新型コロナと転職
(2021年1月19日)
2020年8月には、以下の通り書いていました。
今現在は、まさにwithコロナの真っ最中です。
その中で出てきたトレンドである営業と事務職の転職市場価値の低下を最新トピックとしてとりあげます。
(2020年8月5日改訂)
2021年1月19日現在の今もwithコロナ真っ盛りです。
日経新聞では「転職しても賃金増えず」という記事が出ていました。
転職して給料が上がる事例が減り続けているそうです。
- 新型コロナと転職
転職して前職より給料が上がる割合が減少している(2021/1/19)
新型コロナウィルス感染症は、一部を除いて多くの会社に打撃を与え、採用をする企業は転職希望者を買い叩いているようです(日本経済新聞2021年1月19日朝刊「転職しても賃金増えず、民間調査、「前職より増」、7四半期連続で低下」より)。
10~12月期にリクルートキャリアのサービスを使って転職した人のうち、賃金が10%以上増えた人の割合は前年2019年と2020年を比較すると次のとおりでした。
- 2019年10~12月期:29.6%
- 2020年10~12月期:26.4%
この3ヵ月だけならいいのですが、それだけではおさまりません。
このような低下は7四半期連続だということです。
また、この3.2ポイントの下げも大きい。
欧州債務危機の影響で景気が低迷していた12年4~6月期以来の大きさ。
業種で最も下げが大きかったのは、「接客・販売・店長・コールセンター」。
人気のありそうな「ITエンジニア」も下げたそうです。
本ブログに関係のある法務を含む経営企画や人事など「事務系専門職」も低下している。
営業職は上がったそうです。
株価はぐんぐん上がっていますが、労働者の給料がそれと同じように上がるということはないようです。
営業・事務職は転職時の給料の伸びが鈍っている(2020/8/5)
(週刊ダイヤモンド2020/8/1)
上記を見てください。
2019年の転職市場の人気者です。
1位:営業
3位:管理
コロナ下の現在、この状況は変わっています。
営業と事務職の人気は落ちています。
2020年になり営業と管理は不人気になりました。
営業:14位(2019年は1位)
管理:15位(2019年は3位)
日本経済新聞でも8/5の朝刊で「「転職で年収増」4~6月1.7ポイント減、8年ぶり下げ幅、営業・事務職で伸び鈍化」という記事が出ていました。
ウィズコロナ時代では「年収の増える転職が減っている」とのことです。
新型コロナウイルスの感染拡大で営業職や事務職で賃金の伸びが鈍った。
このとおり週刊ダイヤモンドと同じ事実が指摘されています。
そんな中でも、「ITエンジニアの需要はコロナ下でも底堅い」ようです。
リクルートキャリアが、同社のサービスを使って転職した人のうち、賃金が1割以上増加した人の割合を集計した結果が次のとおりです。
調査対象の5業種のうち3業種で賃金の上昇圧力が弱まった。中でも下げ幅が最も大きかったのが「営業職」だ。前職から賃金が上がった人の割合は26.1%で、前年同期比4.5ポイント下がった。下げ幅は比較可能な09年度以来で3番目の大きさとなった。
経営企画や人事・法務など「事務系専門職」でも低下した。
営業と事務・管理は売り手市場ではなくなっています。
なぜかというと、「コロナの影響で先行きへの不透明感が増し、高い賃金を払っても働き手を採用しようという企業が減っている」からです。
こんな転職市場トレンドではありますが、もし転職を考えているのであれば、日本経済がどうであるかといった広すぎることを気にする必要はありません。
自分の転職に集中すべきです。
新型コロナ第2波懸念にもかかわらず転職希望者増加中 | テレワーク希望者急増(2020/7/20)
新型コロナで働き方への考えが変わり、転職に意欲的になった人が増えている、という記事がありました。
転職市場にも働き方のニューノーマル(新常態)を目指す動きが表れてきた。
(日経速報ニュース2020/7/20)
このような転職トレンド記事がありました。
ポイントは3つ。
① 転職希望者が増加している
2020年6月は、転職希望者数が前月比22.3%増加。
これは2014年4月の集計定義変更後の最高の増加率だそうです(パーソルキャリア調べ)。
4月、5月と自粛、様子見の後、堰を切ったように一気に転職市場に転職希望者がなだれ込んだようです。
先行き不安だけでなく新たな働き方を求める動きが広がっている。
これが日経新聞の分析です。
② 求人数は増えていない
転職希望者が増えた。
みんなを受け入れる求人情報はあるのか。
6月の求人数は前月比0.2%増加したそうです。22.3%増の転職希望者に比べると物足りない増加率です。
そして、求人は前年同月比では27.5%減少です。去年ほど求人に勢いがないということです。
③ テレワーク可能な仕事が人気
テレワークが可能な仕事への転職希望が多いという。
エン・ジャパンの転職サイト「エン転職」では4月以降、「テレワーク」の検索数が前年比倍増しているそうです。
ちなみに、検索数1位は「週休2日」。
休めない職場が多いことがわかります。
転職したいなら転職活動をすべきですし、そうでなければ転職活動をしない方がいいです。時間を取られ、疲れます。
市場に踊らされず、自分の状況に合わせて転職活動をすべき。
新型コロナによって転職に前向きになる人が増えた?(2020/6/14)
新型コロナウイルスの問題が広がったのを機に、キャリアを見つめ直そうとする人は少なくない。
(2020/6/14日本経済新聞朝刊「コロナで転職に意欲」45%、在宅勤務、重視する人も(Answers))
日経新聞でこのように述べられています。
新型コロナウィルスそれ自体は人の思考を変容させるとは思えません。
「キャリアを見つめ直そう」という人は、いつでも常に一定数いますので、新型コロナはそんなに関係ない気がします。
在宅勤務重視は、新型コロナの影響は一部の企業には大きいと思います。
日経新聞の同記事は、転職サービスのビズリーチが4月下旬に行った会員アンケートをもとにしたものです。
そのアンケート結果は以下のとおり。
Q1:新型コロナの拡大を受けて、自分のキャリア観に変化はあったか?
「キャリア観に変化があった」:55.7%
Q2:新型コロナの拡大を受けて、自分の転職に対する考え方に変化はあったか?
「以前から転職活動を検討していたが、ますます転職への意欲が高まった」:46%
「以前は転職を検討していなかったが、今は転職を検討するようになった」:11%
「以前は転職を検討していたが、今は少し様子を見ていたい」:39%
上記Q2の回答の転職に前向き層57%の回答は、誘導尋問っぽいですね。新型コロナが拡大してそれがきっかけで転職への意欲が前向きになるのは変な気がします。
もともと転職に前向きな層に質問したから57%が「転職に前向き」と答えたのであって、新型コロナの影響はないんじゃないですかね。
(新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、約6割がキャリア観に変化 うち9割以上が「企業に依存しないキャリア形成が必要」と回答))
2019年の転職市場
2019/1/15の日経新聞朝刊記事をベースに2018年~2019年頃考えられていた転職市場を振り返ります。
1 転職市場は活況
転職市場は活況が続いている。パーソルキャリアによると、2018年に同社が扱った中途採用の求人数は17年比9%増えた。不足感の強いIT人材は、働く側が優位に立ち、転職先を選びやすいケースも増えた。
働き方改革が叫ばれ、人手不足感が解消する兆しはない、というのが2018年~2019年頃であり、転職市場は暗くないです。
2 年功序列企業への転職には注意
転職する際に、よい条件の職場に行きたいと考えるのは当然です。
その際に、年功序列体系の企業に入るのは注意が必要です。
なぜでしょうか。
人材サービス大手によると「旧来の賃金制度を残す老舗メーカーが、処遇に柔軟な企業に競り負けている」。
こうした事情があるからです。年功序列企業は、魅力的な条件を提示しにくいのです。いい人材がいても、その人の年齢に応じた給与・ポジションしか提示できない。年功序列企業にとって、年功序列を崩すのは大ごとです。
他の企業ならもっとよい条件が取れるかもしれないのに、年功序列企業だとそうなり得ない可能性があるのです。
以下の新聞記事説明がそれを表しています。
特にITの新興企業は職種ごとの市場の需給に沿って賃金を決める動きが盛んで、必要に応じ年収を上げる。メーカーは社員の年齢に即した賃金体系が多く、人材の市場価値に見合った金額を示しにくい。
2019年は、IT人材がGAFAの高年収に引き抜かれる、という記事が目につきました。
給料が他よりそんな高くなくても、年功序列のぬるま湯につかりたい、こう思うのであれば年功序列のしっかりした大企業がおすすめです。
年功序列のしっかりした大企業はなんだかんだ言って給料は他に比べると高いことは多いです。
ただ、給料アップはだいたい緩やかです。
3 転職35歳限界説
管理職人材と専門職人材であれば、35歳を超えても求人はあります。
ただ、専門職人材は30代の引き合いが強そうですので、管理職人材の求人がメインになるでしょう。
転職市場では年齢の壁が崩れ始めている。リクルートキャリアの調査を34歳未満の若手と35歳以上のベテランで分けると、若手の異業種への転職数は17年度に09年度比で2・92倍。ベテランは同3・3倍と若手を上回り、特に40代は同3・41倍と伸びが目立つ。
全体でも40代の転職は増えているようです。就職氷河期の世代なので、管理職層がどこも薄いからです。
ただ、「40代でも転職できるんだ」と安易に考えてはいけません。
管理職への登用時期でもあるため、管理職の実務経験があると転職しやすいという。
「マネジメント経験」が求められる年代なのです。
この観点からすると、年功序列型大企業に入ってしまうと、転職が難しくなる面があります。
大企業では、人が余っており、管理職ポストが足りていません。40台で部下なしの社員がゴロゴロいます。
大企業に転職したのはいいが、いつになったら管理職の経験が積めるかわからない、という事態は容易に生じます。
25歳で有名大企業に転職できた!
と思っていて、管理職になれるのは20年後かもしれません。
将来ハイポジションを狙うには、管理職経験をいつどこでどのように積むかも考慮する必要があります。
4 デジタル革命が越境転職を促す
業種の壁を越えて人材が移動する「越境転職」が盛んだ。
IT業界の隆盛を一つの起点として、業種の枠にとらわれない人材の流動化が進んでいるようです。
IT業界から小売り業界へ、また、営業職からIT業界へ、といった越境転職が増えてきているということです。
(1) IT業界は人材を欲している
エン・ジャパンによるIT業界の人材の流出入状況は次のとおりです。
特に人材の流出入が多かったのはIT・通信だ。人の動きは全業種平均の約2倍になっている。
人材の流入に関してはこう。
デジタル革命や人手不足を背景に企業が中途採用を積極化
メーカーや小売りなど幅広い業種へ移ると同時に、コミュニケーション能力にたけた営業人材が異業種から流入している
IT業界の成長に人手が追いつかないのかもしれません。
(2) IT業界から他の業界への転出も多い
IT業界出身人材は他業界でも人気なようです。
自動車に限らず様々な産業で、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)など、デジタル技術を活用して事業を変革する動きが急だ。データの取得や分析のためのエンジニアの需要が高い。
これだけ見ると「エンジニアか。自分には関係ないな」と思うかもしれません。しかし、技術の興隆はやがて自分に波及します。
苦手意識を持つのは危険です。
英語アレルギーのある人が仕事で英語を使えと言われているような状態になる可能性があるということです。
そうしたときに、IT業界出身のアレルギーのない人材を他業種で取りたいと考えるのは自然です。
リクルートキャリアは「企業の中途採用の目的が人員の補充から技術革新や新規事業開発に変わった」と説明している。
この説明からすると、IT「人員の補充」や、「技術革新や新規事業開発」に伴う中途採用という枠がありそうです。
現状、IT業界以外の求人を見ていると、こうした視点での求人はあまりないようです。そのような求人がないのは、「IT人材を取らなければ」という視点がないからでしょう。