河野順一『労働基準監督署があなたの会社を狙っている』(LABO(弁護士会館ブックセンター出版部、2018年) )
お勧め度:★★★★★
労基署の立ち入り対応業務担当におすすめです。
著者の河野順一さんは、ベテランの社会保険労務士として人事・労務コンサルタント業務に携わってこられ、多くの労基署対応案件に関与してこられています。
その経験を本にされています。
この本の自己紹介は次のとおりです。
1)労働基準監督署の残業代是正勧告等にどう対応すべきか!
2)労働基準監督官とのやりとりをライブで再現!
3)ドキュメント・熱血講義・理論編の3つの展開で理解しやすい!
この本を読まれる方は、上記1)に関心があるでしょう。
それを知るために、上記2)がこの本に記されています。
労基署からの是正勧告を受けた会社の顧問の社会保険労務士が、労基署の誤りを正すために労基署に乗り込んで監督官と戦う、というストーリーです。
激しいやりとりが載っています。
この本のよいところは、なんとなくのストーリーだけで終わらせず、法律をきちんと適示して理屈で説明してくれるところです。
第2部は、「白熱講義編~労働基準監督署との議論に絶対負けない法を学ぶ~」となっており、理論編です。
理論編は、講義を文字に起こしたような書きぶりですので、読みやすいです。
行政法の話がかなり出てきます。行政法を全く学んだことがない人はさっぱりわからない、ということになるかもしれませんが、労基署対応実務をベースに行政法の初歩を学ぶ、という使い方はとてもよいと思います。
わかりやすく解説がされています。
行政法を学んだことがある人も、労基署対応場面を想定した復習にちょうどよいと思います。
本の中で、「是正勧告をどれくらい無視したら送検されるのか?」という問題提起が出てきます(89ページ)。
それへの答えが、厚労省のHPを参考にせよ、です。
年度ごとに、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」と題する、厚生労働省労働基準監督課が出している資料がある。全国の監督署ごとに、違反の根拠条文とその内容、送検された企業名などが公表されているのだが、労働安全衛生法違反が圧倒的に多い。逆を言えば、こうした事案に気をつけていれば、送検されるリスクが少なくなるというものだ。
▶ 2019年8月30日「労働基準関係法令違反に係る公表事案」
表面的な内容にとどまらず、なかなか熱の入った内容で、労基署対策本としておすすめです。