上司との関係性は、職場における問題第1位です(推測)。
「あんな上司大っ嫌いだ!」という極端な場合もあれば、
「うーん、なんか上司と合わないんだよね。。悪い人じゃないんだけど。」というマイルドだが地味に辛い人間関係もある。
会社員で上司がいない人はほとんどいません。
会社員であり続ける限り、上司は必ず存在し、上司との関係は職場での満足度やストレスに大いに影響します。
このことを否定する会社員はほとんどいないはず。
「もう私の上司最高!言うことなしッ!!」という人は本記事を読まなくていいですが、多数派はそうではありません。
多かれ少なかれ上司に不満のある会社員向けに、対上司の関係性を良くする心理学に基づく心構えを授けましょう。
1 上司の良いところに着目する
あまり関係性が良くない上司との関係を良くするテクニック。
それは、上司の良いところを見よです。
シンプルですが、コミュニケーションの核心を突いた技と言えます。
- 感情的にならず、落ち着いている
- 情熱的である
- 丁寧である
- 明るい
- 優しい
- 家族思い
- ワークライフバランスを重視している
- 会社を大事にしている
- 部下の良いところを見つけようとしてくれる
- 前向きである
- 仕事を任せてくれる(どの上司もあれこれ口出ししてくるけど、今の上司が一番控え目)
探せば色々あるわけです。

人のもつ徳に目を向けよ
ベンジャミン・フランクリンはこう言っています。
フランクリンは、アメリカ合衆国の政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者であり、印刷業で成功を収めた後、政界に進出しアメリカ独立に多大な貢献をした人物(Wikipediaより)としてアメリカで尊敬されています。
相手の良いところを見るべきなのは、部下から上司を見た場合に限りません。
ダメ出しばかりする上司は無能 | 「フィードバックだ」と偉そうに言われてもで書いた通り、上司は部下の良い面に着目してコメントをすると効果的なフィードバックができます。
上司が部下とよい関係を築くには部下の良いところに着目しなければならないのと同様に、部下も上司の良い面に焦点を当てるべきです。

2 相手の良いところを見ると人間関係が良好になる理由
なぜ上司の良い面に着目すると、上司との関係性が良くなるのでしょうか。
(1) 自分が相手を好きになれる
まず自分の内面的な理由から。
自分が他人の良いところを見つけてそれを認めれば、その人のことを好きになれます。
往々にして、誰でも相手のあら探しにばかり時間を費やしてしまいがちですが、そうする代わりに何か相手の好ましいところを探すようにすれば、その人をもっと好きになれます
ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編』(誠信書房、第2版、2019年12月)163ページ
溺愛する必要はないですが、「いい奴じゃん」と思ってあげられる。
「あの人嫌い」と思うか、「あの人けっこういい人」と思うかで全然違います。
自分の精神衛生上もいいでしょう。
嫌いだと思っている人と一緒に仕事するなんて疲れますからね。
(2) 相手が自分を好きになってくれる
次に外面的な理由。
こっちが相手のことを好意的に見ていれば、なんと相手も自分に好意的に思ってくれる。
「そんなバカな!すごい嫌がられて警察呼ばれたぞ」というストーカーの人々から批判が来そうですが、それは好意の見せ方がよくなかったに違いない。
演技ではない正真正銘の笑顔を見せて相手方に好意を見せると、その行為は相手方に伝わり、好感を得られる。
つまり、相手に自分を好きになってもらうには、ファーストステップとして相手に好意をもたねばいけません。
「俺はお前が嫌いだ。しかし、お前は俺のことが好きだろう」なんていうヤクザな態度ではいけないのです。
好きでない上司を好きになるのは難しい。
そこで好意を持つなんていう高難度のことはやろうとしない。
もっと軽いことをする。
上司の良い点をポツポツと見つけるのです。
3 「良いところなんか思い浮かばないよ…」というデメリットを克服するーもっとひどい上司と比較しろ
ここで問題があります。
「上司の良いところ…?うーん。。」となる会社員は多いでしょう。
上司の良いところが出てこない。
とりわけ上司への不満度が高いと全然出ないわけです。
こういう場合どうしたらいいのか?
「その上司」1人だけを絶対評価しようとするとうまくいきません。
相対評価しましょう。
他の上司と対象の上司を比較せよということです。
過去の自分の上司や、他部署の管理職等と比較すればいいのです。
比較すれば、「今の上司は怒鳴らないからいいかも」といいところも出てきやすくなります。
なぜ比較した方が良い点が出やすくなるのか?
比較評価をせずに、1人の上司を絶対評価しようとすると、自分の感情が重視されてしまいます。
単独評価の場合には、システム1の感情反応が強く反映される
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 下』(早川書房、2012年11月)191ページ
頭の中で対象の上司1人だけを思い浮かべる。
その上司のことはよく思っていない。
その場合、頭の中をその悪感情が支配してしまいます。その状態で上司の評価をしようとすれば瞬時に「ダメだあいつは」となってしまうのです。冷静な評価ができない。客観的に良いところを見つけようとしても感情のサングラスを通してみてしまいます。
感情に支配されずに冷静に上司の良いところを見つけたい。
比較対象をすればそれができます。
比較対象を行う並列評価では必然的にシステム2が働くので、単独評価よりぶれない判断が期待できる
同上
「システム1」は、行動経済学者ダニエル・カーネマンの命名した思考の様式であり、直感的で感情的な速い判断システムです。
「システム2」は、冷静に熟慮する遅い判断システムです。
人間の思考は怠惰なため、システム1に頼りがちです。
しかし、好きではない上司の良いところを見つけるには、よく考えないといけません。そのためにシステム2を発動させたい。
それには比較対象が有効です。
嫌いな上司、イマイチな上司の良いところを見つけるには、他の人とその上司を比較しましょう。
対象の上司1人だけを思い浮かべるよりうまくいくと思います。
4 上司の良いところを見つけないと悲惨な結末が待っている

「あの上司の良いところ見つけるのなんて無理」と考えている会社員には暗い未来が待っています。
転職や異動等で当該上司から離れない場合、関係性がさらに悪化してストレスが増大することが考えられます。
ハロー効果が悪い方向に働くからです。この場合逆ハロー効果とも言います。
もしあなたが大統領の政治手法を好ましく思っているとしたら、大統領の容姿や声も好きである可能性が高い。このように、ある人のすべてを、自分の目で確かめてもいないことまで含めて好ましく思う(または全部を嫌いになる)傾向は、ハロー効果(Halo effect)として知られる。後光効果とも言う。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 上』(早川書房、2012年11月)122ページ
もしある部下が上司のことを好ましく思っておらず、嫌な感情を持っているとしたら、ハロー効果と上述の「自分の好意は相手に伝わる」のカウンターによって以下のような悪いループにはまります。
①上司がなんとなく嫌だ
▼
②上司の仕事の指示内容はダメだと思う。
▼
③「なんであんなダメなのが上司なんだ」とさらに嫌いになる。
▼
④部下に嫌われていることに上司が気づく
▼
⑤上司の部下に対する接し方が悪化する
▼
⑥上司のことがもっと嫌いになる
▼
⑦上司の仕事が全然だめにしか見えない。
▼
:
これは恐ろしい負の連鎖です。
この負の連鎖を断ち切るには、自分から動くしかない。なぜなら上司は他人だからコントロールできないから。自分の言動は変えられます。
上司との関係を良くしたいなら自分から。
世界を良くしたいなら自分から、とマイケル・ジャクソンも歌っています。
If you wanna make the world
A better place
Take a look at yourself and
Then make a change
日本語に直訳すると「世界をより良くしたいのなら、自分自身を見つめ直し、そして変化を起こしなさい」。
マイケル・ジャクソンは、自ら歌う曲の半分以上を自ら作詞作曲をしていたはずですが、この歌詞のある曲のMan in the Mirrorは、本人の作詞作曲ではありません。
それでもマイケル・ジャクソンは自分のライブの締めの1曲にこのMan in the Mirrorを選んだとされています。
思い入れのある曲なんですね。
5 上司との人間関係が良好になった例
『影響力の武器 実践編』には、上司と仲の悪い女性が上司の良い面に注目して人間関係がよくなった例が書かれています。
われわれの友人に上司と仲の悪い女性がいて、互いにめったに目を合わせないどころか、彼女はその上司を人間的に心底嫌っていました。けれどもある日、彼女はフランクリンの教えに従おうと決意したのです。その上司は職場では親切な人ではありませんでしたが大変家族思いで、それには彼女も本当に感心していました。この点に注目しているうちに、少しずつではありますがだんだん彼のことを好意的に見るようになっていきました。
ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編』(誠信書房、第2版、2019年12月)163ページ
この女性は偉いですね。
職場で親切ではない上司の職場以外での良い面に着目して少しずつ見方を変えていったのです。
上司との人間関係を良くするために自分から動こうと決意して実行したんですね。
そして、その努力がとてもよい結果をもたらすのです。
そしてある日、彼女は上司に、家族をとても大切にしていて感心すると伝えたのですが、それは彼女の本心でした。驚いたことに、翌日彼は彼女のところにやってきて、ある情報に関する注意を与えてくれ、それはとても彼女の役に立ちました。それ以前だったら、絶対にそんなことはありえなかったでしょう。
同上
嫌いな上司に良い面を伝えるのは難しいです。
しかし、この女性は少しずつ上司に好感を持つようになったので、本心から感心していると伝えられたのでしょう。
嘘はバレて好感度を上げられませんので、事前に少しずつ好感度を高める努力がうまくいったのです。
こう思うと実際に伝える技も大切です。
伝え方を磨きたい人には、「伝え方コミュニケーション検定」の講座で勉強するのがおすすめです。
苦手な上司・部下の理由と解決策がわかる!伝え方コミュニケーション検定
6 どうしたって上司が無理な場合はやはり転職か
「死ねばいいのに」
↑これは、私が先輩弁護士から教わった法律事務所で生き残るためのマインドです。
パートナー弁護士からむかつくことを言われた時には、こうやって頭の中で思ってやり過ごせというのです。
私にはこのマインドセットを使いこなす能力がなく、ストレスにモロにやられました。。
上司との関係性を重いストレスにしたくないなら、人間関係を良化させた方がいいのは間違いありません。そうしないと悪化ループでますます悪くなる。
しかし、しかしだ。どうやっても無理、という人はいます。
その人が自分にとっての強力なストレス源になっていて、その影響を緩和できそうもないなら、諦めるしかない。
心身が壊れる前にその影響から逃れないといけません。
異動等で逃れられたらいいのですが、それが叶いそうもない場合や、いつになるかわからず尋常じゃなく辛い場合、もはや転職するしかありません。
転職は大変なのですが、人間関係の問題を解決するのはこれ以上ないくらい効果があります。
職場の人間関係をゼロにできるという超強力な効果があるのです。
人間関係が嫌で仕事を辞めて転職してうまくいった話に書きましたが、嫌な人間関係から解き放たれるのはありがたいです。転職ありがとう。転職エージェントさんありがとう。
「今の会社辞めたい!!」こう思っているときの転職活動は、けっこうしんどいです。
「今の職場にそんなに不満あるわけじゃないけど、どんな転職あるかな」と悠長にかまえている時よりも、現職場のストレスが大きい時の方が転職活動は辛い。
早く辞めたいから。
しかし、どうしようもならない上司との関係を断つには転職しかない。
こんな後ろ向きな転職理由での転職は後ろめたいと思う必要はありません。
転職はなんだかんだで多くの人が現職場への不満が大いなる理由になっているからです。職場への不満で大きいものと言えば?そりゃ人間関係、特に上司ですよ。
上司が不満で転職するのは自然です。
上司の良いところを見つけようとしつつ、それが失敗に終わった時のことを睨んで転職エージェントに登録して求人情報をチェックしましょう。
転職エージェントに登録して相談しても無料です。現職場の上司がどうしようもないなら転職エージェントに話すだけでも気分転換になります。
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