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建物明渡しの強制執行実施の体験談

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(2019年10月14日改訂)

1 勝訴!

弁護士として関与した案件です。

賃料不払いを原因として賃貸借契約を解除し、賃借人を訴えました。勝てるかどうか微妙なところでもあったのですが、第一審で勝訴しました。

 

判決書を見る直前はとてもどきどきしました。

勝てて本当によかった。

 

2 仮執行宣言を債務名義とする強制執行

ボス弁が「強制執行だ」という方針にしたため、仮執行宣言付き判決に基づいて強制執行を申し立てることにしました。

 

1審の内容からして控訴されるんじゃないか、逆転敗訴もあるんじゃないか、と考えていたこともあり、仮執行宣言で執行をやってしまって本当にいいんだろうか、と思いました、強制執行が完了した後に判決が覆ったら、実際のところ何が起こるのだろう。

 

3 控訴されるかどうか不安な日々

勝訴判決をもらってから数日たってからは、毎日のように裁判所に電話して控訴されていないか確認してもらいました。

控訴されると、当然反論しなければならず、しかもまた勝てる保証もないので、本当に控訴しないでほしいなあと思っていました。

 

4 控訴される!

裁判所への電話が功を奏し(?)、ついに控訴されたことが判明しました。

とても落胆しました。

仕方がないといえば仕方がないです。

 

5 強制執行申立ての準備(執行屋へのコンタクト)

訴訟は訴訟、執行は執行、ということで、強制執行申立ての準備を進めました。

申立書の作成と、執行屋へのコンタクトです。執行屋という物の運搬や鍵の交換などの実務を取り計らうプロ業者がいるのです。

 

そんな業者どこにいるのか?

私は知りませんでした。兄弁が依頼したことのある業者と連絡を取り、依頼することにしました。

 

6 申立てと執行官面接

東京地裁の本庁に強制執行を申し立て、執行官と面接をすることになりました。

 

執行官との面接日、東京地裁の面接室の近くに行くと、太い腕の屈強の男たちがたくさんたむろしていました。建物明渡し事件で活躍する執行屋のみなさんが仕事をとりにやってきているのです。その人達の中を縫って面接室に向かいました。声をかけられなくてよかった。

 

執行官は、やさしい人でした。

「暴力団関係の借主だったりするか」と聞かれました。警察の同道の必要性に関する質問だと思います。「執行屋は決まっているか」との質問もありました。「●●というところに依頼します」と答えました。「そこなら大丈夫だろう」という回答がありました。

執行官と執行屋は非常に緊密な関係にあるんだろうなあと思いました。もし、この時点で執行屋が決まっていなければ、面接室の外にたむろする執行屋の誰かに依頼することになっていたかもしれません。

 

7 執行屋と交渉

強制執行はいきなりせずに、まず現地に執行官、執行屋と現地に向かいます。

「●月●日までに出ていかないと、強制執行しますよ」と通知に行くのです。

 

その際に、執行屋は、建物の所在や大きさ、内部の荷物などの現況を確認します。強制執行実施の際のトラックや人員手配のための情報を手に入れるのです。

 

この現地訪問の際に、執行屋は鍵屋を含めてきました。ボス弁は「この視察の時に、鍵屋外せないかな?鍵屋の費用がかかる」と言いました。執行屋に鍵屋を連れて行かないように頼みましたが、鍵がわからないと困ると言われて断られました。

 

8 執行停止は申し立てないのか

仮執行宣言で強制執行がされて困るのは被告です。控訴審で勝ったとしても建物に戻れないのです。

 

仮執行宣言に基づく強制執行を止める方法は?司法修習の民事弁護科目で頻出の問題、控訴・強制執行の際には必ず知っていないといけない知識です。

民訴法に規定のある執行停止の申し立てです。

 

被告に控訴はされましたが、執行停止の申し立てはされていませんでした。

なんで執行停止を申し立てないんだろうと思っていました。

現地視察の際に、執行屋の人が「けっこう申立てを忘れる人多いんですよね」と言っていました。

 

9 控訴人代理人弁護士からの執行中止のリクエスト

強制執行実施の日が後数日と迫ってきた日に、控訴人弁護士から電話がありました。

「自分から出ていくから執行はやめてほしい」というリクエストでした。

 

「なんで執行停止を申し立てないんですか?」と聞くと、「金がないから」ということでした。担保がけっこう必要ですから、本当に金がなくて申立てできなかったのだと思います。

 

「自分から出ていく」と言いつつ、期限までに出ていく気配もなく、中止にすると取り返しがつかないので、リクエストは断り、強制執行を予定どおり行うことにしました。

 

10 建物明渡し実施

実施日。執行官と執行屋、鍵屋、引っ越し業者のような団体が該当建物前に揃いました。借主は少しも物を片付けていません。借主は韓国人であまり日本語がわかっていません。借主のおじさんと名乗る人がやってきて色々ぶつくさ言っています。しかし、建物明渡しは始まりました。

 

業者がものすごい勢いで建物内の机やら椅子やらを持ち出してトラックに積んでいきます。執行屋は何か書類を作成したりしていました。私は弁護士ですが、執行の細かい資料はさっぱりわかりません。執行屋が用意した書面にとりあえず職印で押印しました。

 

執行官と鍵屋は特に何もしません。私は執行官と雑談していました。

 

執行官のお話。

「ある法律事務所はすごいたくさん執行案件を申し立ててくる。事務員を執行の立ち合いに来させて、効率よくやっている。執行をメインに取り扱っているんだろう。こういう商売もあるんだなあと思った」

「建物明渡しは時間がかかるので、鍵屋に鍵の開け方を教わっている弁護士がいた」

「居抜き執行というのもあるが、それでは明渡しをやったことにならないのではないかという議論もある」

などなど。

 

11 建物明渡し完了

荷物を全てトラックに積んで、最後に鍵屋が登場します。建物の鍵を取り換えるのです。借主のおじさんが「鍵まで変えるのかよ」と言っていました。

鍵の取り換えが完了すると、その新しい鍵を私が受け取りました。

 

12 感想

実際に建物明渡しを経験して、「勝訴とは」「執行とは」というのを実感しました。民事執行法・民事保全法は勉強していましたが、勉強と実務は全く違います。まさに百聞は一見に如かずです。

 

私が弁護士に仕事を依頼するとしたら、執行をわかっている人がいいなあと思っています。最終局面で何が起きるかを知っている人に法的見解をもらいたいからです。