「仕事に行くのが楽しみで待ちきれない」と思えるようになるための働き方改革
(2020年4月17日改訂)
「仕事のやる気が出ない。。」
「今日もあの人と顔を合わせるのか。。」
そう思いながら給料のために毎日会社に出かけて疲弊し、週末にほっと一息ついたと思ったらすぐに月曜日がやってくる。
仕事についてこんなネガティブな感想を持っていませんか?
この状況はよくありません。
楽しくない。疲れる。
打ち込めなければ成果もあまり出せず、成長も鈍くなります。市場価値が上がりません。上昇的キャリアパス形成にはよくない状況です。
また、会社側にとっても、生産性が上がらないのは悩みの種です。
こうした状況を解決するにはどうしたらいいのか?
ハーバード・ビジネス・レビューに啓蒙的なよい記事がありましたので紹介します。
マーカス・バッキンガム=アシュリー・グッドール「チームの力が従業員エンゲージメントを高める」ハーバード・ビジネス・レビュー2019年11月号28ページ
- 「仕事に行くのが楽しみで待ちきれない」と思えるようになるための働き方改革
1 チーム単位での職場環境を整えれば仕事満足度は向上する【結論】
企業文化や従業員個々人ではなく、「チーム」に焦点を当てよ。
これが紹介記事の主張です。
「チーム」とは、〇〇部や△△本部といった組織上の部門ではなく、非公式に柔軟に生み出される複数名の業務遂行活動隊とでもいうべき存在です。
たしかにこれはどの職場でもたくさんあります。同じ部門間、あるいは異なる部門間でちょっとしたチームが知らぬ間に結成されます。すぐ解散する場合もあれば、いつの間にか長期間に及ぶこともあります。
こうしたチームでの働きが各従業員の満足度(エンゲージメント)と生産性にかかわるというのです。
紹介記事では、「エンゲージメント」という単語が使われていますが、ここでは「仕事満足度」や「やりがい」等に置き換えていますので、同じようなものと考えていただければと思います。厳密には色々な定義の仕方があるようです。
2 チームでの働きが仕事のやりがいに関わる理由
どうしてチームを重視するのでしょうか。
それは、調査の結果によります。
エンゲージメントと生産性において個人さが生じる最大の原因を突き止めようとし、最も強力な要素が判明した。
それはひとえに、「業務の大部分をチームで行っている」と回答したかどうかだった。
「チームで仕事をしている」と答えた回答者グループでは、エンゲージメントの高い従業員の割合が「1人で仕事をしている」と答えた回答者グループの2倍以上だった。
このとおり、チームで仕事をしている回答者の方が、1人で仕事をしているよりも満足度が高いのです。
筆者らは続けてこう言います。
- 職場での生の体験、つまりは一緒に仕事をする同僚と、同僚とのやり取りが何物にも勝る力を持っていた
- チームの中にこそ、職場における従業員経験の本質がある。
- チームでは、自分の担当職務が誰かの担当職務に関わり、メンバー同士で各自の強みを補っているように感じるものだ。左右の肩越しに誰かがのぞき込み、寄り添ってくれる。あなたの信頼を裏切らず、あなたの仕事に対して何らかの反応を示し、あなたの価値観に賛同してくれる。心理的に参っていれば手を差し伸べ、行き詰った時にはアドバイスをくれる。
- こうしたチーム経験の質こそ、従業員経験が備えるべき質だ。
多くの職場では、他の誰かと関わり合いを持たずに仕事をすることができません。
何らかの協力や相互依存的な関係を持って働いています。
簡単に言ってしまえば、職場内の人づき合いが仕事満足度に大きく影響し、
「辞めたい/辞めたくない」と思うことへの決定的な要因となるのです。
3 仕事の満足度を高める唯一の方法
筆者らが「惰性出社従業員」と呼ぶ人達の業績や満足度を高めるための最良かつ唯一の手法は、これです。
チームの必要性を認識させる
従業員エンゲージメントと生産性を高めたいなら、まずは組織にチームの存在が見えづらい理由を理解し、それがいま、どう変化しているかを確認しよう。そのうえで、チームでの経験向上のために資金やエネルギーを投じなければならない。
まずは、職場において「チーム」がいかに重要なのか理解する必要があるということです。わかるだけでも大きな違いです。
4 最高のチームにする5つのポイント
チームの必要性は認識した。
ではその後はどうすればいいのか?
チームを良くしましょう。
そのための5つのポイントが紹介されています。
(1) リーダーへの信頼関係
業績の優れたチームと芳しくないチームを分ける最大の要因はリーダーへの信頼度です。
そこそこの信頼では意味がない。
①「チームリーダーを信頼している」に強く同意するメンバー
②「チームリーダーを信頼している」に同意しないメンバー
調査では、①のメンバーは、高エンゲージメント従業員と見なされる割合が②の8倍に達したそうです。
リーダーへの信頼は疑う余地のないほど深いものでなければならない。単に「チームリーダーを信頼している」に同意しただけでは、「リーダーをまったく信用していない」と回答した者とエンゲージメントの水準がほぼ同程度だった。信頼が効果を発揮するには、全幅の信頼でなければならない。
リーダーに要求される信頼水準はかなり高く、大変なレベルです。
単に「チームリーダーを信頼している」では、「まったく信用していない」とほぼ変わらない。
どうしたら深く信頼されるリーダーになれるでしょうか。
メンバーから全幅の信頼を得るためにリーダーが取るべき行動とは何か。
最高のチームリーダーになるには、メンバーに次の2点で満足してもらう必要があります。
①仕事上で、自分に期待されていることを明確に理解している
②仕事で毎日、強みを発揮するチャンスがある
つまり、メンバーが上記①と②について、アンケートを受けて次のように答える環境を作るのが最高のリーダーなのです。
「はい。いずれもそのとおりです。
私は①仕事上で自分が期待されていることが何かよくわかっています。
また、②私の強みとなる仕事をする機会を与えられています。」
これは納得です。
「上司の言ってることよくわかんないんだよな。一体何すればいいの?」と愚痴る人も会社員には多いでしょう。この逆の環境が大事なのです。
「私の長所を理解したうえで、長所を発揮できる仕事を与えてほしい」というのがメンバー全員の本質的な要求であり、高業績チームを支える基盤なのだ。
(2) 目配りを感じさせるチーム
よいチームではメンバーの放ったらかしは厳禁です。
筆者らはリーダーと各メンバーが対話するちょっとした場を頻繁に設けるとメンバーのエンゲージメントが向上するといいます。
ちょっとした対話で何を話せばいいのでしょうか。
以下2つのシンプルな問いかけをリーダーはすべき。
- 「あなたの今週の優先業務は何ですか」
- 「私に手助けできることはありますか」
そうして、メンバー一人ひとりが実力を発揮するために必要な目配りを確実に受け取れるようにする。
各メンバーを活気付けるポイントと未来に焦点を当て、欠点の是正ではなく強みに基づいて対話するのである。
よいチームでは、こうした対話が頻繁に行われなければいけません。
データには、対話の頻度が重要だということがはっきりと表れている。
対話の頻繁性を考えると、チームの大きさ(何人くらいで構成すべきか)に影響が及びます。
エンゲージメントを高める主な原動力が、対話の場と目配りであることを踏まえると、「目の届く範囲」をいかに定めるかが重要だ。従業員のエンゲージメントを高めるスパン・オブ・コントロールは、リーダーが年間を通して毎週、メンバー一人ひとりと一対一で対話できる範囲でなくてはならないことが調査で明らかになっている。
階層の増減や組織改編によって、こうして頻繁に目配りできなくなれば、最終的にはエンゲージメントの低下、燃え尽き、離職につながる。
(3) ともに学ぶ
従業員を個別に「チームビルディング」研修に送り込んで学ばせても効果は乏しいと筆者らは言います。研修と実際のチームの環境はかけ離れているからです。
ではどうしたらいいのか?
紹介記事ではここの部分の提言は弱かったです。IT企業のシスコで実施している「チームで学ぶトレーニングが好評」と紹介しているだけだからです。
その紹介部分を善解すると、このように説明しています。
「エンゲージメント・レベルについて話し合い、メンバー相互の理解を深め、どう成長するかを話し合い、考えるスタイルのトレーニングがうまくいっている。」
(4) どこで働くかよりも誰と働くか
一般的には、リモートワーク(在宅勤務)は生産性もエンゲージメントも低いと考えられています。
しかし、調査によれば在宅勤務者の方が高エンゲージメント従業員の割合が高かったということです。
従業員のエンゲージメントを高めるには、毎日の出勤を義務づけるべきではないことが明らかだった。
エンゲージメントで重要なのは「どこで働くか」ではなく、「誰と一緒に働くか」である。
(5) あらゆる仕事をギグワーク(ウーバーなどのすき間時間にする仕事)のようにする
正社員で一つの固定された仕事よりもサブの業務や仕事を持つ方がよいと筆者らは言います。
調査では、ギグワークのほうが従来通りの業務よりもエンゲージメントが高いことがわかっている。
エンゲージメントが最も高い就労形態は、「別々の会社で正社員の職とパートタイムの職に一つずつ就いている」だった。
正社員の職では安定性と福利厚生を手に入れ、ギグワークのようなパートタイムでは副収入のほか、心から楽しいと感じる仕事をする機会と自由を手に入れられるというわけだ。
あらゆる仕事をギグワークのようにすべきなのだ。従業員が自分の仕事をコントロールできる裁量を増やし、好きな仕事をコントロールできる裁量を増やし、好きな仕事をする機会をもっと与えるということだ。言うならば、2つの世界のいいとこ取りである。
日本で、他社で2つ目の仕事を手に入れるのは難しいですが、そこまでやる必要はありません。
組織図上に記載されている定着した「ホームチーム」で安定した職に就きつつ、同じ組織の中でもう一つ「副業」を得て、機動的なチームに参加する機会を途切れることなく手に入れる。こうしたチームに対して従業員が持ち込める最大の価値は、それぞれが独自に持ち合わせている素晴らしい強み、一味違う強みである。
これは、通常の職務設計やキャリアパス設計の方法とは異なるが、エンゲージメントを最も高める可能性を秘めている。
上記の示唆からすると、今はやりの副業をしたり、会社内で他部署とのサブ業務を増やして働き方の柔軟性を高めることがよいということになるでしょう。
5 チームを良くすることは自分にとってとてもよいこと
チームが良くなるとは、すなわち仕事上の人間関係が良くなることに直結します。
大いなるストレス軽減が期待できるでしょう。ただストレスが減るだけでなく、そのストレスはやりがいを伴う心地よい疲れに変わる可能性を秘めています。
「よし、やるぞ!」と仕事で感じられたらどれだけいいことか。
6 普段の仕事生活にどう活用するか
チームが良くなれば自分にも好影響なのはわかった。
「でもどうしたらいい?これを読んでも職場の人達には関係ないんだよね。。」
そう思うかもしれません。
こうしてみましょう。
(1) 職場で
職場環境を改善しましょう。
① チームリーダーシップを発揮する。チームビルディングをする。
リーダーシップを発揮するには、部長や課長といった部下持ちでなくてもかまいません。他の人とチームを構成する際に、「全幅の信頼」を置いてもらえる存在を目指しましょう。
② 上司をマネジメントする
上司を「全幅の信頼」をおける存在にするよう日々行動してみましょう。
上司を良い上司に仕立てるということです。
週に1回の対話の場を設ける、その場で「私の今週の優先業務はこれです」と「上司に手助けしてもらいたいことはこれです」と言いましょう。
「仕事上で自分が期待されていることを明確にしたいです。私の強みとなる仕事をする機会を得たいです」と言えるようにしましょう。上司とその理解を共通化しましょう。
これはかなり困難な大事業ですので、時間をかけてやりましょう。
上記①と②に根気よく取り組んである程度成果が上げられるようになったら、立派なリーダーの資質を有していることになります。
(2) 職場外で
人生は1か所の職場だけで完結しません。
① 副業
自分の好きなことでお金を稼げることを見つけましょう。本業と関わりが全くなくても、本業によい影響を及ぼすはずです。
② 転職
転職をする際には、「よいチーム」に入れそうか見極めましょう。
そうすると、面接の際には、「チーム」についての質問をすることになります。
「どんな会社ですか?」とか「どんな従業員研修がありますか?」と質問するよりも具体的で他の応募者がしない視点でよい質問ができるはずです。
また、職場で培った自分の「よいチームの作り方」への取り組みも十分に誇れると思いますよ。
7 まとめ
いかがでしたでしょうか。
「仕事のやりがいを高める本物の手法」と題して「チームの力が従業員エンゲージメントを高める」というハーバード・ビジネス・レビュー2019年11月号の論文記事を紹介しました。
仕事のやりがい、満足度、やる気に影響を与え、それがひいては将来のキャリアパスにも影響を及ぼす内容だと思います。
よい職業人生を送るための参考になれば幸いです。