寝てない自慢は自分をVIPと感じさせてくれる
長時間労働が礼賛され、徹夜自慢、多すぎる残業(サービス残業)をアピールする従業員が多い職場。至るところにこうした痛い職場があります。
ブラック職場です。
こうした職場は宇宙がビッグ・バンで突如出来たのとは異なります。
何かきっかけがあって作られます。
きっかけになるのは、空気やビルではありません。
人です。
人がブラック職場を作り出し、ブラック職場にはブラック職場の環境を作り出しているフィクサーたる従業員がいます。
本記事はそうした人物の紹介です。
(2020年9月13日改訂)
寝てない自慢、残業、長時間労働こそ自分のアイデンティティ
短時間睡眠、長時間労働、土日も働いてる。
これを誇らしげに語る人はなぜ絶えないのか。
1 忙しい私は重要人物(VIP)
「忙しい」と連呼して自分の忙しさをアピールをする人がいます。
「こんな朝早くから夜遅くまでやってられないよ」と文句を言いつつうれしそうです。
スケジュール帳にはあれこれと予定が埋められています。
暇そうにしている人がいると軽蔑の視線を送ります。
こういう多忙大好き人間をこの記事では敬意をこめて「VIPさん」と名付けましょう。
多くの人はVIPさんの気質を持っています。どこの組織にも小VIPさんはたくさんいるのです。
本記事では、私の経験で2職場で1人ずつ、合計2人の純VIPさんをモデルにした分析を行います。
2 VIPさんは帰るのが遅い
VIPさんにとって、長時間労働は自らの尊厳を保つ超重要ポイントです。
他の人よりも早く帰る。
それは、自分が他人よりやる気がないことを意味します。
これはVIPさんにはとても辛い。
VIPさんは「やる気」あふれる自分が大好きです。
他人を軽蔑し、自己愛を維持するために、他の人が自分より早く帰っていくのを見つつ、その後に自分が帰るときに職場にだれもいないことを見て「あのやる気のない人達と違って、自分はなんてがんばっているんだろう」と満足します。
そして、他の数少ない人が夜遅くまで働いている人を「同志」とみなします。後輩であれば「見込みのあるやつだ」と認定するのです。
VIPさんは、自分の他に遅くまで残っている若者にお菓子をあげたりします。「お前も私と同じようにがんばっている」という勲章を授けるのです。
3 VIPさんはやることがなくても帰るのが遅い
VIPさんはいつも忙しいのか?
VIPさんは、やることがほとんどなくてもいつもどおり帰る時間はVIP待遇です。
日中はボーっとしたり、無意味な作業をしたりしています。
作業の生産性にVIPさんは興味がないのです。
「長時間いて疲れること」がVIPさんに「刺さる」のです。
しかし、当然ながらVIPさんは自分の生産性の乏しさは認めません。むしろ自分がいかに有能であるかを誇示します。認めない、というよりも自分のやり方が非効率とは少しも思わないのかもしれません。
日本の労働生産性(GDP/h)は低い
— にゃんがー@外資弁護士サラリーマン (@Nyanger_b) 2020年3月22日
1位 アイルランド 102.3
2位 ルクセンブルク 101.9
3位 ノルウェー 86.7
4位 ベルギー 77.4
5位 デンマーク 77.2
6位 米国 74.7
…
20位 スロベニア 48.2
21位 日本 46.8
(単位:ドル)
スロベニア以下か。。
「労働生産性の国際比較」よりhttps://t.co/GkbuiYn1PV
そりゃ日本の労働生産性も下がるよ。
4 VIPさんは朝は遅い
「朝は職場で一番早く来て、夜は一番遅く帰る」
といことを豪語する長時間労働常習者もいます。
しかし、私の知る典型VIPさんは、朝は弱いのです。
あるVIPさん(弁護士)は、クライアントに
「弁護士先生って朝いないですよねー。朝事務所に電話すると秘書の人に、「〇〇は今外出しております」って言われますからねー」
とバカにされたのに対してこう答えました。
「たしかに朝は遅いです。しかし、夜も遅いです。」
自信に満ちた表情でお答えになっておられました。
5 VIPさんは締切を守らない
VIPさんは、自分に課せられた締切についてルーズです。
「私は忙しいからそんな締切を設定されても困る」
ということをアピールしたいのかもしれません。
そう、VIPさんは特別なのです。
6 VIPさんは他人に厳しく、自分に甘い
VIPさんは自分を有能な職業人と思っており、他人の仕事や行動に常に不満を抱いています。
「それじゃだめだ」
と。
他人が仕事上の時間を守らないと辛辣です。
でも、自分はしっかり守らないのです。
これは矛盾しています。
でもいいのです。
VIPさんにとって、自分は特別。Very Important Personです。重要な仕事をたくさんかかえて忙しいのですから、小さなことをいちいち守っていられないのです。
7 VIPさんは職場で有害な人罪候補である
VIPさんにはコストがかかります。長時間残業されると、残業代が高くつきます。VIPさんは締切を守らなかったり、あれこれ文句を言ってきたりするので、手がかかるのです。
そして、長時間働くものの、生産性が低いがためにコストパフォーマンスは劣ります。
それにもかかわらず、VIPさんは長時間働かない人を批判します。コストパフォーマンスのよい人の排出を抑制しようとするのです。
また、VIPさんの思想は職場に伝染しがちです。偉そうな先輩が長時間職場にいて満足気な顔をしていれば、「長時間いれば偉そうにしていていいんだ」と勘違いする人も現れます。
8 VIP人材輩出企業勤務はおすすめできない
長時間労働が尊ばれない職場もあります。
そんな職場にVIPさんが放り込まれると、「あの人昨日も遅くまでいたらしいよ」と噂になります。
この噂に対して、「そうか、がんばってるな」という人が多くいるのが、VIP人材輩出企業です。
この噂に対して、「そんな遅く残って何してるんだろうね」と否定的なコメントが出るのが、効率性を求める雰囲気のある職場です。
VIP人材輩出企業にいて違和感を感じるのであれば転職をおすすめします。