2018年12月15日 法務転職の年収相場は上昇中。活況相場で高年収も狙える(日経新聞朝刊)

法務転職で最も気になる「年収」の相場に関するデータが出ていました。

人材サービスの業界団体で構成する人材サービス産業協議会(東京・港)は14日、中途採用時に提示される年収額の2018年の職種別データを発表した。

 そんな団体があるんですね。別の機会でチェックしたいと思っています。 

最も上昇したのは販売店や飲食店の店長。

このように述べて、この新聞記事で特にとりあげられたのが「店長」。

しかし、「法務」も実は記事中の表に登場しています。 

いまいち表の見方がわからないのですが、法務で提示されている年収はけっこう高いです。最高額は1位です。しかも、昨年よりアップしています。

ちなみに、弁護士有資格者はもっと高そうです。 

人事など管理部門でも上昇基調だ。中でも1000万円以上の高年収での採用は、転職回数が多い人の割合が高くなっている。豊富な実務経験が前向きに評価されているとみられ「転職の多さをマイナス評価する慣行が薄まりつつある」(人材サービス産業協議会)。

転職回数が多い方が評価される。

外資系だとある程度年齢が高くなると、転職経験無しの人は採用しなかったりするそうです。

法務を含む管理部門は、景気が悪くなると企業にとって負担の重い部門ということで、採用が減ります。 

したがって、転職市場のサイクルから考えると、法務転職は今は絶好のチャンスです。年収が高いだけでなく、求人数も多いのです。

いつ求人数が減るかはわかりません。多くの会社が「そんなに法務部員いらないんじゃないか・・・??」と気づき始めると減ってしまいます。

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